“SV”の称号をもったランボルギーニ アヴェンタドールをスペインで試す 前編|Lamborghini
CAR / IMPRESSION
2015年7月13日

“SV”の称号をもったランボルギーニ アヴェンタドールをスペインで試す 前編|Lamborghini

Lamborghini Aventador LP 750-4 SV(Superveloce)
ランボルギーニ アヴェンタドール LP 750-4 SV(スーパーヴェローチェ)

SV”の称号をもったアヴェンタドールをスペインで試す 前編

0-100㎞/h加速2.8秒、最高速度350km/h以上という超ド級のパフォーマンスが与えられた特別なランボルギーニ「アヴェンタドール LP 750-4 SV」を、F1スペインGPの舞台でもあるカタルーニャ サーキットでテストドライブ。“スーパースピード”を意味する伝統の称号「SV(スーパーヴェローチェ)」をもつ最新鋭の猛牛は、どのようなパフォーマンスを披露するのか。大谷達也氏がリポートする。

後編を読む

Text by OTANI Tatsuya

伝統のスーパーヴェローチェ

バルセロナに到着した当日の夜、ビーチに隣接したホテルのベランダで食事前のカクテルを楽しんでいると、ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマン社長と技術のトップであるマウリツィオ・レッジャーニ氏が通りがかり、われわれメディア関係者に声をかけていった。

ふたりとは昨年の「ウラカン LP610-4」試乗会や各地のショー会場で何度となく顔をあわせているが、このときほど上機嫌で自信に満ちた表情を見たことがない。そこで私はヴィンケルマン社長に自分が感じたままを伝えると、こんな答えが返ってきたのである。

「アヴェンタドールSVを試乗された方々から『これは史上最高のランボルギーニだ』というお褒めの言葉をたくさんいただきました。みなさんも明日、試乗されれば、私たちが笑顔を浮かべている理由をご理解いただけるものと思います」

「アヴェンタドール LP700-4」、そして「ウラカン LP610-4」と、これまでヒット作を連発してきたふたりにこれほど明るい表情をもたらした「アヴェンタドール LP750-4 スーパーヴェローチェ(SV)」への興味が、このとき私のなかで急激に膨らんでいった。

ランボルギーニ ファンにとってSVの2文字は特別な意味を持っているはずだ。古くは「ミウラ SV」にはじまり、「ディアブロ SV」「ムルシエラゴ SV」とこれまでに3台のSVが登場しているが、ランボルギーニの歴史が50年を越すことを考えれば、SVがどれだけ希少なモデルであるかがわかっていただけるだろう。

ヴェローチェ(Veloce)とはイタリア語でスピードのこと。つまりスーパーヴェローチェはスーパースピードを意味するわけだが、もともと速いランボルギーニに敢えてSVの文字をくわえるには、やはりそれ相応の理由がなければいけないというわけだ。

Lamborghini Aventador LP 750-4 SV(Superveloce)
ランボルギーニ アヴェンタドール LP 750-4 SV(スーパーヴェローチェ)

SV”の称号をもったアヴェンタドールをスペインで試す 前編 (2)

NAエンジンの美点

では、アヴェンタドール LP750-4 SVにはどれほど特別なチューニングが施されているのだろうか?

その心臓部である6.5リッターV12“超高回転型”自然吸気エンジンは最高出力の発生回転数を、“スタンダード”なアヴェンタドールから150rpm引き上げて8,400rpmとし、プラス50psの750psを引き出すことに成功している。

こうやってキーボードで“750ps”という文字を打ち込んでも何の重みも感じられないが、ロードカーとしてはほとんど非現実的な数字で、もはやレーシングカーに匹敵する、もしくは並みのレーシングカーさえ上回るほどのハイパワーだ。もっとも、700psと750psとでは大した差がないようにも思えるが、出力特性曲線を見ると6,500rpmを越えた回転域までパワーが一直線に伸びており、この領域での官能性が格段に増していることが想像できる。

もう一点、事前のプレゼンテーションで興味深いと思ったのがターボエンジンとNAエンジンのトルク特性のちがいだ。一般に、ターボエンジンは最大トルクの発生回転数が低いことから「低速域から分厚いトルクを生み出す」と思われているが、彼らがおこなったシミュレーションによると、ターボエンジンのトルクが3,500rpm以下で急激に落ち込むのに対し、NAエンジンではよりなだらかな低下に留まっており、たとえば2,500rpmを下回る領域ではNAエンジンのほうがより力強いトルクを発生するのだという。

なるほど、どんなにレスポンスが鋭いターボエンジンよりも、ボトムエンドでスロットルを踏み込んだときに直ちに加速に移るのがNAエンジンであることは、われわれも経験的に知っている。彼らが示したトルク特性曲線を見て、そうした自分たちの経験則が客観的データによって裏打ちされたように感じた。

車重は50kgの軽量化が図られたというが、これもまた1,525kgというSVの車重と比べればわずかなちがいでしかない。プレスリリースにはカーボンコンポジットを多用したり防音材を省略することで達成したと書かれているが、おそらく50kgの大半は電動シートを手動式のバケットシートに改めたことによるのではないか。

