アストンマーティン、新型「ヴァンテージ」を世界6カ国で同時披露|Aston Martin
Aston Martin Vantage|アストンマーティン ヴァンテージ
新型「ヴァンテージ」を世界6カ国で同時披露
アストンマーティンは中核モデルとなる新型「ヴァンテージ」を世界6カ国で同時公開した。日本での価格は1,980万円で、2018年の第2四半期からデリバリーを開始する。
Text by HARA Akira
名門スポーツカーブランドの伝統を受け継ぐ「ヴァンテージ」
新型の詳細を説明する前に、まずは偉大なスポーツカーである“ヴァンテージ”の歴史から。ヴァンテージの名称が最初に使われたのは1951年で、当時の「DB2」に高性能エンジン(標準モデルの105bphに対し、Vantageエンジンは125bphを発生)を搭載したモデルだった。
続いて62年の「DB4」を手始めに、「DB5」「DB6」「DBS」の各モデルに“ヴァンテージ”のバッジを付けた高性能バージョンを設定。77年にはウイリアム・タウンズがデザインした「V8ヴァンテージ」が、アストンマーティンの性能面におけるフラッグシップカーとして登場した。
次のV8ヴァンテージは、2基のスーパーチャージャーにより後期型で600bphまで増強され、最終型の「V600 Le Mans」は、ニューポート・パグネルの旧本社工場で生産したヴァンテージの中でも最も稀少なコレクターズアイテムとなっているという。その後2000年に登場した「DB7ヴァンテージ」も、アストンマーティンが開発した6.0リッターV12を搭載していたという点で記念碑的モデルと言え、フェラーリの真のライバルとなっていった。
本社をケイドンに移してからの最初のヴァンテージは、05年に登場。アストンマーティン史上最高の累計25,000台を販売し、09年には「V12ヴァンテージ」を導入して世界中のエンスージアストたちを熱狂させた。
そして、今回の新型ヴァンテージだ。車両については、デザイン、エンジニアリング&パワートレイン、パフォーマンス&ドライビング・ダイナミクスの3つの側面からその進化をうかがい知ることができる。
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肉食獣を思わせるデザイン
新型ヴァンテージのエクステリアは、サーキット専用車の「ヴァルカン」からインスピレーションを得た肉食獣を連想させる精悍な風貌が特徴だ。そして、簡潔なラインで構成されたボディはアスリートのような力強い造形で、そのデザインはパフォーマンスと直接的にリンクし、ボディ表面はエアロダイナミックな機能を持つという。
まず、ボディと一体化したフロントスプリッターは短いフロント オーバーハングとシームレスにつながり、車体下面のエアフローをコントロールする機能を持たせた。アストンマーティンの特徴であるサイド ストレーキは新しいサイド ジル(エラ状のくぼみ)へと進化し、ボディサイドパネルのラインと自然につながるデザイン処理が施されている。
サイドジルは、フロントホイールアーチ内のエアを排出してリフトを最小化するとともに、ボディサイド側に沿って空気をスムーズに流すという空力的機能を持っている。
また、リアのディフューザーと最後端が跳ね上がったリアデッキリッドにより、ボディ上部を流れるエアを利用して、高いダウンフォースを発生させることに成功した。
前後ライトはスリムなLEDによる新しいライトシグネチャーとなり、ヴァンテージらしい存在感と力強い個性を主張している。
一方のインテリアは、これまでのアストンマーティンの特徴であった流れるようなラインと斜めに傾斜した中央の大きなコンソールというテーマとは異なり、テクニカル・アーキテクチャを集約したコンパクトで凝縮感のあるコンソールを演出している。
具体的には、3角形を構成するように配置したトランスミッションのP、R、N、Dボタンなどスイッチやコントロール類を集めたエリアで、ドライバーが注視しやすい環境を生み出している。また高めに設定したウエストランと10mm低められたシートポジションにより、高い居住性と運転に集中できるコックピットになっている。パドルシフトや、空調のロータリースイッチ、トグルスイッチなど、直感的で迅速な操作系も健在だ。
2シーターのシートはスポーツとスポーツ プラスの2タイプで、表面素材にはアルカンターラとレザーを使用。その背後には2段の収納スペースを設け、さらにテールゲート下には350リッターの実用的トランクスペースも確保した。
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AMG製4.0リッターV8ツインターボエンジンをフロントミッド マウント
新型ヴァンテージのボディサイズは、全長4,465×全幅1,942×全高1,273mmで、全長は「DB11」よりも284mm短く、ポルシェ「911」と比べても34mm短い。このコンパクトなボディの骨格を構成しているのは、ボンド接着を多用したアルミニウム製アンダーフレームだ。アストンマーティンの次世代型プラットフォームを用いながらも、コンポーネントの70パーセントはヴァンテージのために専用開発したもので、結果として乾燥重量は1,530kgに収まっている。
また、リアのサブフレームもアンダーフレームに剛着することで剛性に優れた構造となり、サスペンションが適切に機能するコントロール性が確保されるようになった。
