7人乗りも選べるプレミアムSUV、ディスカバリー スポーツに試乗|Land Rover
Land Rover Discovery Sport|ランドローバー ディスカバリー スポーツ
7人乗りも選べるプレミアムSUV
ディスカバリー スポーツに試乗
レンジローバーを筆頭に「ディフェンダー」、そして「ディスカバリー」と3つのブランドにラインナップを明確化しようとしているのが、英国が誇る老舗4WDメーカー、ランドローバーの最新戦略。日本で発売を開始した「ディスカバリー スポーツ」は、プレミアム4WDマーケットに老舗の存在感を見せつける、その戦略を強化するために生まれた重要なエントリーモデルである。
Text by SAKURAI KenichiPhotographs by TSUKAHARA Takaaki
ランドローバーが持つ3つのブランド
2014年のニューヨーク モーターショーで「ディスカバリー ビジョン コンセプト」として登場し、おなじ2014年9月に開催されたパリ モーターショーで生産モデルが一般公開されたランドローバーのニューモデル、「ディスカバリー スポーツ」。このブランニューモデルは、ランドローバーのブランドの未来を占う上で重要な1台だといえるだろう。現在ランドローバーは3つのブランドにラインナップを集約し、それぞれのキャラクターを鮮明に打ち出すブランド再構築戦略に着手している。
その3つのブランドとは、「レンジローバー」や「レンジローバー スポーツ」、「イヴォーク」を擁する「レンジローバー シリーズ」と、「ディフェンダー シリーズ」、そして「ディスカバリー シリーズ」ということになる。
ランドローバーの頂点に位置する高級SUVの題名ともなった「レンジローバー」シリーズは“リファインメント(洗練/上品)”がキーワード。もっと分かりやすくキャラクターを紹介するのならば、ラグジュアリーと表現するのが適当かもしれない。
日本への正規導入は長らく途絶えてしまっているが、4WDのレジェンドともいうべき「ディフェンダー」シリーズは“デュラビリティ(耐久性)”が、そして今回紹介する「ディスカバリー スポーツ」を擁する「ディスカバリー」シリーズは“バーサビリティ(多様性)”がそれぞれをひとことで表現するキーワードになりそうだ。
ランドローバーの全ラインナップとも、類い希な4WDの走行性能を持つモデルであるという大前提にくわえ、高級モデルとして認識される「レンジローバー」に対して、これまではどちらかといえば7人乗りのポジションから、ファミリー向けの実用的でポピュラーなモデルとみられていたのが「ディスカバリー」である。もちろん、価格も(決して安くはないが)「レンジローバー」に比較すれば、ファミリー向けと分類するに妥当なプライス設定ではあった。
いっぽう、ランドローバー全体のエントリーモデルとしての役割を担っていたのは「フリーランダー」である。現在販売されているのは2世代目のモデルだが、このシリーズは現行モデルでのシリーズ終了が予定されている。
先の3つのブランド戦略に「フリーランダー」が入っていないのはそのためである。現行販売モデルはファイナルエディションとのネーミングされているとおり、間もなくモデルライフを全うする。
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ディスカバリー スポーツに試乗 (2)
ブランドの未来を占うディスカバリー スポーツ
では、このフリーランダー2のポジションをどのモデルがカバーするのか。価格面でいえば478万円から用意されているレンジローバー イヴォークといいたいが、こちらはラグジュアリーを担当するレンジローバーシリーズ。ということで、エントリーモデルとして白羽の矢が刺さったのが、あたらしいディスカバリー スポーツである。新規モデルとしてこれまでになかったキャラクターであるのはもちろんだが、価格が492万円とリーズナブルな設定なのも、フリーランダー2の後継を担う役割を持つと考えれば頷ける。
冒頭でランドローバーのブランドの未来を占う上で重要な1台だとディスカバリー スポーツを紹介したのは、実はそこに理由があるのだ。
ディスカバリーブランドのエントリーモデルであると同時に、フリーランダー2の後継となるランドローバー車のエントリーモデルとしての役割。そしてそれにふさわしい価格設定、さらには最初のランドローバーとなるにふさわしいフレンドリーな機能性とサイズ感。そのすべてを併せ持ったのがこのディスカバリー スポーツである。
400万円台のディスカバリー スポーツがラインナップにくわわったことで、シリーズトップモデルとなるディスカバリーの715万円からという堂々たる価格設定に何の違和感もなくなったのは(確かに高価ではあるが)事実。過去、200万円台でディスカバリーが販売されていたことがまるでウソのようだと思うのは、私も含めたおそらく40代以上のファンであろう。
その価格を成立させたのは、もちろんブランド戦略的な意図があったのは当然ではあろうが、主にハードウェアの成り立ちに秘密がある。簡単にいえば、プラットフォームはイヴォークと共用。パワートレーンも最高出力177kW(240ps)の2リッターの直列4気筒ターボ+9段ATとまったくおなじである。
