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IMPRESSION
2019年9月9日
大幅に進化した新型レンジローバー イヴォークに試乗|Range Rover
Range Rover Evoque|レンジローバー イヴォーク
新型レンジローバー イヴォークに試乗
キープコンセプトのようでいて大幅に進化
2018年11月に英ロンドンでワールドプレミアされ、2019年6月に日本にも導入された新型レンジローバー「イヴォーク」。一見、キープコンセプトながら、中身は長足の進歩を遂げたという同モデルに試乗した。
Text & Photographs by Kazuhiro Nanyo
ボディ構造上で初代から引き継いだものはドアヒンジのみ
パッと見にはニューモデルであることに気づきにくいかもしれない。だが、よくよく眺めてみると、まずヘッドランプの意匠が大小の分割ではなく隈取り状になった。ヘッドランプは、20個のLEDで照射範囲を最適化切り替えするマトリックスランプとなったのもトピックだ。
バンパーについては、両端のエアインレットが“穴”ではなく“スリット”となり、R-DYNAMIC仕様では2本のフィンが入るのが変更点だ。
ボディサイドは初代よりシンプルさを増して、ショルダーにはノミで削ったようなエッジのラインがビシッと走っているし、ドアパネル下部のウエストはプレスラインではなくグラマラスな凹面となって削ぎ落とされた。
加えて、ドアハンドルがキーを携え近づくとスッと自動的に浮き上がるデプロイアブルになり、ボディサーフェスの一層のなめらかさを強調する。レンジローバー自身が「Reductionism(リダクショニズム)」と呼ぶところの、可能な限り要素を少なくピュア化していくというデザイン哲学の見事な成果といえるだろう。
2世代目に進化したレンジローバー イヴォークは電動化まで見据えたPTA(プレミアム・トランスヴァース・アーキテクチャ)を採用し、ボディ構造上で初代から引き継いだものはドアヒンジだけ。何と99%が刷新されているという。
ボディ形式は売れ筋の5ドアのみとなるが、ホイールベースが20㎜延ばされたことによって後席の足元やラゲッジスペースもレッグスペースも改善されている。またリアシートは近年のトレンドに従って40:20:40可倒式で、荷物の量や乗員数に応じて最適化できるフレキシブルな内装となっている。
パワーユニットはディーゼルとマイルドハイブリッドを含む計4種類
ちなみにオフロード性能に関しても、レンジローバーやランドローバーのすべてのモデルがそうであるように、モデルチェンジを経てはっきりと進化した。最大渡河水深は先代より100㎜ほど増し600㎜に。そしてドアミラーに備わるカメラ映像を合成することで、ボンネットが透けるかのようなフロント下180度の視界を確保する「ClearSightグラウンドビュー」という世界初の機能をも積んだ。
後者は悪路において大きな石や凹凸にアンダーフロアをヒットさせるのを防げるだけでなく、狭い道に入ったり駐車したりする時の障害物など、SUV特有の見切りの悪さを決定的に改善する。街乗りでも実のある進化として歓迎すべきポイントだ。
インテリアの進化で注目すべきは、シートに“サステナブル”なテキスタイルを採用しながら、上質な雰囲気が損なわれていない点だろう。ちなみに、上半分は生育の早いユーカリ由来の天然繊維を用いたメランジのテキスタイル、下半分は1台あたり53本分のリサイクルペットボトルの再生ポリエステルを用いた人工起毛スエードである「ディナミカ」、というツートーンのコンビネーションとなる。自然素材に近い見た目と、マットな風合いが心地よい。
またインフォテイメント関連はヴェラールなどの上位モデルと同様、10インチの高解像度スクリーンをダッシュボード上とセンターコンソールの2カ所に配した「Touch Duo Pro(タッチ・デュオ・プロ)」が、ファーストエディションとHSE、SEグレードには標準装備される。
リモートキーとスマートフォンを介してドライバーを認識すると、インフォテイメントのインターフェイス、シートやステアリングコラム位置、温度設定などについて、「スマートセッティング」というAIと独自アルゴリズムによって、好みに応じて自動調整する機能も備わる。ソフトウェアのアップデートも、ジャガー・ランドローバーとしては初となるワイヤレス接続対応だそうだ。
パワーユニットは2リッター直列4気筒インジニウムをベースに、「D180」というディーゼルが1種類、「P200」「P250」の2種類のガソリン、加えて「P300 MHEV」というガソリンの48Vマイルドハイブリッド版が用意される。試乗車はこちらの、ジャガー ランドローバーとしては初めてのMHEV採用モデルだった。
パフォーマンスと経済性を鑑みるとP300 MHEVが割安
走り出すと、既存のドイツ車のMHEVがそうであるように、電気モーターからガソリンエンジンに駆動力が切り替わる瞬間は、アクセルを踏んでタイヤが回転するかそこらの相当に早い段階で訪れるが、シームレスで体感できるショックを伴うものではない。裏を返せば、それだけなめらかなのだ。
乗り心地にも角がなく、頑健さをウリにするSUVにありがちな「タフガイぶった」上下動は感じられない。振動を抑える方向で新設計された、ハイドロブッシュ入りのマクファーソン式フロントサスペンション、そして適度にレスポンスのいいリアサスペンションの効能だろう。
しかも足回りの美点は快適性だけではない。ワインディングでの振舞いにおいても、近頃のSUVに多いヒュンヒュンと素早いハンドリングではないが、適度にキビキビとしつつジワリとロールを抑えてくれるセッティングなので、ある程度の速度域でも怖さがない。
降りた後で分かったことだが、P300 MHEVに備わる「アクティブ ドライブライン」と名付けられたトルク配分システムは、デフォルトがフロント50:リア50、状況に応じて前後左右へとトルクを割り当てるベクタリング効果もある。
試乗は舗装路のみながら、時折大雨が降る天候だった。にもかかわらず、ワインディングでの安定感と落ち着いたハンドリングは、このシステムが効果的に働いた証拠だろう。というのも、通常モデルに備わるもう一方の「エフィシェント ドライブライン」は、デフォルトでフロント60:リア40となり、安定して走行している場面では前輪駆動のみ、つまり車重のあるFFといった具合なのだ。
確かに、「テレイン レスポンス2」という、可変ダンピング切替えや、泥や砂地といった悪路モードを7つの制御で選べる最適化機能は、全車標準で備わるようになった。元から後輪側の駆動配分が強めの、ダイナミック志向のハンドリングをもつという意味でも、MHEVを積極的に選ぶべきだろう。
ちなみにP300 MHEVのWLTPモード(欧州基準)値は17.9㎞/ℓで、WLTC(国内基準値)のデータはまだ申請中につき未発表。だがP250ではWLTP値で10~10.7㎞/ℓ、WLTC値は8.9㎞/ℓとなる。つまり燃費でもはるかにマイルドハイブリッド版が優れるだろうが、車両価格はP250に比べ全グレードともプラス54万円。8割近いエフィシェンシ―の優位性に加え、ドライビングファンも付いてくることを鑑みると、MHEVが戦略的に割安なプライスタグが与えられているといえるだろう。
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