NISSAN LEAF|日産 リーフ 第1回
CAR / LONG TERM REPORT
2015年4月15日

NISSAN LEAF|日産 リーフ 第1回

NISSAN LEAF|日産 リーフ

日産リーフを導入! 第1回

3.11以降、活発な議論が交わされているエネルギー問題。原発事故の問題はもちろんのこと、石油の枯渇、CO2排出、発送電の分離、スマートグリッド……あらゆる問題と深くかかわっているのが自動車である。そして、今後のクルマのあり方をうらなう一台として、OPENERSが注目したのが日産から発売されたEV(電気自動車)リーフだ。リーフのある生活は、あたらしい時代のクルマ像をどのように示すのか? その深淵にせまるべく、OPENERSでは長期リポート車の4号車として導入した。

文=松尾 大写真=JAMANDFIX 齋藤誠一(人物)

4号車
日産 リーフ X
NISSAN LEAF X
第1回

導入時期 10月4日

SNV(ソーシャル・ネットワーク・ビークル)の時代がやってきた

2010年末に市場導入された日産リーフが、OPENERS編集部のもとにやってきた。10月から来年2月末までの5ヶ月間にわたって、その実力、使い勝手をリポートすることになる。

1885年にカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーによって自動車が発明されて100年あまり。奇しくも100年に一度ともいわれる大不況の嵐が吹き荒れ、自動車産業も大きな打撃を受けているいま、まさにあたらしい時代のクルマのあり方を提案する一台があらわれた。

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日産リーフは、バッテリーを搭載し、電気モーターを回すというEVである。しかし、ただのEVという範疇にとどまらないのがこのクルマの魅力である。

既存の大送電網から供給される火力、原子力などの電力ではなく、スマートグリッドを軸とし、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電によって、人びとの社会生活が営まれるあたらしい社会では、発電した電力をいかに貯めておけるかが重要な課題である。なぜなら、再生可能エネルギーによる発電は天候などに左右されるため、不安定だからだ。その課題をクリアするためのひとつの手段がEVだ。EVに搭載される大容量、高性能なバッテリーにより、これまで移動するための道具として存在してきたクルマが、蓄電池の役割をも担うことになる。つまり、クルマが個人のための道具としてだけでなく、地域社会に貢献する、社会的な存在となるわけである。それがOPENERSが提言する、SNV(ソーシャル・ネットワーク・ビークル)だ。

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そして、現時点においてもっともSNVと呼ぶにふさわしいクルマが日産リーフだと、OPENERSは考える。先日開催されたCEATECのリポートでも紹介したとおり、日産は来年3月までに、リーフのバッテリーから、家庭などにたいして電力を取り出す電力制御装置(PCS=Power Control System)を発売する予定だ。また、リーフが搭載するバッテリーの24kwhという蓄電量は一般家庭2日分の電力が補えるもので、スマートハウスというカタチで提案されていた。

スマートコミュニティーの実現には、発送電の分離や電気エネルギー売買の自由化、太陽光や風力による発電効率の向上、さらにスマートグリッドの規格統一や整備など、まだまだハードルは高い。そのほか、どのような課題があり、いかにして解決できるのか、OPENERSはリーフに乗りながら提言して
いきたいと考えている。

NISSAN LEAF|日産 リーフ

日産リーフを導入! 第1回

補助金と減税で100万円以上お得に

5カ月間の長期テストのため、横浜・みなとみらいにある日産自動車の本社で貸与を受けたリーフは、イメージカラーのアクアブルーやホワイトパールなどではなく、ラディアントレッドというボディカラーに塗装されたものだ。日陰ではエンジのように、太陽光のふりそそぐ中ではブラッドオレンジのように輝くリーフはなかなか魅力的に見える。あまり知られていないことだが、リーフには2グレードあり、こちらはベースモデルであるXというグレード。

車両本体価格は376万4250円だが、ご承知のとおり2011年度は国からの補助金78万円のほか、エコカー減税により、16万1300円の自動車取得税、3万円の自動車重量税、2万9500円の自動車税がすべて0円となっている。これにより、通常より101万3500円も安くすむということになる。ただし、この税制は2012年3月末までのものなので注意したい。

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わかっていたことではあるが、車内に乗り込むと、決して400万円をオーバーするようなラグジュアリーなクルマという印象はない。チープというわけでもないが、1.5~1.8リ
ッタークラスのファミリーカーといった感じだ。

モーターの制御技術のすばらしさ

走りだすための儀式は、インパネの左下にあるPCのスイッチのようなパワーボタンを押すことからはじまる。もちろん、電気が流れただけなので、音はない。インパネのリーフをかたどった緑色のインジケーターが光れば、走ることが可能という合図である。シフトを右に倒し、手前に倒し、アクセルを踏めば動きだすのだが、もちろん、そのあいだに音はほとんど聞こえない。

