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2020年2月12日
“上級送迎車”としての存在感──トヨタのフルサイズワゴン「グランエース」に試乗|Toyota
Toyota Gran Ace|トヨタ グランエース
トヨタのフルサイズワゴン「グランエース」に試乗
東京モーターショー2019でお披露目され、12月に販売を開始したトヨタのフルサイズワゴン「グランエース」。全長5,300×全幅1,970×全高1,990mmというセミボンネットの四角いボディは、巨大で圧倒的な存在感を放っている。車名はスペイン語で「大きな/偉大な」を意味する「GRAN」と、英語で「第一人者・優れた者」を意味する「ACE」を組み合わせたもの。海外向けの商用モデルであるハイエースをベースとし、多人数のVIPや企業要人、インバウンドのゲストなどを一台の車に乗せて移動することを目的に開発されたという。横浜市内で開催された試乗会に参加し、そのドライバビリティや後席の乗り心地を確かめてみた。
Text & Photographs by HARA Akira
6人乗り「プレミアム」と、8人乗り「G」の2グレード
グランエースは、6人乗り3列シートの「プレミアム」と、8人乗り4列シートの「G」の2グレード構成で、そのエクステリアはグレード名を表すプレート以外はほぼ共通。金属調加飾の大型ラジエーターグリルと、クロム加飾フレームで囲んだプロジェクター式2眼LEDヘッドライト、それに突き刺さるように配されたLEDデイタイムランニングライトなど迫力あるフロント部分と、真四角な長いパッセンジャー部分を組み合わせた堂々としたもの。
ボンネット部分には、同社のハイラックスやプラドと同じ、最高出力177ps(130kW)/3,400rpm、最大トルク450Nm/1,600〜2,400rpmを発生する1GD-FTV型2.8リッター直列4気筒クリーンディーゼルエンジンを搭載。バッテリーを室内側の床下に配置することで、短い鼻先を実現しているのだ。
まずは、仕事場となることが多いドライバーズシートに乗り込んでみる。ウッドとレザーのコンビステアリングホイールやレザーシート、コンソールのシンプルな変速レバー(こちらもレザー仕様)、四角く押しやすい各種マニュアルボタン類など、車格にふさわしい環境が演出されている。パーキングブレーキがレバー式なのは、商用車がベースであることをちょっと感じさせてくれる。
走り出してみると、6段ATが絶妙のギアチェンジを見せてくれ、パワー不足を感じる場面がほぼなかった。低速からアクセルのつきが程よく、高速の合流点などでは4,000rpm近くまで回ってくれるので気持ちよく車速が伸びていく。
また、低速域で少しだけ硬さを感じる235/60R17タイヤは、後輪駆動方式のおかげで前輪を45度まで切ることができ、最小半径5.6メートルと小回りが効く。縦長で大きな面積を持つ左右サイドミラーや、室内のデジタルインナーミラー、車両を真上から見た映像を映し出すパノラミックビューモニターなどが標準装備されるので、取り回しの不安が低減されるのだ。
後席の乗り心地やいかに
肝心の後席はどうか。ブラックカラーの6人乗り3列シート仕様「グランエース プレミアム」の大きなパワースライドドアを開けると(開口長が1,000mm)、後輪駆動方式と、ストレートラダー(梯子形状)の厚みのある底面を採用しているため、床面の地上高が645mmという高さがあることに気がつく。
サイドステップを1段登って車内に乗り込むと、フロマージュと呼ばれる薄いクリーム色の本革仕様となる立派なエグゼクティブパワーシートが、ゆったりした間隔で4座配されている。4座とも同じシートなので、電動式オットマンやシートヒーター、左右の肘掛け、折りたたみ式サイドテーブル、USB端子など、快適装備を全員平等に愉しむことができるのが嬉しいところ。
サイドウインドウのウエストラインが低く、外の景色は広大な範囲で目に飛び込んでくる。スライドドア部のガラスは合わせ式なので、遮音が徹底されている。パワーリクライニングを倒し切ってしまえば、オットマンと合わせてフルフラットに近い状態まで持っていくことができるので、体を思いっきり伸ばして長いフライトなどで疲れた体を癒すことも可能だ。
シートスライドは手動式を採用。2列目のサイドと背面に設けたレバー一つで前端まで一気にスライド移動するので、3列目のパッセンジャーはすぐに降りることができるのだ。
例えば2列目に社長さんが乗っていて、3列目がお付きの人だった場合、電動では時間がかかりすぎで先に降りた社長を長い時間待たせることになる。もしその日雨が降っていたら……。こんなことを考えながら設計しているというのだ。
装備面では、個別のバニティミラーや、天井サイド部に配した空調ルーバーや読書灯、12.1インチ後席用TV(オプション)などがあり、地上を走るプライベートジェット的なイメージだ。
価格はプレミアムが650万円で、Gが620万円
ホワイトパールクリスタルシャインに塗られた8人乗り4列シートの「グランエースG」は、タクシー会社の需要などを想定して、なるべく多くのパッセンジャーを快適に送迎することが目的だ。
2列目はプレミアムと同じエグゼクティブパワーシート。3列目はマニュアル式のキャプテンシート。4列目は後方に荷物を乗せる際に座面がチップアップして折り畳めるベンチシートという構成だ。
室内長は変わらないので、8人全員が乗るときには、均等に足元空間が確保できるよう位置の調節には注意が必要だ。また、車高が高くても床面が高いので、結果的に天井が低く、4列目に乗り込むまでの長い距離を背をかがめて移動する必要があって少し辛い。
アシストグリップやスピーカーグリル、各ガーニッシュ部にレザーや木目加飾、植毛がされていたプレミアムに比べ、こちらは樹脂製となっている部分が多く、少しだけビジネスライクな内装になっている。
クルマが動き出してからの印象は、どこに座っても総じてとても良い。コイルスプリングやショックアブソーバーを最適化したトレーリング車軸式リアサスペンション、フロア面のねじり剛性確保のため採用したストレートラダー構造のアンダーボディ、それと結合した環状骨格構造のピラー部分などにより、突き上げや、前後の位相差を感じることのない安心感のある乗り心地が感じられたからだ。これなら車酔いを誘発することもなさそうだ。
価格はプレミアムが650万円で、Gが620万円。販売目標は年間600台を予定しているが、すでに950台のオーダーがあったという。内訳はプレミアム7割、Gが3割で、大体想定通りとのこと。
今後はニーズが広がることが予想され、それに合わせた仕様のグランエースが登場することもありうる(トヨタ車体の石川拓生チーフエンジニア)というので、その展開も楽しみだ。
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