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2021年12月19日
BMW M2に試乗──繊細にチューニングされたレースカーを思わせる走りが魅力|BMW
BMW M2 Competition|ビーエムダブリュー M2 コンペティション
現代に蘇った2002ターボ!? BMW M2に試乗
コンパクトなボディに400ps超の3リッター ストレート6を搭載する後輪駆動マシン、BMW M2コンペティション。まさに現代二蘇った2002ターボともいえる同車に試乗。その走りやいかに?
Text by OGAWA Fumio|Photographs by KAWANO Atsuki
こういうクルマには、いま乗らないでいつ乗るんだろう
1980年代から90年代にかけて、BMWに強い憧れをもっていた、ちょっと年寄り世代にとって、現在の「M2クーペ」は、これこそBMWと歓迎すべきスポールモデルだ。いや、もちろん、30代だって40代だって、この楽しいコンパクトクーペにぜひ乗るべきだ。20代には……もったいない(笑)。
400ps超のパワーを持つストレートシックスのエンジンを搭載した後輪駆動マシン。2ドアのボディは、キャビンをあえて小ぶりにつくり、張り出しの強いフェンダーで躍動感を醸し出すとともに、フロントマスクは大型エアダムが強烈な印象を与える。
こういうクルマには、いま乗らないでいつ乗るんだろう、と言いたくなる。年齢に関係なく、他では得がたいドライビング体験が味わえる。ハンドリング命のスポーツカーとはまた異なり、エンジンのたっぷりしたトルクを味わって乗る、いってみれば、大人っぽい楽しみを提供してくれるのだ。
思い返すと、現行M2クーペが2016年1月に発表されたとき、いいなあと感心したものだ。そのときも、往年の2002ターボ(1973年)を彷彿させるモデルというふれこみだった。大ヒット「マルニ」シリーズをベースに開発されたスポーツモデルで、当時は速すぎるなんて、言われたのを私はよく覚えている。
あまりにも昔の2002ターボをひきあいに出すのもどうかと思いつつ、少しだけ比較すると、170psのターボパワーがすごすぎてシャシーが追いつかない、なんて批評された。現在のM2クーペは、言うまでもなく、すばらしいシャシー性能で、あらゆる速度域で楽しめる。
開発を手がけているのはM社。BMW本社を親会社とし、特殊なカラーや素材、装備などを使用した特注の「BMW Individual」による車両の製造とともに、今回のような高性能モデルおよび、Mスポーツなどに採用される専用部品の開発を担当する。
M4よりもダイレクト感が強い
当初のM2は2979cc直列6気筒エンジンを搭載し、最高出力は 272 kW(365 ps)と 最大トルク465 Nmをもっていた。18年8月に追加された今回の試乗車であるM2コンペティションは、302kW(410ps)と550Nmと出力は大きく引き上げられた。
「高性能エンジンのポテンシャルを最大限引き出すため」として、BMWでは、M4と同じラジエターやオイルクーラーで冷却効率をアップ。サスペンションシステムではダンパーとスタビライザーを強化。さらに「Mスポーツブレーキ」を備え、性能向上に応じて制動力も高めている。
軽量かつ高強度の炭素樹脂を使用したストラット・ブレイズでボディの剛性を上げ、さらに、DSC(ダイナミックスタビリティコントロール)のセッティングや、シャシーのチューニングまで施している。
一言でこのクルマの魅力を表現すると、適度にアグレッシブ、というのがいいかなとファンである私は思っている。仮に上級車種であるM4と乗り較べてみると、あちらは全体に大人っぽい。速いは速い。同時にカラースキームを含めて、エレガントで大人っぽさがある。
M2コンペティションは、もっともっとダイレクト感が強い。重めだけれどフィールのいいステアリングホイールと、アクセルペダルと、それにブレーキペダル。この3つが素晴らしいコンビネーションワークをみせてくれる。加速のよさと、いっぽうで、繊細な減速ができる制動力が、車名のとおり、繊細にチューニングされたレースカーを思わせるほどなのだ。
全長4475mm、車重1630kgのボディに対して3リッター6気筒エンジンのパワーは充分。というか、エンジンを楽しむために、できるかぎりコンパクトに凝縮したようなボディだけに、とぶように走る。
クルマ好きだったら幸福な気分に浸れる
発売時は6段マニュアルもあったが、試乗したのは「M DCT ドライブロジック」なる7段オートマチック変速機搭載車。半球形のノブを握って、やはりBMWのステップトロニックのように、前後に動かすことで、いわゆるマニュアルシフトが楽しめる。
BMWの直列6気筒エンジンは、数値で分かるように低回転域でのトルクもたっぷりあって、オートマチックでなんの不足もない。でもそれだともったいない。
5250rpmから7000rpmにかけて最高出力が出る高回転型エンジンゆえ、マニュアルシフトで上の回転域まで引っ張って、わずかなアクセルペダルの踏みこみに俊敏にクルマが応えるのを楽しまないと損だと思う。
足まわりの設定は、スポーティ。つまり硬め。ただし、路面のうねりに追従して、つねに駆動力をしっかり保持。タイヤは路面をしっかりつかんで、太いトルクで車体をぐいぐいと前へ押しだす。そのイメージを頭のなかに思い描きながらドライブすると、クルマ好きだったら幸福な気分に浸れるはず。
内装は、ひとつ前の世代のデザインコンセプトでまとめられている。インフォテイメント用のモニターも小型。空調やオーディオの物理的な操作類がずらりとダッシュボードに並ぶ。私は、実はこういうのが嫌いでなく、むしろ走っていて扱いやすいと思ったほどだ。
かなり立体的な造型のスポーツシートは、見た目がスポーティで好ましいし、実際に使うとホールド性がよく、コーナリング時に乗員のからだをしっかり支えてくれる。高速では快適といってもいい。
価格は935万円。聞くところによると、いまや、販売台数はかなり限られているそうだ。販売店で見つけることができた人は幸福だと思ったほうがいいとか。楽しいドライビングを体験すると、なるほどそうだなあと私も思う。
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