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IMPRESSION
2019年7月25日
BMW「8シリーズクーペ」に試乗|BMW
BMW M850i xDrive |ビー・エム・ダブリュー M850i xDrive
BMWのフラッグシップクーペ「8シリーズクーペ」に試乗
2018年のル・マン24時間レースでデビューした新型「8シリーズ」。同年11月には日本にも導入されたBMWの新世代フラッグシップクーペに試乗した。
Text & Photographs by HARA Akira
「これぞ2ドアクーペ!」と呼びたくなる完璧なシルエット
2018年11月に、東京・銀座で日本デビューを果たしたBMWのフラッグシップクーペ「8シリーズ」。発表会では新型が持つ美しいエクステリアデザインが強調されたが、その日は発表会場が比較的狭かったため、離れた位置から全体のフォルムをじっくりと眺めることがかなわなかった。
今回の試乗会場は、通い慣れた箱根のワインディングロードが舞台だ。初夏の日光を浴びつつ駐車場に留め置かれた新型8シリーズクーペは、伸びやかなスタイルをこれでもかと見せつけてくれ、我々ジャーナリストの目を楽しませてくれたのだ。
BMW8シリーズクーペといえば、「世界で最も美しいクーペ」と言われたE24型6シリーズクーペの後継として1990年に発売された、V12エンジンとリトラクタブルヘッドライトが特徴のE31型を思い起こされる方も多いだろう。
その後継モデルが、2003年にデビューしたE63型と2010年のF13型6シリーズで、今回のG15型8シリーズは、さらにその後継モデルとなる。6→8→6→8と数字の変遷がややこしいが、要はBMWのフラッグシップ2ドアクーペなのである。
新型のボディサイズは、全長4,885×全幅1,900×全高1,345mm。初代に比べて105mm長く、45mm広く、15mm高くなったそのサイズは、基本的にはそれほど大きく変化したとはいえず、この辺りがフルサイズ2ドアクーペに最適なサイズ感なのだろう。
ただしホイールベースは136mm長くなり、タイヤがより四隅に配されているのが分かる。
切れ長の4眼ヘッドライトをボディサイドに配し、幅広でかつワンモーションに近いデザインとなったキドニーグリルが収まる端正なフロントフェイス、V8ターボをキャビン寄りにセットした長いボンネットフード、ドライバーの頭上を頂点としてリアに向かってなだらかに降りるバブルルーフのライン、大きく張り出したリアフェンダー、わずかにヒップアップしたテールなど、ちょっと離れた位置から見ると、「これぞ2ドアクーペ!」と呼びたくなるほど完璧で美しいシルエットに感心してしまう。
これについては、センタートンネルを高剛性なカーボン、ボンネットやドアを軽量なアルミ、ルーフラインやリアフェンダーを成形性に優れた深絞鋼板という、ボディパネルの新たな組み合わせにより実現したカタチであると説明されている。
BMWのフラッグシップクーペ「8シリーズクーペ」に試乗(2)
スピード感が麻痺するほどのパフォーマンス
試乗したのは「M850i xDrive」クーペ。搭載する4.4リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、最高出力530ps(390kW)/5,500〜6,000rpm、最大トルク750Nm/1,800〜4,600rpmを発生。
初代V12エンジンより149ps、先代より68ps出力が向上したこのエンジンは、ギア比の幅を拡張した8段ATとxDrive4WDシステムを介して4輪を駆動。その加速性能は、停車状態から100km/hまでをたった3.7秒でこなすというスーパースポーツカーレベルのものだ。
確かにそうなのだろう。いつものワインディングに乗り入れると、上りも下りも関係なし。直線で右足に力を込めれば、ワイドレシオとフラットトルク(わずか1,800rpmから750Nm!を発生)のお陰で息の長い加速が楽しめるし、コーナー手前で強いブレーキをかけると、2トンに近い車体はあっという間に車速を落として、狙ったコーナーの頂点に向かってターンを開始してくれる。
その際の姿勢変化は前後左右方向とも驚くほど少なく、この大きなクーペが持つ性能はまだまだこの先があるという余裕が感じられる。そして、あまりの安心感に身を委ねてしまっていると、スピードメーターはとんでもないところに針を持って行ってしまっているので、ドライバーは十分に自重する勇気が必要だ。
こうした走りが楽しめるのは、リア側を重視して駆動配分を行うBMW独自の四輪駆動システム「xDrive」に負うところ大だが、ロール特性を調整する電子制御アクティブスタビライザーとダンパーを組み合わせたアダプティブMサスペンション、後輪操舵システムを取り入れたインテグレイテッド アクティブステアリング最大限のトラクションが得られるMスポーツ ディファレンシャル、強力なMスポーツブレーキなどが、標準で装備されていることで実現しているのだろう。
