箱根を走るのが実に楽しいクルマに──新型メルセデス・ベンツSクラスに試乗|Mercedes Benz
CAR / IMPRESSION
2021年5月21日

箱根を走るのが実に楽しいクルマに──新型メルセデス・ベンツSクラスに試乗|Mercedes Benz

Mercedes Benz S400d 4Matic|メルセデス・ベンツ S400d 4マチック

新型メルセデス・ベンツSクラスに試乗

1972年のデビュー以来、メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルとして、そしてフルサイズセダンの“メートル原器”として君臨しつづけてきた「Sクラス」。その7代目として2021年1月に日本に導入された最新モデルに試乗した。

Text by OGAWA Fumio|Photographs by KAWANO Atsuki

最大の特徴はデジタル技術を駆使したユーザーエクスペリエンス

これが高級セダンの最前線だ。メルセデス・ベンツの新型「Sクラス」が、メルセデス・ベンツ日本の手により、2021年1月26日に発売された。さっそく、「S400 d 4MATIC」に試乗。パワーと燃費を両立させたことに加えて、最新のデジタル技術により、なんとも快適な、見事な出来なのだ。SUVにしか興味がない、なんて言っている人も、一度試乗してみれば、独特の気持ちよさが分かってくれるかもしれない。
メルセデス・ベンツSクラスについては、あえて説明の必要もないと思う。ドイツ語のズーパー(Super)の頭文字をとったメルセデス・ベンツの頂点に立つプロダクト。1972年に初代が登場し、今回の新型は7代目となる。
新型Sクラスの最大の特徴は、冒頭でも触れたとおり、デジタル技術を駆使したユーザーエクスペリエンスにあるといってもいい。車内でまず眼につくのは12.8インチの大型液晶モニターが据え付けられた、新デザインのダッシュボードだ。物理的なスイッチはほとんど眼に入らず、クリーンな仕上げだ。
それだけではない。メルセデス・ベンツが「MBUX」と名づけたコマンドシステムはさらに進化。「ハイ、メルセデス」と呼びかけると車載AIが起動する対話型操作システムは、すでに知られた技術であるものの、新型では、前後左右4つの席の乗員からのコマンドを個別に把握して対応するまでに“進化”した。
たとえば、「ヘイ、メルセデス。シートヒーターをつけて」と言うと、「はい、分かりました」と応じてくれる。たとえば後席左側の乗員が同じことを言った場合、その席だけヒーターを起動させるという具合なのだ。
同時に、運転席を車載カメラがモニターしていて、センターコンソ−ルあたりに指をさっと出すことで、たとえば登録してある自宅住所まで案内するナビゲーションシステムが起動する。いわゆるジェスチャーコントロールも、Sクラスとしては初めての採用。これもメルセデス・ベンツ肝煎りのユーザーエクスペリエンス技術である。
ゴルフ帰りなど知人を乗せた際、いちいち手での入力とかボイスコントロールを使うとかしなくても、指を動かすだけで、車載システムが動き出す。これも新世代のユーザーエクスペリエンスだ。
2020年秋に大きなマイナーチェンジを受けたEクラスに搭載されて話題を呼んでいる「ARナビ」もSクラスに初採用。上記のジェスチャーコントロールと組み合わせて操作ができる。
ARとは「オーギュメンテッド・リアリティ」。拡張現実などと訳される。この考えをナビゲーションシステムのモニター画面に採用。たとえば、ルートガイド中、四つ角などにさしかかった際は、モニター内もカメラの画像に切り替わり、そこに矢印が現れて、行くべき方向を示してくれるのだ。
ユーザーをデジタル技術で喜ばせるための技術として、キーをもった人間が近づいたのを感知して、格納式ドアハンドルをぽんっとポップアップさせる機能も搭載。ライトも点灯。これもユーザーをもてなすための、重要な技術だろう。同乗者と駐車場に行ったときなど、きっと驚かれるのではないだろうか。

走りの性能にも特筆すべきものがある

「全ての要素において最新のラグジュアリーを再定義したフラッグシップモデル」。メルセデス・ベンツ日本は、このSクラスについてこう謳う。実際に、感心するのは、ユーザーエクスペリエンスばかりでない。クルマとしてもっとも基本的な部分である、走りの性能にも特筆すべきものがある。
S400 d 4MATICのエンジンは、2,924cc直列6気筒ディーゼルターボ。243kW(330ps)の最高出力と、700Nmの最大トルクを発生し、9段オートマチック変速機を介して、前後の車輪を駆動する。実際に、かなりパワフル。発進から高速にいたるまで、よどみなく力がわきだす感覚には、ため息が出るほどだ。
ディーゼルエンジンの性能向上ぶりにも注目すべきものがある。スムーズな回転フィールと、バイブレーションも、ディーゼル特有のノッキング音も抑えられていることで、よくできたガソリンエンジンのようだ。
最大トルクは1200rpmから3200rpmで発生する設定なので、アクセルペダルに載せた足に徐々に力をこめて加速していくような実用域では、エンジンを回せば回すほど、力がもりもりと出てくる気持ちよさが味わえる。
グリップ径がやや太めのステアリングホイールを動かしたときに、車体がゆっくりとロールしていく感覚は、クルマのコントロール性を高めるとともに、安心感を生む。新型でも、昔からクルマ好きを魅了してきたメルセデス・ベンツならではの絶妙なステアリングフィールが守られている。
足まわりはしっかり感がある。高速ではフラットで、乗員の体が上下に揺さぶられることはない。ワインディングロードでは、上記のとおり、正確で気持ちよいフィールのステアリングによる操縦安定性の高さを発揮。小型セダンのように、どんな小さなカーブでもくいくいと気持ちよく曲がっていける。
実は今回のSクラスには、後輪操舵システムが搭載された。小さなカーブや駐車場などでは、ステアリングホイールを切っているのと逆の方向に、最大5度、後輪が向きを変える。それによって仮想ホイールベースが短くなり、狭い場所や、きついカーブでも意外なほど小回りを効かせて、こなしていくのだ。一方、高速のレーンチェンジなどでは、後輪が前輪と同位相に動くことで仮想ホイールベースが長くなり、走行安定性が増しているのだ。
立ち上がりのいい大トルクと、ドライバーの意思に忠実に減速から停止まで行うブレーキ、そして上記の全輪操舵システムによって、箱根のワインディングロードを走るのが、実に楽しかった。きついV字型のカーブも難なくこなしてしまうのだ。このときのドライバーとの一体感は得も言われるほどの気持ちよさである。
メルセデス・ベンツは常にSクラスをドライバーズカー、つまり自分で運転するクルマと位置づけている。たとえ全長が5,210mmあっても、S400 d 4MATIC(1293万円)は、運転を楽しみたい人のためのクルマ。そこがとても印象的なのだ。
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