究極のフェラーリ458、日本上陸|Ferrari
Ferrari 458 Speciale|フェラーリ 458 スペチアーレ
究極のフェラーリ458、日本上陸
先のフランクフルトモーターショーで公開された「458 イタリア」、「458スパイダー」に続く新しいラインナップ、「458 スペチアーレ」が日本でも発売を開始した。V8 ミッドシップモデル歴代最高となるパフォーマンスはいかなるものか。日本で開催された発表会の第一報をお届けする。
Text by SAKURAI Kenichi
NA最強の605psを誇る進化版
9月にドイツで開催されたフランクフルトモーターショーでワールドプレミアされた、フェラーリのV8ミッドシップ「458スペチアーレ」が日本でも正式発表された。「458イタリア」のハイパフォーマンスバージョンとなるこのモデルは、「458 イタリア」、「458 スパイダー」に続く第3のラインナップで、その名のとおり、シリーズ中最高性能を持つ究極のスペシャルマシンである。
日本での発表にあたり、会場には多くの報道陣が詰めかけ、関心の高さをうかがわせた。フェラーリ・ジャパンのプレジデント&CEO、ハーバート・アプルロスは、プレゼンテーションの冒頭で「フランクフルトモーターショーで発表された『458スペチアーレ』を、わずか数週間で日本に紹介できるのは、またとない歓びです」と、日本市場の重要性を語った。
また、このイベントには、イタリアのフェラーリS.p.Aから来日したフェラーリの極東エリア統括ジュゼッペ・カッターネオも登壇。「最高のパフォーマンスを持ったニューモデル」であると、「458スペチアーレ」を紹介した。
さらに、サプライズゲストとして、スクーデリア・フェラーリのワークスドライバーとして458 イタリアを駆り、AFコルセからWECにフル参戦する小林可夢偉選手が、「458スペチアーレ」に乗って登場。会場内に独特のエンジンを轟かせた。小林選手は「458 スペチアーレ」とともに、多くのフラッシュ浴びた。
パフォーマンスは特別だが、カタログモデルとして販売
フェラーリは、1999年に生産を開始した360モデナシリーズ以降のV8ミッドシップモデルで、高性能スペシャルモデルをラインナップしてきた。「458 スペチアーレ」は、360モデナベースの「チャレンジストラダーレ」、F430ベースの「430 スクーデリア」や「スクーデリア・スパイダー 16M」に続くもので、車名はイタリア語で「特別」を表す「スペチアーレ」とされた。
ただし、これまでのスペシャルモデルの多くが限定生産であったの対して、「458スペチアーレ」は、通常のカタログモデルとしてラインナップする。これは「チャレンジストラダーレ」と同様の販売方法で、ベースとなる「458イタリア」がモデルチェンジを行うまでの間で、発注が可能になると見られている。
過去のスペシャルモデル同様、通常のモデルをベースにエンジンのパワーアップを行い、シャシーの強化や、ボディの軽量化などを実施した「458 スペチアーレ」。公道はもちろんのこと、サーキット走行も楽しめる類い希なパフォーマンスが最大の特徴である。
「458スペチアーレ」では、「458 イタリア」の1,380kgに対して車重を90kgダイエットし、1,290kgとしたほか、エンジン出力は35psアップの605ps/9,000rpmに向上させた。発表時もお伝えしたように、このパワーは、リッターあたり135psとなり、歴代のV8フェラーリ中もっともハイパワーな設定になっている。もちろんこの値は、現在量産販売されている自然吸気エンジンで世界一のパワーを誇っている。
Ferrari 458 Speciale|フェラーリ 458 スペチアーレ
究極のフェラーリ458、日本上陸(2)
こだわりのディティールと軽量化
搭載されるエンジンは、90度のバンク角を持つV8エンジンで、ボア×ストロークは94.0×81.0mm、総排気量は4,497ccで、「458イタリア」と同一である。これをチューンし、最高出力605ps/9,000rpm、最大トルクは540Nm(59.1kgm)/6,000rpmまで向上させた。ここから導き出される最高速度は325km/h以上、0-100km/h加速は3.0秒、0-200km/h加速が9.1秒、0-400m加速10.7秒、さらに0-1,000m加速19.4秒というまさにレーシングカー然としたパフォーマンスを備える。
トランスミッションは、「458 イタリア」と比較してレスポンスを20パーセント向上させるとともに、シフトダウンのギアシンクロ時間を44%短縮。まさに電光石火のギアチェンジがおこなえる。
こうしたパワートレーンの進化によって、F1マシンもテストを行うフェラーリ本社に隣接するテストコース、「フィオラーノ」でのラップタイムは1分23秒5をマーク。これは、“フェラーリ史上最速のロードカー”と言われ登場した現在のフラッグシップモデル「F12ベルリネッタ」にくらべ、わずかコンマ5秒のビハインドでしかない。このタイムは、かのV12スペチアーレ「エンツォ・フェラーリ」よりも、もちろん速いタイムになる。
エクステリアでは、「458 イタリア」に対し、フロントセクションのデザインを変更。空力特性を向上させた。特に注目したいのは、フロントのバンパー中央下部に、速度によって開閉するフラップを内蔵したエアロダイナミクス ソリューションを採用した点だ。こうした可動フラップは、リアバンパー下にも採用されており、各速度域で最適な空力特性が得られるように配慮されているのが分かる。
