CEATEC JAPAN 2011 日産が考えるスマートハウスのありかた
CAR / NEWS
2015年4月23日

CEATEC JAPAN 2011 日産が考えるスマートハウスのありかた

CEATEC JAPAN 2011|シーテック ジャパン 2011

日産が考えるスマートハウスのありかた

日産自動車は、幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2011」で、電気自動車「日産リーフ」を核としたスマートハウスを提案している。

文=松尾大写真=齋藤誠一

リーフから給電する“Leaf to Home”

日産自動車が「CEATEC JAPAN 2011」内に設置された、スマートコミュニティ“ZERO”というブースで提案しているのはリーフからの送電や太陽光発電、燃料電池を組み合わせた、スマートハウス「NSH-2012」。

このスマートハウスは、本体の外板にも応力を受け持たせるモノコック構造が採用され、外板には軽量なアルミニウムがもちいられている。居室の下に自動車の駐車スペースを配する高床式で、6角形の居室は室内の気流がもっとも循環する、空調効果が高い形状であることから採用された。

リーフの開発に携わり、PCSの開発も取りまとめた、日産自動車 ゼロエミッション事業本部の阿部徹さん。

注目の給電システムは、太陽光発電と燃料電池というダブル発電に、日産リーフからの給電“Leaf to Home”を組み合わせたシステムが採用された。この給電システムにより、天候に左右されない安定した自家発電を維持できる。さらに、災害などで燃料が途絶した場合でも太陽光発電とリーフからの電力で対処できるという。

リーフから住宅への給電については、日産があたらしく開発した電力制御装置(PCS=Power Control System)が中心的な役割をはたす。このコントロールシステムのベースとなっているのは、急速充電システムだ。リーフに採用されている急速充電のプラグは、2010年3月に日本企業各社が採用した、CHAdeMO(チャデモ)規格というプラグ。日本のみならず米国でも採用が拡大し、440Vの直流充電の国際規格になる可能性が高いというものだ。この規格の特徴は、電力を一方向に供給するだけでなく、逆方向にも流すことができるということ。つまり、リーフに給電するだけでなく、リーフから電気を取り出すことが可能なのである。

SNV(ソーシャル・ネットワーク・ビークル)がいよいよ現実に

その技術をもちいたのが、PCSというわけだ。現在、高速道路のSAなどに設置されている急速充電装置は約30分で80パーセントの充電が可能な50kWタイプが採用されているが、このPCSは6kWタイプとなっている。このPCSはリーフから電気を取り出すだけでなく、リーフへの給電も可能で、フル充電には4時間程度かかる。

なお、日産リーフに搭載されるリチウムイオンバッテリーは、24kWhの蓄電容量を持つが、これは日本の平均的な家庭で消費する電力の2日分に匹敵するものである。

CEATEC JAPAN 2011 02

PCSは、市販時にはもっとコンパクトなサイズとなる予定。

このPCSは来年3月までに発売される予定で、価格は未定。ただし、想定するライバルとして家庭用蓄電池をみており、それを下まわる価格で販売される可能性は大いにある。すでにリーフを購入した家庭やこれから購入を検討している家庭で、別に蓄電池の購入を考えていた人びとには朗報だと言えるのではないだろうか。日産としては、V 2 H(Vehide to Home)の普及に力を入れているため、このシステムの販売には本腰を入れていくものとみられる。なお、すでに販売済みのリーフには給電プログラムが組み込まれていないが、ディーラーで30分程度の作業時間でプログラム書き換えることができる。震災以降、OPENERSが提唱してきたSNV(ソーシャル・ネットワーク・ヴィークル)が、いよいよ現実のものとなるわけである。

環境にやさしいスマートハウスのありかた

スマートハウス「NSH-2012」については、販売の予定はないが、その技術は近い将来のスマートハウスづくりに応用されるだろう。家のなかの電力のコントロールにはHEMS(Home Energy Management System)がもちいられ、太陽光と燃料電池、さらにLeaf to Homeによる電力をコントロールする。

CEATEC JAPAN 2011 04

"家庭内での瞬間的な電力消費量を表示するタブレットPC。電気を使いすぎている箇所がどこにあるのかなど、ひと目でわかる。"

またエネルギーの管理については、発電状況に応じた省エネ制御や遠隔メンテナンスが可能。また、スマートハウス「NSH-2012」のプロジェクトに参加しているNTTドコモからは、AR技術をもちい、タブレットPCをかざすことで室内の電力消費量を「見える化」するということも提案されている。

日産を中心とした約50社が、提案したこのスマートハウス「NSH-2012」。既存の電力網からの電力に依存しないあらたしい時代の家のありかたを示すものとして大いに注目したい。

CEATECで見つけた、その他の注目技術

今回のCEATECは、日産が参加したスマートコミュニティ“ZERO”が圧倒的な提案力をもっていたが、他のブースにもおもしろい新技術があった。

ひとつは、富士通の開発したエネルギー・ハーベスティング・テクノロジー。これは、身のまわりにある熱や光を微弱な電気エネルギーに変換し、低電力で長時間動作する装置の電源とするものだ。たとえば、センサーを肌に密着させて体の状態を常時チェック。クラウドから健康ガイダンスを得たり、緊急時には自動で救急サービスを受けられるような活用法が想定されている。

住友3Mが提案したのはシースルーの太陽光発電フィルム。こちらは来年の発売が予定されるもの。粘着剤つきのフィルムに有機薄膜太陽電池が埋め込まれた透明なフィルムで、通常、太陽光のエネルギー変換比率が16~18パーセントであるのにたいし、こちらは3~4パーセントだが、曲げることが可能で、窓ガラスに貼ることもできるなど、多彩な用途に用いることが期待されている。

全般的に見て、今回のCEATECにはそれほど目新しい技術の提案はなかったが、日産のPCSのように近い将来に導入されるリアリティのある技術には大いに期待がもてそうだ。

           
Photo Gallery