よってエンジンは「ディスカバリー」の縦置きに対してこちらは横置きになる。ただし、共用とはいってもその50パーセントは新設計・新パーツによるもので、ディスカバリーを名のり、イヴォークの姉妹車ではあるが、その中身は紛れもなくランドローバーの新世代を担う最新のテクノロジーで構成されているのである。
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ディスカバリー スポーツに試乗 (3)
ライバルにないアドバンテージ
いささか前置きが長くなってしまったが、こうしてランドローバーの新戦略はラインナップの状況を分析してみると、ディスカバリー スポーツがたんなるディスカバリーの名を冠したブランニューモデル以上の存在であると、十二分に理解できるはずだ。
レンジローバーに対するレンジローバー スポーツに続き、今度はディスカバリーに対するディスカバリー スポーツで、またかと思った方は、ちょっとだけ認識を改めてこのクルマに接した方が本質を見誤らずに済む。
とはいえデザインは、モダンなランドローバー一族のそれである。前後のオーバーハングが短く、大地にしっかりと4輪で踏ん張るようなスタンスは健在。シャープなフロントフェイスは、イヴォーク以降のランドローバーに共通するデザインの延長上にあり、個人的なイメージはかなり良好だった。
ベースがイヴォークであるというのは横置きエンジンのレイアウトからも分かるとおりだが、ホイールベースはイヴォークの2,660mmに対して2,740mmと80mm延長。ボディサイズはひと回り大きな4,610mmとされている。これは2列シート(5人乗り)+2座席の、7人乗り(オプション)を可能にするためだ。
もちろん通常使用時で981リッター、シートを折りたたんだ際は最大1,698リッターという圧倒的な荷室容量の確保にも貢献している。7人乗りはディスカバリーの伝統でもあり、この多様性と実用面が同サイズのライバルとしてあげられる「アウディ Q5」や「BMW X3」、「ボルボ XC60」にはないアドバンテージである。
ちなみにライバル車の全長が欧州値比較で軒並み4,600mmを超えていることを考えれば(アウディ Q5が4,629mm、BMW X3が4,657mm、ボルボ XC60が4,644mm)、ディスカバリー スポーツの3列シートを実現したパッケージングはかなり優秀と評価することが可能だろう。
イヴォークのサイズを少し小さいと考えている向きには、プラスαの機能性や使い勝手の面からも、まさにジャストサイズ。
フリーランダー2の後継としても、実用的なサイズだといえるはずだ。実際都内を走らせてみても、大きすぎず小さすぎずの絶妙なサイズ感で、運転が苦になるシーンはほとんどなかった。1,895mmの全幅はほぼライバル車とおなじだと考えれば許容範囲。レンジローバーよりも395mm、レンジローバー スポーツよりも245mm短いボディは、都心の路上でも圧倒的に取り回しが楽である。反面イヴォークよりは255mm長いが、運転の際のストレスをほとんど感じないというのが正直な感想である。
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ディスカバリー スポーツに試乗 (4)
排気量を考えれば、満足いく実用的なエンジン
インテリアは、後席の足下スペースを中心に、じゅうぶん確保されたゆとりある空間と紹介できる。具体的な数値をあげると、後席はライバル車であるアウディ Q5よりも着座位置で54mm高く、ニールームが64mm広く、レッグルームで60mm広いのだという。これはレンジローバー比でニールームがマイナス13mm、レッグルームでマイナス9mmでしかない。その2列目シートは160mmのスライドが可能。いかにキャビンが広く作られているのか、より具体的にイメージできるはずだ。
しかし、残念な面もある。ランドローバー伝統のドライビングポジションである、路面を見下ろすようなコマンドポジションと呼ばれるものではないのだ。これはイヴォークにも共通するポイントで、スタイリッシュなボディデザインゆえの結果なのかもしれない。よって、フロントエンド左右の感覚がディスカバリーなどから比べれば掴みにくいのは否定できない。ほかのSUVからの乗り換えの際は、注意すべきポイントとして納得できるかどうかを確認した方が良さそうだ。
すでにイヴォークのマイナーチェンジで登場している「Si4」と呼ばれる最高出力177kW(240ps)、最大トルク340Nm(34.7kgm)の2リッターの4気筒ターボエンジンは、微低速とパーシャルからの踏み込みでややもたつく感じがあるものの、いったん走り出してしまえば気になるものではない。速度が乗った常用域では軽快感も感じられ、1,920kgの車重と2リッターという排気量を考えれば、じゅうぶんに満足いく実用的なエンジンと紹介できる。
最新の9段という多段ATとエンジンストップスタート式の採用、そしてフリーランダーよりも22kg軽量化されたボディのおかげで(車体の20パーセントを高価な高強度鋼とボロン鋼で構成)、かつてのランドローバーを知るものにとっては望外なほど燃費も良好。メーカー公表値はリッターあたり9.7km(JC08)という燃費性能である。乾燥路面ではほぼ2駆(前輪)で走るため効率が良いのも燃費に貢献しているはずだ。
