FFの後継モデル、フェラーリGTC4ルッソ日本デビュー|Ferrari
Ferrari GTC4 Lusso |フェラーリ GTC4 ルッソ
FFの後継モデル、日本デビュー
2016年のジュネーブ モーターショーでワールドプレミアされた4シーターのニューモデル、「GTC4 Lusso(ルッソ)」 が早くも日本で発表された。フェラーリ初の4輪駆動モデル、「フェラーリ フォー(FF)」の後継モデルで、注目の価格は3,470万円。今年12月以降に日本でのデリバリーを開始する予定だ。
Text by SAKURAI Kenichi
ビッグネーミングのリバイバル
フェラーリ初の4輪駆動モデル、「フェラーリ フォー(FF)」が登場したのは2011年のジュネーブ モーターショーだった。このモデルは、フェラーリが伝統的にラインナップする4シーターモデルの最新作であり、「612スカリエッティ」の実質的な後継モデルである。フェラーリのトップレンジに位置するモデルらしく、フロントに搭載されるのは珠玉ともいうべき伝統のV12エンジン。これを筆頭に、シューティングブレイクとフェラーリが称するこれまでのフェラーリにはない斬新なハッチバックデザインや前述の4輪駆動システムなど、革新的メカニズムを採用するモデルとしてデビューを果たした。
「GTC4Lusso(ルッソ)」は、分かりやすくいえばFFのビッグマイナーチェンジ版である。新たに与えられた「GTC4Lusso」というネーミングは、フェラーリが1960から70年代に送り出したラグジュアリーGTに名付けられた「GTC」という名称のリバイバルであり、フェラーリ ファンであれば、特に1971年にデビューした「365GTC4」を思い出すはずだ。
GTC4Lussoに用いられる「GT」は、その名のとおりグランツーリズモの頭文字で、かつての「365GTC4」ではそれに続く「C」がクーペを、「4」は4シーターを意味したが、GTC4Lussoではそうした意味に加え、「グランツーリズモ」+「クーペ」+「4輪駆動」を示すと解釈されている。ちなみに「Lusso(ルッソ)」とは、イタリア語でぜいたくを意味する。つまり、フェラーリの最上級4シーターGTがこのGTC4Lussoなのである。
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V12エンジンは30psアップの690psを発揮
記念すべきジャパンプレミアの会場では、フェラーリの極東・中東エリアのディーター クネヒテル統括CEOが登壇。GTC4Lussoの車両説明を行った。「GTC4Lussoは、330GTCや250GT Berlinetta Lusso(ベルリネッタ ルッソ)という名車からその名を引き継いだ4シーター フェラーリの最新モデルです。330GTCが誕生した1966年に、フェラーリは日本で初めて販売拠点を構えました。折しも今年はその年から数えて50周年を迎えます。フェラーリはこの50年間、デザインや性能に一切妥協することなく、日本のユーザーに最高峰のクルマの数々をお届けしてきました」と、クネヒテル氏は冒頭でコメントした。
さらに「今回日本で発売を開始するGTC4Lussoは、砂漠から雪深い山岳路、市街地に至るまであらゆるシチュエーションで卓越したパフォーマンスを発揮する。同時にドライバーとパッセンジャーにスポーティエレガンスとラグジュアリーな快適性を惜しみなく提供する」とGTC4Lussoを紹介。その特徴であるパフォーマンス、バーサビリティ(多様性)、スポーツラグジュアリーの3点それぞれについて紹介を行なった。
「高回転型の自然吸気V12エンジンながら、最大トルクの約80パーセントをわずか1,750rpmから発生する扱い易さと優れたレスポンスを実現しました。さらにGTセグメントの大きな特徴であり、このモデルのキャラクターを明確にするエンジンサウンドもGTC4Lussoのポイント。高速走行時には気持ちよくパワフルなサウンドをもたらし、市街地では控えめなトーンに調和します。シチュエーションによって変化させるサウンドが魅力」とスピーチ。フェラーリ独特のサウンドがまずは強調された。
GTC4Lussoに搭載されるエンジンは、6,262ccの総排気量を持つ直噴V型12気筒DOHC48バルブ自然吸気を採用。こうしたプロフィールこそ先代のFFと同様だが、GTC4LussoではFFの最高出力660ps/8,000rpmに対して最高出力690ps/8,000rpmへと30psの出力向上を果たした。同時に最大トルクも、683Nm(69.6kgm)から14Nm(1.5kgm)のアップとなる697Nm(71.1kgm)へと向上した。
参考までにGTC4Lussoの最高速はFFと同じ335km/hとされるが、0-100km/h加速は3.4秒と、FFの3.7秒から0.3秒の短縮を図った。このパフォーマンスは、ミドシップを採用するライバルたちにも決して引けを取らない。やはりフェラーリは、4シーターであっても、スーパーカーと呼ぶにふさわしい存在といえそうだ。
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進化した4輪駆動システム
シャシーでは、FFでフェラーリ初搭載となった4輪駆動システムがさらに進化したことがニュース。第4世代のスリップ サイド コントロール システム(SSSC4)をベースに、「4RM-S(4輪駆動、4輪操舵)」を開発し、進化した4輪駆動システム「4RM Evo」に統合した。後輪の操舵システムの採用は、もちろんフェラーリ初である。これがクネヒテル氏のいうバーサビリティ(多様性)の核心だ。
この後輪操舵システムは、速度やフロントタイヤの切れ角に合わせ車両がリアタイヤの切れ角をコントロール。コーナーの立ち上がりなどをサポートするダイナミックレスポンス コントロールモデルが組み込まれている。ドライバーのステアリング修正を極力抑え、オンザレール感覚のコーナリングが味わえるとフェラーリは開発の意図を説明するが、それだけにとどまらず、限界域でのコントロール性の向上や、コーナリングスピードのアップも期待できるはずだ。