パワートレインには、AMG製4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載。最高出力510ps/6,000rpm、最大トルク685Nm/2,000-5,000rpmを発生するこのエンジンを、フロントになるべく低く後方に寄せて搭載するため、スリム設計のウェットサンプ方式を採用し、CO2排出量を245kg/kmに抑える高効率も達成した。
先代モデルの自然吸気V8からツインターボV8に進化することで心配されたエンジンサウンド面については、開発担当のエンジニアが吸排気の徹底的チューニングを行い、アストンマーティンのスポーツカーにふさわしいサウンドクオリティを実現したという。
後輪を駆動するトランスミッションは、車体後部にマウントしたZF製8段AT。ギアボックスに専用開発したソフトウェアを採用することで、ドライバーの要求と車の運転状況を把握して常に正しいギアを選択し、デュアルクラッチギアボックスを超えるシフトクオリティと使いやすさを実現した。
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最高速度314km/h、0-100km/h加速3.6秒をマーク
新型ヴァンテージは、アストンマーティンのモデルとして初めてエレクトリックディファレンシャル(Eデフ)を搭載した。電子制御のこのデフは、車載のエレクトリックスタビリティコントロールシステムと連携して作動してクルマの動きを精密にモニタリングし、エンジンパワーが必要なホイールに適切に配分されるよう、状況に応じた制御を行うことができる。直進性においてもコーナリング性能の面でもクルマの能力が大幅に高まることで、ドライバーは自信を持ってヴァンテージのポテンシャルを引き出すことができるようになり、この結果最高速度314km/h、0-100km/h加速3.6秒の高性能を実現した。
さらに、Sport、Sport Plus、Trackの3つの走行モードが選択できる最新世代のアダプティブ ダンピング システムを採用。エンジン、トランスミッション、Eデフ、ダイナミック トルク ベクタリング、ダイナミック スタビリティ コントロール、アダプティブ ダンピング、電動パワーステアリングの働きを一括で最適化するほか、モードを上げるごとに俊敏性と反応速度が高まり、クルマのキャラクターがシャープになってサウンドも豊かになるという。
サスペンションは、フロントが鍛造ダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンク。ブレーキはフロントが400mm径の2ピース鋳鉄製ベンチレーテッドディスク、リアが360mm径のベンチレーテッドディスクを採用。鋳造と鍛造の2種類ある20インチホイールには、ウェット/ドライ両方の条件下でダイナミックな走行が出来るよう特別なチューンが施されたピレリP Zero(前255/40、後295/35)を装着している。
新型ヴァンテージの製作には、アストンマーティンならではのハイレベルのクラフトマンシップが投入され、さらに豊富に用意されたオプションアイテムにより、幅広いユーザーの要求に応えることも可能だ。ドライバーとの一体感を追求するこのニューモデルは、ワインディングローデでは走りを満喫し、サーキットでは鋭い牙を剥く本格的スポーツカーに仕上がっているという。
アストンマーティンのアンディ・パーマー社長兼CEOは、「最も成功した先代の後継モデルを製作することは、精神的にも大きなチャレンジであり、高いモチベーションが要求されました。今回、完成したクルマを前にして、非常にエキサイティングな気分です。よりシャープなルックスと俊敏な運動性能を備えた本物のスポーツカー、新型ヴァンテージは、まさにエンスージアストが待ち望んでいたアストンマーティンのピュアなドライビングマシンといえるでしょう」と語っている。
Aston Martin Vantage|アストンマーティン ヴァンテージ
ボディサイズ|全長 4,465 × 全幅 1,942 × 全高 1,273 mm
ホイールベース|2,704 mm
車両重量|1,530 kg(軽量オプション装着時)
エンジン|4リッター V型8気筒DOHCツインターボ
最高出力|375 kW(510 ps)/6,000 rpm
最大トルク|685 Nm/2,000-5,000 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|FR
サスペンション前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション後|マルチリンク
ブレーキ 前|φ400mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|φ360mm ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|255/40R20 / 295/35R20
定員|2人
トランク容量|350リッター
前後重量配分|50:50
0-100km/h加速|3.6 秒
最高速度|314 km/h
燃費|10.5 ℓ/100km(9.52 km/ℓ)
CO2排出量|245 g/km
価格|1,980万円