オフロードでの走行性能は、イヴォーク譲りとなるランドローバーを名のるにふさわしいパフォーマンスを持っている。基本はハルデックス製のプレチャージシステムを用いたオンデマンド式の4WDで、トルク配分の変化をドライバーに意識させない自然な走りが味わえる。
自慢のテレインレスポンスシステムは、「通常」「草地/砂利/雪」「泥やわだち」「砂」の4つの走行モードが選べるが、一般道を走っている分には雨天であっても通常モードで安定した走りがもたらされる。この4WDシステムは意外なほどに賢く、ドライバーの感覚を逆なでしない自然なフィーリングが美点だ。ウィンターシーズンには、ぜひ雪道でも試したいと思わせるパフォーマンスである。
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ディスカバリー スポーツに試乗 (5)
用意周到
一般道を流れに乗って走っている分にはじゅうぶん静かで、たとえ2リッターエンジンといえど、なんの過不足も感じない。ステアリング操作への反応やしっかりしたボディがもたらす乗り心地は、4駆のSUVというキャラクターを考えれば望外のもの。良い意味でスポーティな乗用車感覚である。
これは、兄貴分のディスカバリーとことなる最新のプラットフォームがルーツであることをイメージさせないわけにはいかない。乗りやすく、運転しやすく、快適性も高いこちらは、おなじディスカバリーブランドであっても、共通項を見いだしにくいのである。
古くからのランドローバー好きは、やれモノコックになったとか、副変速機がない、エアサスではないなどと、いまどきのモデルを軟弱になったかのように否定するが、一般ユーザーが体験するようなシチュエーションでライバル以上の4WDパフォーマンスを持つイヴォーク由来の、もっといえばフリーランダー由来の4WDは、じゅうぶんにランドローバーとしてのクオリティを持っていると思える。ガレ場も砂地も、雪道も、その気になれば余裕でこなすタフな性能を持っているからだ。
俯瞰して評価するなら、確かにディスカバリーよりは乗用車に近い本格派とはいえない乗り味かも知れない。ただ、タフなシチュエーションでこそ威力を発揮する本格的な4駆が必要な人ばかりではないのも市場での真実。そしてプレミアムブランドとしては強力なアイコン的存在なのかもしれないが、レンジローバーほどのラグジュアリー性やイヴォークまでのスタイリッシュさを望まない人がいるのも間違いない。とすればディスカバリー スポーツは、サイズや実用性からもなかなか上手いところを突いてきたといえそうだ。
乗用車ブランドのSUVよりは少し本格的なオフロードフレーバーを感じられ、かといってゴリゴリの4駆ではない雰囲気と実用性が、これまでプレミアムSUV市場で先行してきたBMWやアウディにとって驚異になることは間違いないだろう。フリーランダーとは異なり、いかにもエントリーモデルとしてのラインナップではなく、ディスカバリーのブランドであることも絶妙だ。上手にユーザーの購買意欲と所有欲をくすぐる。まさに用意周到。じゅうぶんに練られた企画モノである。
欧州ブランドのライバルに比べても、老舗4WDブランドのネームバリューも優位なディスカバリー スポーツは、プレミアムブランドSUVの新しい選択肢として、大いに注目したい存在だ。日本にもマッチするサイズや多様性、必要以上にオシャレ過ぎないデザインは、かといってオフロードテイストを前面にアピールしているわけでもない。なによりも「ランドローバー」としてはリーズナブルなプライスが、人気を後押しするはずである。ディスカバリー スポーツは、買って後悔しないSUVとして太鼓判を押したい気分にさせてくれるニューモデルである。
Land Rover Discovery Sport|ランドローバー ディスカバリー スポーツ
ボディサイズ|全長 4,610 × 全幅1,895 × 全高 1,724 mm
ホイールベース|2,740 mm
重量|1,920 kg
エンジン|1,998 cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボチャージャー
ボア×ストローク|87.5 × 83.1 mm
圧縮比|10.0
最高出力|177 kW(240 ps)/5,500 rpm
最大トルク|340 Nm(34.7 kgm)/1,750 rpm
トランスミッション|9段AT
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|ストラット / マルチリンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッド ディスク
タイヤ 前/後|235/60R18(SE)/235/55R19(HSE)/235/55R19(HSE Luxury)
最小回転半径|5.6 メートル
燃費(JC08)|10.3 km/ℓ
価格|492万円(SE)/582万円(HSE)/692万円(HSE Luxury)
ランドローバーコール
フリーダイヤル0120-18-5568(土日祝除く、9:00-18:00)