総力特集|ポスト3.11──あたらしい時代をめざして
SNV(ソーシャル・ネットワーク・ヴィークル)の時代へ
起きよ クルマ革命!
ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツによるガソリン式自動車の発明、世界初の量産自動車であるT型フォードの登場……100余年におよぶクルマの歴史において、これらとおなじくらいに革命的な出来事が起ころうとしています。EV、すなわち電気自動車の普及がそれです。
イラスト=ソリマチアキラ
ソーラーパネルとEVとのコンビネーションが鍵
ポスト3.11において脚光を浴びているのが、再生可能エネルギーを中心に据えたあたらしい社会のありかたです。しかし、風力や太陽光といった自然エネルギーは、天候などの自然現象の影響を直接的に受けるがゆえ、非常に不安定なものです。そこで重要な役割を担うのが、EVやプラグイン・ハイブリッドカーです。なぜなら、高性能なバッテリーを蓄電池として機能させることで、再生可能エネルギーによる発電の不安定さを補えるからです。
たとえば、住宅やビル単位で再生可能エネルギーにより発電し、蓄電池にためた電気を必要におうじて地域でシェアする、エネルギーの地産地消ともいうべきスキームが、昨今さまざまなメディアに取り上げられていますが、そんな社会の実現に、EVやプラグイン・ハイブリッドカー(PHV)は必要不可欠となるわけです。
クルマ好きも胸をはれる時代
1885 年、ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツが時をおなじくして開発した2台のガソリン式自動車の登場以来、クルマはスピードと安全性を高めることで、人びとの移動の自由を拡大してきました。もちろん、トラックやバスなど大量輸送を目的として生まれてきた車両は、社会のトランスポーテーションの効率化に寄与してきましたが、基本的にクルマは「個(=indivijuality)」の欲求を満たすための装置です。T型フォードの登場にせよ、モノコックボディやABS、そして直噴エンジンやクリーンディーゼルといった技術革新にせよ、そのための要素技術でしかなかったわけです。
一方、再生可能エネルギーを主体としたあたらしい社会では、クルマは電気エネルギー供給の役割の一端を蓄電池として担うわけです。つまり、トランスポーテーションとは別の意味で、クルマが社会性(=sociality)を獲得するわけです。地球温暖化ガスの排出など、環境負荷の点でクルマ好きの肩身が狭いご時世ですが、そうした社会においては、クルマを複数所有することすら、社会的な行為と言っても過言ではありません。なぜなら、バッテリーが増えれば増えるほど蓄電量が増し、社会に還元できる電気エネルギー量も増加するからです。これこそ、クルマ史において「革命」とも言える画期的な出来事ではないでしょうか。
SNVの時代よ来たれ!
ところで、TwitterやFacebookをはじめ、私たち一人ひとりがメディアとしてインタラクティブに情報を授受できるサービスを SNS(Social Network Service)と言います。OPENERSでは、社会の情報化電力網の一部としてエネルギーインフラの一端を担う次世代のEVやハイブリッドカーを、SNV(Social Network Vehicle)と名づけ、自動車革命の一日も早い実現へむけ、ウェブマガジンとして真摯に取り組んでいきたいと考えます。
もちろんそれには、電気エネルギー売買の自由化や再生可能エネルギーによる発電効率の向上、高度に情報化された送電網の整備など、クリアしなければならない課題が山積しているのも事実です。しかし、SNVの普及が、ポスト3.11を生きる私たちが目指すべきあたらしい社会の実現を促進する──そう信じるからです。