ジュネーブを沸かせた2台の猛牛|Lamborghini
Lamborghini Centenario|ランボルギーニ チェンテナリオ
Lamborghini Huracan LP 610-4 Avio|ランボルギーニ ウラカン LP610-4 アヴィオ
ジュネーブを沸かせた2台の猛牛|Lamborghini
ジュネーブ モーターショーにおいて、エキサイティングな2台のランボルギーニがワールドプレミアされた。1台は、ランボルギーニの創設者であるフェルッチオ・ランボルギーニの生誕100周年を記念したV12ミッドシップの特別限定車「チェンテナリオ」、そしてもう1台が戦闘機から着想を得たという「ランボルギーニ ウラカン LP610-4 アヴィオ」である。
Text by SAKURAI Kenichi
限定40台のハードコアモデル
多くのニューモデルが出揃った今年のジュネーブ モーターショーの中でも、もっともギャラリーを集めたホットなブースとなったのが、ランボルギーニである。今年は創設者であるフェルッチオ・ランボルギーニの生誕100周年であり、また11年にわたって同社を率い、販売台数を倍以上に押し上げたステファン・ヴィンケルマン社長兼CEOが勇退するということもあり、これまで以上にエネルギッシュであったように感じる。
さてそのランボルギーニブースに置かれた2台のワールドプレミアモデルは、いかにもランボルギーニというアグレッシブなものだった。最初に注目すべき1台は、そのフェルッチオ・ランボルギーニの生誕100周年を記念するスペチアーレの「チェンテナリオ」だ。
まったくの新型車として登場した、イタリア風にいえばスペチアーレと呼ばれるチェンテナリオは、クーペが20台、ロードスターが同じく20台の計40台のみの限定生産になる。価格は175万ユーロ(邦貨約2億1600万円)。そうした高額なプライスにもかかわらず、すでにその40台すべてにオーナーが付いており、発表と同時に完売しているというのもニュースである。
まったくの白紙から描かれたチェンテナリオのエクステリアデザインは、同じV12エンジンをミッドシップするフラッグシップモデル「アヴェンタドール」をさらに進化させたようないかにもランボルギーニらしいウェッジシェイプのフォルムを持っている。既存モデルからの外装パーツにほぼ流用はない。
V12エンジン搭載モデルの伝統でもあるシザーズドア(上方にポップするドア)を採用するそのボディ外観をみても分かるように、アウタースキンは軽量なカーボンファイバーに覆われ、シャシーもランボルギーニではすでにお馴染みのカーボンのモノコックタブを採用。さらにシートシェルやインテリアトリムもすべてカーボンファイバー製と徹底している。よって車重はわずか1,520kgと、V12エンジンを搭載するこのクラスのスーパーカーとしては望外な超軽量モデルに仕上げられている。
Lamborghini Centenario|ランボルギーニ チェンテナリオ
Lamborghini Huracan LP 610-4 Avio|ランボルギーニ ウラカン LP610-4 アヴィオ
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台数限定モデルならではの特別な内外装
どこからみてもランボルギーニだとひと目で分かるアピアランスは、少量生産のスペチアーレらしく、量産効果や原価度外視の空力性能向上に特化したデバイスに彩られている。もちろんエアロダイナミクス性能向上は最優先課題で、前後のボディ下部に採用されたディフューザーやボディサイドに設けられたカナードのほか、リアホイール前には車高すべてを使用したランボルギーニ最大となる大型のエアインテークを設える。
さらにボディ後端には、速度によって伸縮する格納式の可変リアウィングも採用した。ホイールのスポークにはカーボンセラミックブレーキディスクの熱を効果的に逃がすカーボン製パーツ(ランボルギーニはこれをスポークファンと呼ぶ)も装着されている。可変式のリアウィングは、速度や走行モードによって最大150mm伸びると同時に15度の角度が付き、ハイパフォーマンス時の空力効率を最適化するという。
ユニークなクロスステッチを採用したインテリアは、ダッシュボードやステアリングホイール、シート、ドアトリムに至るまでアルカンターラで統一。ドアのインナーパネルやセンターコンソール、ステアリングのスポーク部分など通常樹脂や金属製となるパーツはすべてカーボンファイバーが使用されている。ボディ同様、オーナーの好みによってカラーリングや素材が自由にカスタマイズできるのは、もちろんいうまでも無い。