もっとも、このシートは視覚的にいかにも軽量そうに見えるし、ホールド性、座り心地も素晴らしい。この種のモデルの場合、「軽そう」と感じさせることは意外に大切で、開いた状態のガルウィングドアを引き下げるのに赤いレザー製のリボンを用いるなんていうSVの演出も、ドライバーのやる気をそそるには有効な手立てだと思う。

Lamborghini Aventador LP 750-4 SV(Superveloce)
ランボルギーニ アヴェンタドール LP 750-4 SV(スーパーヴェローチェ)

SV”の称号をもったアヴェンタドールをスペインで試す 前編 (3)

アヴェンタドールSVのエアロダイナミクス

試乗会の舞台はF1スペインGPの舞台でもあるカタルーニャ サーキット。そのガレージで試乗車の到着を待っていると、アヴェンタドールSVがピットレーンに滑り込んできた。そのボディサイドを見ただけで、SVがスタンダードモデルとはまったくことなるスタイリングに仕上がっていることが理解できた。

その最大の理由は、サイドシル部を黒く塗りつぶしてアヴェンタドールのウェッジシェイプをさらに強調した点にあるのだが、これが実に効果的で、どちらかといえば重厚なイメージだったアヴェンタドールが、コンパクトで極めて軽量なレーシングカーのように映ったのだ。

おなじくエクステリアでいえば、ウィングを二段重ねにしたように見えるフロントセクション、テールエンドから伸びたステーによって高い位置に固定されたリアウィング、合計6本のスリットが入った巨大なリアディフューザーなどが目につくが、いうまでもなく、これらはより大きなダウンフォースを生み出すために追加されたデバイスである。

SVはスタンダード アヴェンタドールに比べてダウンフォースを170パーセント増やし、空力効率を150パーセント改善しているという。空力効率とはダウンフォースを空気抵抗で割った数値で、いわばどれだけ効率よくダウンフォースを生み出すかを示している。どんなにダウンフォースが大きくて高速コーナーが速くなっても、空気抵抗も大きくなれば最高速度が落ち込むし、燃費も悪化する。

そこで効率よくダウンフォースを生み出すことが求められるわけだが、SVはボディ下面のエアフローを整流させるためのパネルを追加することでそもそもの素性を改善。そこに、前述したようなデバイスを取り付けることで、ハイダウンフォースでありながらロードラッグ(低空気抵抗)のエアロダイナミクスを作り上げたのである。

こうした技術的特徴を説明しはじめるとキリがないのだが、サーキットで試乗した印象に入る前に、あとふたつだけ紹介したい新装備がある。

ひとつは、ダンパーの油圧回路に磁性体を封入して減衰力を瞬時に、かつ連続的に可変できるマグネト レオロジカル サスペンション(MRS)。これは高いコーナリング性能と乗り心地を両立させるのに効果があり、すでにウラカンにも採用されているが、アヴェンタドールはスムーズな作動とバネ下重量の軽減に効果があるプッシュロッド式サスペンションと組み合わされている点がことなる。

もうひとつはステアリングギア比の可変制御であるランボルギーニ ダイナミック ステアリング(LDS)の採用。こちらもウラカンで導入済みとはいえ、SVでは標準装備となるだけでなく、専用のチューニングが施されているという。

後篇、いよいよアヴェンダドール SVでサーキットへ

080507_eac_spec
Lamborghini Aventador LP750-4 Superveloce
ランボルギーニ アヴェンタドール LP750-4 スーパーヴェローチェ
ボディサイズ|全長 4,835 × 全幅 2,030 × 全高 1,136 mm
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,720 / 1,700 mm
最小回転半径|6.25 メートル
重量|1,525 kg
重量配分 前:後|43 : 57
エンジン|6,498 cc 60°V型12気筒 DOHC 48バルブ
圧縮比|11.8±0.2 : 1
ボア×ストローク|95 × 76.4 mm
最高出力| 552 kW(750 ps)/ 8,400 rpm
最大トルク|690 Nm/ 5,500 rpm
最高エンジン回転数|8,500 rpm
トランスミッション|7段ISR(シングルクラッチ セミオートマチック)
駆動方式|4WD
サスペンション 前|プッシュロッド システム付きホリゾンタル磁性流体ダンパー
サスペンション 後|プッシュロッド システム付きホリゾンタル磁性流体ダンパー
ブレーキ 前|φ400×38mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|φ380×38mm ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|255/35ZR20 / 355/25R21
最高速度|350 km/h以上
0-100km/h加速|2.8 秒
0-200km/h加速|8.6 秒
0-300km/h加速|24.0 秒
100-0km/h減速|30 メートル
燃費(NEDC値)|16.0 ℓ/100km(およそ6.25km/ℓ)
CO2排出量|370 g/km
燃料タンク容量|90 リットル

           
Photo Gallery