またフロントヘッドライト横に、F40にも似たエアアウトレットをあらたにもうけたほか、整流と冷却を考慮したエアスクープをボディ各所に新設している。さらにボディカラーでは、レッドのカラーリングにブルーとホワイトのセンターストライプを配した、北米のカスタマーチーム「N.A.R.T.(ノースアメリカン・レーシングチーム)」をモチーフにした特徴的な仕様を採用。ルックスでも、通常ラインナップとの明確な差別化が図られている。
さらに、軽量化のためにガラスを薄型にし、リアにはレキサン樹脂を採用。新デザインの20インチ鍛造ホイールは合計12kgの軽量化を果たし、ゴールド、ダークグレー、そしてブラックの3色を用意している。
レーシングライクなインテリア
一方のインテリアも、レーシングライクな仕上がりだ。アルカンターラやカーボンファイバーなどを多用し、軽量化と高級感を両立させたほか、ダッシュボードのグローブボックスを廃止し、かわりにキャビン中央のトンネル部とドアに収納スペースを用意した。カーボン製のパドルシフトも専用デザインで、コーナリング時に体を支えるニーパッドも装備されている。
シートはサベルト製で、軽量なカーボンファイバシェルを採用。レーシングマシンそのものといっても過言ではないデザインである。シートバックには通気性優れたブリーザブル3Dファブリックを使用。サーキット走行など、ハードなドライビングにも対応する装備になっている。
特別なモデルと聞いて他車で想像するよな豪華な装備は一切ないが、そのスパルタンなコンセプトは、まさに公道を走るレーシングマシン。例えるなら戦うための道具である「武器」が持つ、本物だけに許されたクオリティが感じ取れるといえそうだ。まさに所有する歓びをも叶えてくれる、特別なインテリアだ。
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究極のフェラーリ458、日本上陸(3)
パワーに負けない進化したシャシー
シャシーの進化も、「458スペチアーレ」の注目ポイントだ。搭載されるサイドスリップ・アングル・コントロール(SSC)と呼ばれるシステムは、限界域での車輌のコントロールをよりしやすくするとともに、ドライビングプレジャーを向上させる。また、車輌の横滑りを絶え間なくセンサリングし、車輌の状態と算出した目標値となる横滑り量を比較しながら、F1-トラクション・コントロールと統合することでトルク管理を行い、左右ホイール間のトルク配分をE-Diff (電子式ディファレンシャル)と統合しながら最適化するのだ。これによりオーバーステアを抑制し、安定した走りを可能としながら、ダイナミックなパフォーマンスを最大限に引き出すことができるようになっている。
サスペンションは、Frs SCM-Eとフェラーリが呼ぶツイン・ソレノイドを装備した磁性流体ダンパーを搭載。わずか0.06秒で制御を行い、緻密なボディコントロールを実現する。
そして、タイヤもまたスペシャルとなっている。ミシュラン「パイロットスポーツ カップ2」は、458スペチアーレ専用モデルとして特別にチューニング。サーキットのタイムを短縮するパフォーマンスをもちながら、公道使用時のウェット性能の確保など、あらゆるコンディションで最高のグリップ力を発揮するという。
ブレーキはスペシャルモデル「ラ フェラーリ」譲りの、ブレンボ製カーボンセラミック(CCM3)システムを採用。放熱効果の高いHYハイブリッド素材の小型フロントパッドを持つエクストリームデザイン・キャリパーによって、100-0km/hはわずか31メートルで済むという驚異の性能を持っている。
史上最強のV8モデルという触れ込みにふさわしい驚異的なパフォーマンスをみせる「458 スペチアーレ」は、誰でもオーダーが可能。日本での販売価格である3,290万円の支払い能力さえあれば、あなたもオーナーになれる。特別なパフォーマンスとデザインを持つ“特別な存在”だが、この点ばかりは、唯一特別ではない。
「458 イタリア」との価格差は、460万円。パフォーマンスを考えれば、この価格はバーゲンプライスとも言えるだろう。日本での車両デリバリーは、2014年春からを予定している。
Ferrari 458 Speciale|フェラーリ 458 スペチアーレ
ボディサイズ|全長4,571×全幅1,951×全高1,203 mm
ホイールベース|2,650 mm
トレッド 前/後|1,679 / 1,632 mm
重量|1,430 kg
エンジン|4,499cc V型8気筒
最高出力| 605ps/ 9,000 rpm
最大トルク|540Nm/ 6,000 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ
駆動方式|MR
タイヤ 前/後|245/35ZR20J9 / 305/30ZR20
ブレーキ|カーボンセラミック(CCM3)
最高速度|325 km/h
0-100km/h加速|3.0 秒
0-200km/h加速|9.1 秒
0-400m加速|10.7秒
フィオラーノ・ラップタイム|1分23秒5
燃費|11.8 ℓ/100km
CO2排出量|275 g/km
燃料タンク容量|86 ℓ
価格|3,290万円