また、チェンテナリオでは、進化したインフォテイメントシステムも搭載。衛星ナビゲーションに対応した縦型の10.1インチの高解像度タッチ式モニターをダッシュボード中央に置き、このモニターでインターネットの閲覧やEメール、SNS、ウェブラジオなどをコントロール可能だ。さらにApple CarPlayも搭載し、モダンな車内エンターテイメント環境を構築している。
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ランボルギーニ史上最強のV12エンジン
リアミッドに搭載される自然吸気のV型12気筒エンジンは、基本アヴェンタドールのパワーユニットの改良版だが、現行トップモデルである「アヴェンタドール LP750-4スーパーヴェローチェ」よりも20psアップの770psとなる最高出力を発生する。もちろんこれはランボルギーニ史上最もパワフルなエンジンといっていいものだ。
わずかながらもアヴェンタドール LP750-4スーパーヴェローチェよりも軽量な1,520kgのボディの恩恵もあり、パワーウェイトレシオは1.97kg/ps。最高速度データは350km/h以上、0-100km/h加速は2.8秒を誇る。0-300km/h加速はわずか23.5秒で、これは先のスーパーヴェローチェよりも0.5秒速いデータになる。
そしてもうひとつ、このチェンテナリオにはランボルギーニ初の機構が搭載されている。それがリアホイール ステアリング システムと呼ばれる4輪操舵システムである。ランボルギーニのトップモデルらしく、チェンテナリオもアヴェンタドールや「ウラカン」と同様に4輪駆動方式を採用するが、チェンテナリオではその4輪駆動システムに加え、低速時には後輪がステアリング角と方向と逆に動き小回りをきかせる一方、高速時にはステアリングと同方向に後輪が動きボディの俊敏性と安定性を向上させるという4輪操舵システムは、もちろんランボルギーニ史上初採用となる。
スーパーカーの世界にいちはやく4輪駆動を持ち込み定着させたランボルギーニは、ふたたび4輪操舵システムでスーパーカーの技術革新を推し進めようとしている。そう、チェンテナリオは限られたオーナーに向けた貴重なコレクターズアイテムであると同時に、最新技術いち早く披露するショーケースとしての役割も担っているのである。
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ウラカン初の限定モデル「アヴィオ」
もう1台の注目モデルは、「ウラカン LP610-4」をベースとした全世界250台限定の「アヴィオ」だ。パワートレインなどはウラカン LP610-4と同一だが、戦闘機をモチーフにしたマット仕上げのボディカラーや、ドアパネルに採用されたランボルギーニの頭文字に当たる「L」と、イタリアの三色旗をモチーフにした国籍を表わす円形章、さらにランボルギーニの設立年である1963年を示す「63」をデザインしたロゴなどがスペシャル。
ボディカラーはアヴィオのために用意された5色をラインナップ。パール光沢仕上げの「グリジオ ファルコ」を標準に、「ブリュ グリフォ」、「グリジオ ニビオ」、「グリジオ ヴルカーノ」、そして「ヴェルデ トゥルビン」のいずれもマットカラーとなる4色を用意する。これに加え、フロントボンネットからルーフまで、白またはグレーのデュアルストライプがアクセントとして付けられる。ボディ下部やサイドシルもこのストライブと同色でコーディネートされる。
内装ではブラックのレザーと、レーザー彫刻による六角形の模様があしらわれたアルカンターラのコンビネーションでまとめ上げられた。シート中央やアームレスト、ニーレスト、そしてドアトリムなどのブラックレザー部分にはホワイトのステッチが施されている。また、シートサイドサポート部分に「L63」のロゴが手刺繍されるほか、ドライバー側のウィンドウには、エナメル加工が丁寧に施された限定車を示すプレートが取り付けられる。リフトシステムやクルーズコントロール、ナビゲーションシステムなど、通常はオプション扱いとなる多くの装備が標準採用されるのも「アヴィオ」の魅力である。
ボディカラーや装備を充実させたスペシャルモデルだけに、パフォーマンスはベースとなったウラカン LP610-4と変わらないが、購入を考えているオーナーにはユニークな外装や使える装備が魅力的に映るはずのアヴィオは、2016年夏に日本でも発売を開始する予定。価格は2,820万円(税別)と発表されている。