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2021年7月29日
異なるテイストのスポーツカーに進化──新型トヨタ86 & スバルBRZ(プロトタイプ)に試乗|TOYOTA
TOYOTA 86|トヨタ 86
SUBARU BRZ|スバル BRZ
新型トヨタ86 & スバルBRZ(プロトタイプ)に試乗
「手のうちスポーツカー」というコンセプトで開発され、”スポーツカー冬の時代”においても好評を博しているトヨタ86とスバルBRZがフルモデルチェンジを受ける。一足先にプロトタイプに試乗したモータージャーナリストの小川フミオ氏がその進化についてリポートする。
Text by OGAWA Fumio|Photographs by YASUI Hiromitsu
「軽量、コンパクト、そして買いやすい」という特徴はキープ
トヨタ86とスバルBRZがフルモデルチェンジする(スバルBRZは7月29日発表)。2021年7月中旬に、ひと足先にプロトタイプ(試作車)の、ジャーナリスト向け試乗会が開催された。大人になっても運転が大好きという人のためにつくった、という開発者の言葉通り、かなり楽しいモデルである。
86とBRZは、2012年に発表された後輪駆動クーペ。「手のうちスポーツカー」という愉快なコンセプトで開発されたとおり、全長4.2メートル程度の車体に2.4リッターエンジンを搭載。大パワーの高額スポーツカーのアンチテーゼのように、なるべく多くの人が楽しめることを念頭につくられたのが特徴だ。
新型も、現行モデルのコンセプトを踏襲したそうだ。「軽量、コンパクト、そして買いやすい。この特徴を守りました」。開発において重要な役割を果たしたトヨタGRカンパニーの藤原裕也氏は、試乗会場でそう語ってくれた。
新型の大きな特徴は、トヨタGRとスバルとがそれぞれ、独自の考え方を採用したところにある。現行モデルは、スバルが開発して、それにトヨタが相乗りしたかたちである一方、新型はトヨタGRにはトヨタGRの、スバルにはスバルの、独自のコンセプトが反映されているのだ。
スポーツカーは、マーケットで本当にほんの一握りのシェアしか有していない。でもこの世からなくならない。専門メーカーがいくつもあるぐらいである。新しい86/BRZも「伝統的なスポーツカーに忠実につくりました」と担当したデザイン部の佐藤正哉氏が言うのだった。
プロトタイプなので、まだ開発目標値であるものの、発表されている数値をみると、BRZのホイールベースは2,575mm、全長で4,265mm。現行モデルに対してホイールベースは同一。全長でマイナス5mm、全幅は同一、そして全高はプラス25mmの1310mmとされている。
エンジンは、今回新たに両車ともに、2,387ccと排気量が現行の1,998ccより上がっている。理由は「アンダーパワー(力が足りない)という声がユーザーのあいだにあったことを考慮して」と、プロダクトジェネラルマネージャーとして、スバル側で開発を指揮した井上正彦氏は説明してくれた。
ターボ化しなかったのは、「重さ10kgを超えるターボチャージャーをはじめ、効率を上げるためのインタークーラーなど部品点数が増えることを避けたため」と言う。それによって、重量増と価格上昇を嫌ったともつけ加えてくれた。
ボディはラインをなるべく廃し、面の表情で質感を出すことを狙った、とデザイナーの佐藤氏が言う通りだ。太陽の下でみると、ボディの抑揚がよく分かり、有機的ともいえるかたまり感が強くでている。
キャビンのウィンドウグラフィクス(サイドウィンドウの輪郭)は現行モデルに近い。ロングノーズとショートデッキのプロポーションと相まって、コンパクトな後輪駆動スポーツカー、という当初からのコンセプトが継承され、磨きがかけられていると感じされるのだ。