中国発のスーパーカーが登場|Icona
Icona Vulcano|イコナ バルカーノ
中国発 スーパーカー イコナ バルカーノ登場
中国からハイクオリティなスーパーカーが登場した。その成り立ちは? 上海モーターショーに参加した山崎元裕氏からのリポート。
Text by YAMAZAKI Motohiro
想像を超える
オート上海の開幕以前から、中国にあらたなスーパースポーツブランドが誕生するという情報は、世界を駆け巡っていた。上海市に本社を置くICONA=イコナがそれで、同社からは事前にエクステリアデザインの一部を見せるティーザーフォトも公開されていた。
はたしてイコナとは、どのような新興スーパースポーツメーカーなのか。そして彼らの第一作はいかなる魅力を持つモデルなのだろうか。
現在の段階では、まだコンセプトカーにすぎないが、それは想像をはるかに超える、素晴らしいフィニッシュ、そしてエンジニアリングを見せるモデルだった。オート上海で抱いた第一印象を率直に表現するのならば、このような言葉を用いるのがベストだろう。
バルカーノ その成り立ち
なぜ中国ブランドの新興勢力が、ここまでのモデルを発表することができたのか。その疑問は、イコナという新興勢力のもとへと集結した人物、あるいは企業の名を知れば、一瞬にして氷解することになる。
イタリアのシチリア州にある火山島の名に由来する、VULCANO=バルカーノの名を掲げる、イコナのスーパースポーツをデザインしたのは、かつてニッサンやランドローバーのデザインスタジオで、さまざまな新型車デザインに手腕を奮った、フランス人デザイナーのサムエル・シュッファルト。
そのダイナミックで斬新なデザインをもとに、現実のものとして3次元化してみせたのは、フェラーリのスーパーアメリカ=「575M マラネロ」ベースのオープン限定車や、BMWの「クーペ ザガート」など、自動車メーカーからの依頼によるプロトタイプ製作では多くの実績を持つ、イタリアのCECOMP=チェコンプ。
バルカーノのボディは、このCECOMPと、やはり自動車の生産技術にたいしては、25年以上もの経験を積み重ね、記憶にあたらしいところではアルファロメオ「8C」シリーズの生産技術にも貢献した、おなじイタリアのTECNOCAD=テクノキャドのサポートを受け、完成される予定だ。
チーフエンジニアもまたビッグネームだ。
かつてランチア時代には、「037」や「デルタS4」でWRCを制覇。後にフェラーリやアプリリアなど、おもにモータースポーツフィールドを中心に、そのエンジニアとしての能力を世界に証明してみせた、クラウディオ・ロンバルディが、イコナのエンジニアリングを統括する。
彼は現在、イタリアで自らのエンジニアリングオフィス、AIPA=アイパを率いる立場にあるが、このAIPAもまた全面的にバルカーノの開発、そしてイコナの活動をサポートする。
ここまでの事情を知れば、誰もがこうおもうことだろう。バルカーノは中国に誕生した新興勢力の作ではあるものの、それはイタリアンスーパースポーツにほかならないのだと。
950psのハイブリッドパワートレイン
バルカーノに用意されるバリエーションは2タイプで、それは各々「H-TURISMO V12」、「H-COMPETIZIONE」と呼ばれる。
「ツーリズモ」、そして「コンペティツィオーネ」というネーミングもまた、イタリアそのものといった印象だ。
両モデルのちがいはパワーユニットで、前者には5,998cc仕様のV型12気筒エンジンと、リアアクスルにエレクトリックモーターが。また後者には3,800cc仕様のV型6気筒ツインターボエンジンと、前後アクスルの各々にエレクトリックモーターが組み合わされる。
注目の最高出力は、H-TURISMOがV12エンジンの790psとエレクトリックモーターの160psをトータルして950ps。いっぽうのH-COMPETIZIONEは、V6ツインターボエンジンの550psに、エレクトリックモーターが160ps×2個で、トータル870psとなる。
イコナによれば、CFRPなどの軽量素材の採用により、バルカーノの車重はH-TURISMOで1,595kg、H-COMPETIZIONEでは1,635kgを実現。
最高速は両モデルとも350km/hとされるが、0-100km/h加速は、H-TURISMOで3秒、H-COMPETIZIONEでは2.9秒が、6段ギアボックスとの組み合わせで達成されるという。
ちなみにバルカーノは、エレクトリックモーターのみの駆動による、いわゆるゼロエミッション走行も可能。それは現代を生きるスーパースポーツとして、理想的なシステムを持つモデルといえる。
フロントに285/30R20、リアに355/25R21サイズを選択したタイヤはピレリからの供給を受けるもの。カーボンセラミックディスクを採用したブレーキシステムは、ブレンボ製となる。
プロダクションモデルの正式発表に向け、イコナはこれからバルカーノの最終的な開発を進めていくという。そのデビューが待ち遠しい。