ゆっくりと走っても、このクーペの良さは十分に体感できる。前245/35、後275/30の20インチという太いランフラットタイヤを装着しているにも関わらず乗り心地が良く、街乗りでも遠出でも乗員は疲れ知らずのドライブが楽しめそうだ。
黒と茶の2トーン仕様だった試乗車のインテリアも、BMWらしくアンダーステートメントな落ち着きがあって、すてきだ。透明なクリスタルの中に数字の“8”が浮かび上がるクラフテッド・クリスタル・フィニッシュのシフトノブは、フラッグシップクーペを操るオーナーのプライドを満たしてくれそうだ。
まもなく登場するハンズオフ機能
新型8シリーズクーペには、速度/回転数が逆方向に回転するメーター間にナビ情報などを表示するフルデジタル メータパネルや音声コントロール機能、50メートル前までを正確にルートバックするリバースアシスト機能など、さまざまな新機軸が採用されているが、今年夏以降のモデルには、新たに「ハンズオフ機能付き渋滞運転支援機能」が国内モデルとして初めて導入されることが発表された。
その機能は、道路交通法の定める高速道路上を60km/h以下で前走車を追従している状態で、ステアリングから手を離したままで走行を続けることができる、というもの。自動運転ではなくレベル2の支援システムであるので、運転中の責任は絶えずドライバーにあり、周囲の状況に合わせてすぐにステアリングを握り、確実に操作できる状態になければならないという前提条件がある。
既存の渋滞時追従走行システムでは、ステアリングから手を離すと10秒前後で警告され、そのままだとACCはキャンセルになってしまうが、新しいBMWのハンズオフ機能があれば手放しというリラックスした状態で追従することができ、運転負荷を低減することができるのだ。
この機能を説明してくれたBMWジャパンの御舘康成プロダクトマネージャーによると、ドイツ本国からシステム担当者を日本に招いて、認可のための徹底的なテストを行い、まさに「産みの苦しみ」を味わったという。特に東京都心の首都高都心環状線などでは、左右両方から合流するクルマが絶えず割り込んでくるため、システムの作動条件に合致しない地点が数多く存在するのだそうだ。
ハンズオフ機能の開始については、システムがGPS等で走行地点を把握しながら使用可能な作動条件が整っているかを絶えずチェックし、OKであればドライバーがステアリング左側のボタンを押し、左右ポストのグリーンインジケーターが点灯することで作動中であることを教えてくれるという。
ハンズオフは、国交省の「車線維持支援機能に関する国際基準」をクリアしたことで実現した機能で、搭載するのは3眼カメラシステムを搭載した今回の8シリーズをはじめ、新型3シリーズ、新型X5など。
搭載車種は順次拡大されるが、すでに販売されている8や3も「当該機能を搭載した車両」であるため、ソフトウェアをアップデートすることで使用が可能になるという。過信は禁物で、使用時には十分な注意が必要だが、早く体験してみたい魅力的な機能であることは間違いない。
Spec
BMW M850i xDrive |ビー・エム・ダブリュー M850i xDrive
ボディ|全長 4,855 × 全幅 1,900 × 全高 1,345 mm
ホイールベース|2,820 mm
エンジン|4,394cc V型8気筒
最高出力| 390 kW(530 ps)/5,500 rpm
最大トルク|750 Nm(76.5kgm)/1,800〜4,600 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
タイヤ 前|245/35R20
タイヤ 後|275/30R20
燃費(JC08モード)|9.9 km/ℓ
トランク容量|420リッター
定員|4名
価格(消費税込み)|1,714万円
BMW M850i xDrive |ビー・エム・ダブリュー M850i xDrive
ボディ|全長 4,855 × 全幅 1,900 × 全高 1,345 mm
ホイールベース|2,820 mm
エンジン|4,394cc V型8気筒
最高出力| 390 kW(530 ps)/5,500 rpm
最大トルク|750 Nm(76.5kgm)/1,800〜4,600 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
タイヤ 前|245/35R20
タイヤ 後|275/30R20
燃費(JC08モード)|9.9 km/ℓ
トランク容量|420リッター
定員|4名
価格(消費税込み)|1,714万円
問い合わせ先
BMWカスタマー・インタラクション・センター
(フリーダイヤル)0120-269-437(平日9:00-19:00、土日祝9:00-18:00)
http://www.bmw.co.jp