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アクセルを踏むと、モーターならではの分厚いトルクが1,520kgのボディを軽々と引っ張る。感心したのが、モーターの制御技術だ。リーフの開発責任者である日産自動車 ゼロエミッション事業本部の阿部徹さんによると、なめらかな走りを実現するために1/100秒単位でトルクのオン・オフをおこなっているという。EVは0からいきなり最大トルクを発生するため、スタート時はとくにいきなりスイッチが入ったようなロケットスタートになってしまいがちだが、リーフにはそれが見られない。大排気量車のごとく余裕のある加速フィールなのだ。

NISSAN LEAF|日産 リーフ

日産リーフを導入! 第1回

航続距離がもうちょっと欲しい

横浜の日産本社を出発し、途中、錦糸町にある編集部に立ちより、さらにその後、小岩にある編集部スタッフ自宅で撮影をおこなったのち、幕張メッセでおこなわれていたCEATECの取材に行った。その後、編集部にもどり、スタッフ宅へという約100kmという道のりが、導入初日の走行となった。

リーフの航続距離は満充電時にJC08モードで200kmとされている。横浜で受け取ったときの航続距離はインジケーター上では182kmと表示されていた。十分な航続距離があると思っていたが、現実はそうではなかった。何しろ、最終的にスタッフ宅にたどり着いたときは航続距離が残り9kmとなっていたのだ。

なぜ、約70kmの誤差が出たのかというと、それは走り方に尽きる。バッテリーの電力を使わないようにゆっくりと走りつづけないと航続距離は見る見るうちに減少する。エアコンを使うと約10~20km減るようだし、アクセルを開けすぎると数100メートル走るだけで、インジケーターの表示が数km減るといった具合だ。このあたりの使い方には慣れが必要だと悟った初日。しかし、次回はもっと遠いところへの走行リポートをお知らせするつもりだ。

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充電設備の導入工事について

ところで、リーフを購入したいと思っていても、充電設備がもっとも大きなハードルとなる。日産によると、個人住宅はもちろん、マンションなどの集合住宅でもこれまでに納入した実績があり、とくにライオンズマンションを展開する大京はあたらしいマンションには積極的に充電設備を設けている。しかし、通常はマンションなどに導入しようとなると、管理組合などの賛同が得られないと難しい。マンションに住んでいて、賛同を得られなかったオーナーのなかには、別の場所に駐車場を借りて、電線から直接電気を引っ張る工事をしたという猛者もいたそうだが、普通はそこまでしないだろう。

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OPENERSでは、スタッフの自宅を充電ポイントとすることにした。充電設備の工事となると大掛かりな印象だが、実際にはそれほどのものではない。ブレーカーのある場所から駐車スペースのコンセントまでの導線を作るという工事で、通常2時間半から3時間程度で終わる工事だ。今回も約2時間で終了した。

工事費用は、条件にもよるが基本工事が9万9000円(10メートルぶんのケーブルふくむ)に追加作業費がかかる。ケーブルは10メートル延びるごとに1万1000円、コンセントは壁つけタイプで5万円前後、スタンドタイプで10万円前後となっているそうだ。まずは、ディーラーに確認することをお薦めする。なお、今年いっぱいは5万円引きのキャンペーンがおこなわれているので、真剣に購入を考えているという読者には年内の購入をお薦めする。

日産リーフ X 初期コスト詳細

車両本体価格 376万4,250円
メーカーオプション
ETC 1万9,950円
ディーラーオプション
充電ケーブル(15m、200V用) 8万9,300円
フロアカーペット(消臭機能つき) 2万5,200円
諸費用
登録諸費用 4万7,740円
自動車税 1万5,000円
自動車取得税 0円
自動車重量税 0円
リサイクル法関連費用 0円
合計 396万1,440円

2011年度クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(国庫) 78万円
平成23年度電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車購入補助金(東京都) 39万円

※上記補助金額は、メーカー希望小売価格で自家用に購入した場合の最大額で補助金額は、購入価格に応じて変動。また対象車両は6年間保有する義務あり。

補助金額合計 117万円
総支払参考価格 279万1,440円


NISSAN LEAF X

ボディ 全長4,445×全幅1,770×全高1,545mm ホイールベース2,700mm
車両重量 1,520kg
駆動用バッテリー リチウムイオン電池
総電圧 360V
総電力量 24kwh
原動機 電気モーター
最高出力 80kW(109ps)/2,730~9,800rpm
最大トルク 280Nm(28.6kgm)/0~2,730rpm
電力消費率(JC08モード) 一充電走行距離 200km、交流電力量消費率 124W・h/km
駆動方式 前輪駆動
価格 376万4,250円
           
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