アウディSUV初のSモデル、SQ5を試乗|Audi
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2015年1月14日

アウディSUV初のSモデル、SQ5を試乗|Audi

Audi SQ5|アウディ SQ5

価格差では測れない大きなちがい

アウディSUV初のSモデル、SQ5を試乗

アウディのSUVラインナップ、Qモデル初のSモデルとなった「SQ5」を試乗した。ドライブしたのは2012年に登場したディーゼルエンジンモデル「SQ5 TDI」ではなく、2013年のデトロイトモーターショーでデビューを飾り、国内導入が決まったガソリン仕様。Sの称号を手に入れたこのSQ5は、ベースモデルの「Q5」とどう違うのか。価格差76万円に秘められたアウディの味付けの妙を、ジャーナリスト渡辺敏史が味わう。

Text by WATANABE ToshifumiPhotographs by MOCHIZUKI Hirohiko

シャシーのセットアップの差

寿司屋の握りに並中上があるように、クルマにもグレードという松竹梅がある。

さて問題は、どれを選ぼうかという話だ。板さん的には上の方を食べてもらいたいだろうが、そこは客商売。顔色や懐具合を伺いながらお勧めを決めるだろう。クルマとてそこはおなじ……とはいかないのは、単価がでかいぶん価格差も大きいからだ。安い方に誘導することですんなり商談を決めて台数ノルマを稼ぐ方が効率がいい。そして多くの場合、それはユーザーにとっても幸福だったりする。

が、もし走りの質感でクルマを選びたいという向きならば、アウディには注意すべきだろう。SラインよりS、SよりRSと、そのダイナミクスには価格差では測れない大きなちがいがある。

Audi SQ5|アウディ SQ5

Audi SQ5|アウディ SQ5

たとえば、この「SQ5」。搭載するエンジンは3リッターV6スーパーチャージャーと、つまり「Q5」の3.0TFSIクワトロと基本的にはおなじだ。そのパワーは前者が354psに対して後者は272psと、82psの差になる。数字にすると大きいが、多くの人は272psもあれば十分という話にもなるだろう。いっぽうで価格差は76万円。いくら600~700万円付近のクルマとはいえ、普通に考えればこの価格差を納得することはなかなか難しい。

が、僕に言わせればSQ5はレギュラーラインのQ5とはその多くが別物だ。その別物感の対価が76万円というのなら十分合点がいく。むしろ余計なオプションを我慢してでも買うべきはSQ5とまでおもえる、その一番の差はシャシーのセットアップの差だ。

Audi SQ5|アウディ SQ5

アウディSUV初のSモデル、SQ5を試乗 (2)

さじ加減がクルマ好きにとってちょうどいい

モノコックそのものにQ5とSQ5とでは差がないはずだ。標準状態でも十分な剛性を保っている。Q5はこの高剛性のボディに初期作動が柔らかく、奥に向かうほど引き締まるアシを合わせて乗り心地とハンドリングを両立しようとしている。

が、アクセルやステアリングといったインターフェースの初期応答が敏感かつ軽いため、常速域での取り回しに手応え感が薄い。恐らく土台がFFもしくはそれベースの四駆ゆえ、ベースのスタビリティが十分であることを逆手にわかりやすい軽快感を求めての設えなのだろう。

それはクルマ好きにとって嬉しくない芸風のセットアップだが、昨今BMWやメルセデスも同様の傾向を示すようになったのは、彼らが市場でのプレゼンスを高めたことも一因しているのかもしれない。かつてはドイツ車に比べるとペナペナと揶揄された日本車の方が、皮肉にも操作系に重厚な手応えをそなえていることは、直近の

レクサスGS」や「IS」に乗ればお分かりいただけるはずだ。

Audi SQ5|アウディ SQ5 16

Audi SQ5|アウディ SQ5 04

SQ5はそのQ5に対して、インターフェースの手応えや操作に対する応答の確度が明らかに一段重く、そのフィードバックも一際濃厚だ。アクセルの踏みしろに対するスロットルの開き方も線形的で、四肢を路面に掴ませても、その接地感を活き活きと車の側が伝えてくる。総じて乗り心地はやや固めだが、それはシャープネスが高められたクルマのキャラクターに見合っており、不快感はない。

操作と応答の整合性向上がはっきりしていれば、その硬質感は心地よいものとして受け止められるわけで、アウディのS銘柄はそのさじ加減がクルマ好きにとってちょうどいい。

Audi SQ5|アウディ SQ5 06

Audi SQ5|アウディ SQ5

アウディSUV初のSモデル、SQ5を試乗 (3)

そこはかとなく出汁の深みが効いている

手加減を抜きにすればもっとわかりやすくパワーを追求することが出来ただろうエンジンのチューニングも、その程よさがクルマのキャラクターによく見合っている。下からしっかり放たれるトルク感は基準車とまるで遜色がないままに、高回転域にしたがってフラットにパワーを乗せながらしっかりと吹け切る濁りのない感覚は「S」ならではのものだ。

誰もが十分に事足りる速さをそなえながら、そのポテンシャルを完全に手中に収めている、それは専用設定されたクワトロのチューニングの巧みさもあるだろう。コーナーでは後軸に積極的にトラクションを伝えるが、そのチューニングもあくまで基準車プラスアルファという範疇を守っている。



つまり、その仕立ては基準車の枠を飛び越えず、あくまで拡張&洗練という範疇を守ったものだ。大半のドライバーは気付かずも、手練ならアンダーステア感が気になるだろうフルタイム4WDを追い込んでの動的資質に、ちょっと手を差し伸べて旋回力を高めてやる。でもその盤石感は大半のドライバーにとって基準車と変わらない。甘からず辛からずでもって、そこはかとなく出汁の深みが効いている……と、ここでも口に出てしまうのはその味付けの妙だ。

つまりアウデイの商品戦略においては、一部のマニアが熱狂するような圧倒的プロスペックはRSに任せ、Sは気取らず入れて我儘も効き、なんなら子供も連れていける馴染みの割烹みたいなところに敢えてフォーカスするということになるのだろう。SQ5に乗ると、その意向がとてもよくわかる。

アウディの松竹梅において、真ん中は決して消極的、打算的な選択肢ではない。むしろ、綺羅びやかでなくとも気持ちいい毎日を過ごしたい、そのためにちょっといいものを選びたいという向きには、もっともコストパフォーマンスの高いアウディといえるかとおもう。

Audi SQ5|アウディ SQ5
ボディサイズ|全長 4,645 × 全幅 1,910 × 全高 1,625 mm
トレッド 前/後|1,630 / 1,625 mm
重量|2,000 kg
エンジン│2,994cc V型6気筒 DOHC スーパーチャージャー
最高出力│260 kW(354 ps)/6,000 - 6,500 rpm
最大トルク│470 Nm / 4,000-4,500 rpm
トランスミッション│8段AT
駆動|4WD
サスペンション(前/後)|5リンク / ダブルウイシュボーン
ブレーキ(前/後)│ベンチレーテッドディスク
タイヤ(前/後)|255/45 R 20
燃費(JC08)│10.8 km/ℓ
CO2排出量|215 g/km
価格|749万円(税抜)

アウディコミュニケーションセンター
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