「4RM-S(4輪駆動、4輪操舵)」には、さらに「E-Diff(電子制御ディファレンシャル)」や、「458スペチアーレ」に搭載された「SCM-E(マグネティックライド コントロール サスペンションの進化版)」も合わせて統合制御される。さらにこれらのシャシーシステムは、ハードの総重量を従来の約50パーセントに抑え、大幅な軽量化を図ったことも注目の進化ポイントである。ウェット路面や雪道などの低μ路で、FF以上のグリップ性能を発揮する。
クネヒテル氏の言葉を借りれば、「どのような路面状況でも常に最大のパフォーマンスを発揮するのがGTC4Lussoのもうひとつの魅力」ということになる。
特徴の3つ目となるスポーツラグジュアリーは、主にスタイリングや装備を指す。クネヒテル氏は、「GTC4Lussoでは、ドライビングプレジャーとこれまでにないラグジュアリー性をもたらすため、低くスポーティなフォルムと美しいプロポーションを実現。同時にエアロダイナミクスの向上にも積極的に取り組んだ」という。
「(FF比では)インテリアの90パーセント以上の箇所が新デザインとなり、ラグジュアリー性を向上しました。また、機能性とUIのために多大な開発時間を要し、そこで生み出された新しい(デザインの)ステアリングホイールはエアバッグの小型化によってよりコンパクトになり、10.25インチのフルHDパネルを採用した最新インフォテイメントシステムはタッチセンサー対応になりました」とエクステリアとインテリアの特徴を紹介した。
シューティングブレイクとフェラーリ自身が呼ぶエクステリアデザインは、フロントバンパーやグリル、ヘッドライトを一新。先代のFFとの差別化を明確に図った。リアに目を移せば、丸形のテールライトが片側1灯式から丸形2灯式に変更されたことが分かる。ルーフスポイラー、バンパー下のディフューザーも新デザインだ。フロントフェンダーに設けられたエアアウトレットは、3枚のルーバーを備えたデザインで、これは330GTCのエアアウトレットをモチーフにしたものである。
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助手席でドライビング体験を共有できる新デバイス
こうした細部の変更にとどまらず、エアロダイナミクスの向上もGTC4Lussoのハイライトのひとつである。FFに比較して抗力係数は6パーセント向上し、これは高速域での車両の安定性や燃費にも貢献する。さらに積極的に走行中の気流をクーリングに利用し、冷却効率も大幅にアップさせたという。「ルックスだけでなくエアロダイナミクスの向上にも腐心したデザインで、それをトップレベルの性能で実現した」というのが、フェラーリの公式見解だ。
クネヒテル氏が90パーセント以上をリニューアルしたというインテリアでは、特にフェラーリ初の「デュアルコクピット」と呼ぶ助手席前にもエンジン回転数やギア、スピードを表示するパッセンジャー専用のディスプレイの配置が注目される。
「デュアルコクピット」は、助手席に座るゲストもGTC4Lussoの走りを共有することができる新しいアイデアだ。こうした新デバイスの採用に合わせ、立体的で質感の高いダッシュボードやブリッジデザインのセンターコンソール、ステアリングホイール、ヘッドレスト一体型となったシートなど、確かにキャビンは全体にわたって大幅に変更を受けている。
センターコンソール中央に収まる10.25インチに大型化された横長のタッチ式液晶モニターには、最新インフォテイメントシステムを採用。指先ひとつで簡単にオーディオやエアコンの温度調整など各種機能を呼び越すことができるほか、直感的にコントロールが可能なUIを用いている。フェラーリが主張するように、「ルッソ」に名にふさわしい豪華さとモダンで先進的なイメージを合わせ持っていると誰しもが感じるはずだ。
今回の発表イベントでは、GTC4Lussoとともに、フェラーリが日本に拠点を構えてから50周年を迎えたことを記念するロゴも同時に掲げられたほか、「330GTC」と「250GT Berlinetta Lusso」も展示され、GTC4Lussoのジャパンプレミアに華を添えた。フェラーリでは今年、日本での50周年を記念したイベントもいくつか予定しているという。そのうちのひとつは、11月10日から14日にかけて京都で開催される「フェラーリ インターナショナル カヴァルケード」であることがすでに発表されている。
Ferrari GTC4Lusso|フェラーリ GTC4ルッソ
ボディサイズ|全長 4,922 × 全幅 1,980 x 全高 1,383 mm
車両重量|1,790 kg
エンジン|6,262 cc 65度V型12気筒
ボア×ストローク|94 × 75.2 mm
圧縮比|13.5
最高出力| 507 kW(690 ps)/ 8,000 rpm
最大トルク|697 Nm/ 5,750 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(F1 DCT)
駆動方式|4WD
ブレーキ 前|φ398×38mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|φ360×32mm ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35R20 / 295/35R20
0-100km/h加速|3.4 秒
0-200km/h加速|10.5 秒
100-0km/h減速|34 メートル
200-0km/h減速|138 メートル
最高速度|335 km/h
重量配分|フロント47:リア53
燃費|15ℓ/100km(およそ6.67 km/ℓ)
CO2排出量|150 g/km