Jaguar XJ|4ドアサルーンXJがフルモデルチェンジ
CAR / IMPRESSION
2015年3月13日

Jaguar XJ|4ドアサルーンXJがフルモデルチェンジ

Jaguar XJ|ジャガー XJ 試乗 (1)

しなやかかつ俊敏な走りの新型XJ

ジャガーのフラッグシップ、XJがモデルチェンジ。ジャガー・ランドローバー・ジャパンの手で6月より日本発売される予定だ。5リッターV8エンジンを、大胆なスタイリングのボディに搭載した4ドアサルーンで、価格は1000万円からとなる。

文=小川フミオ写真=荒川正幸

ロングホイールベース版も用意

2003年以来のフルモデルチェンジとなる新型XJは、「ジャガー史上もっとも先進的でパワフル」と謳われる5リッター直噴エンジンを搭載。ジャガーでは、スポーティな走行性能と最上級の室内空間を融合したとしている。

車体はアルミニウムのモノコックボディを中心に、極薄のアルミシートを重ね合わせたフュージョンアロイを前後のフェンダーに、そして超がつく軽量マグネシウムをフロントエンドに採用して、操縦性を重視しての前後の重量バランスをとっているのが特徴。同時にセグメントクラストップの軽量ボディが実現した。XJ Luxuryで車重は1,850kg。全長5,135mmとけっして小さくない車体のクルマとしては、軽量ともいえる数値となっている。

モデルラインナップは、車体からみると、3,030mmのスタンダードホイールベースと、3,155mmのロングホイールベースに大別される。エンジンは3種類。基本は5リッターV8だが、385psの自然吸気型をはじめ、470psのスーパーチャージド、さらによりパワフルで「ハード」と呼ばれることもある510psのスーパーチャージドからなる。

ラインナップを列記すると下記のようになる。

スタンダードホイールベース
・XJ Luxury(自然吸気)1000万円
・XJ Premium Luxury(同)1150万円
・XJ Portofolio(同)1320万円
・XJ Supersport(スーパーチャージド・510ps)1655万円

ロングホイールベース
・XJ Portfolio(スーパーチャージド・470ps)1600万円
・XJ Supersport(スーパーチャージド・510ps)1755万円

マーケティングにおける位置づけも従来と変える、とセールスを担当するジャガー・アンド・ランドローバー・ジャパンでは話す。これまでXJが位置していたのは、ドイツの競合がひしめく、伝統性とブランドの価値に重きが置かれるセグメントだったが、新型XJはそこから脱出してより先進性とスポーツ性が強いセグメントで「ブランドキャラクターに重きを置く」(日本でのマーケティング・PR統括者の話)とする。競合でいうと、マセラティ・クワトロポルテやベントレーGTやメルセデスベンツCLSなどが存在するセグメントだ。

伝統を踏まえつつ、大胆な個性を発揮したスタイリング

新型XJのスタイリングは、よくいえば伝統的、悪くいえば保守的なプロポーションを持つドイツ車のデザインとは一線を画すもの。ティアドロップシェイプとデザインを統括するイアン・カラムが呼ぶ、後方まで長く引っ張るような造型の側面のウィンドウグラフィクスにくわえ、ロングルーフからショートデッキにいたるまで流れるようなラインが強調されている。それが1000万円超の高級サルーンのデザインとしては、かなり大胆な個性を際立たせている。

室内も新型XJの魅力にあげられている。頂点にしっとりした感触のセミアニリンレザーを置く本革張りシートをはじめ、360度ウッドで取り囲むような装飾、そして直感で操作できることを前提に設計されたiTechと呼ばれるモダンなコントロール類。伝統的なクラフツマンの手仕事と、最新のパーソナルコンピュータを思わせるインターフェイスが融合している。そこにあたらしさを感じさせる。

Jaguar XJ|ジャガー XJ 試乗 (2)

しなやかかつ俊敏な走りの新型XJ

俊敏な出足、走行中の加速性にも満足

今回試乗したのは、385psの最高出力をもつ自然吸気エンジン搭載「XJ Portfolio」のスタンダードホイールベース版(1320万円)。カシミアというシルバーとゴールドがミックスされたような外板色に、オイスターなるホワイトの革内装の組み合わせだった。ひと目見たときの印象は大きなフロントグリルと、それをはさんだアグレッシブなヘッドランプのデザインによって、かなりスポーティだ。

運転席にからだを収めると、シートは背中から包み込むようなタイトなつくりだ。ヘッドルームが限られているのはXJの伝統?なのかもしれないが、ふたつのスライディングルーフからの明かりがあれば、よりエアリーな印象が強くなる。センタートンネルが大きく、それがドライバーに適度な囲まれ感を与えるのは、歴代のXJと同様だ。

仕様にもよるがグロス感のあるインテリアパネルに、クロームの操作系のアクセントは主張を感じさせる。このようなプレミアムサルーンに乗れるのはある程度の年齢のユーザーだろうが、なかでもモダンなものを好むひとには支持されるデザインだろう。

ボタンを押してエンジンに火を入れ、円筒形のドライブセレクターを時計回りに回してドライブを選択してアクセルペダルを踏み込むと、かなり俊敏な発進感覚だ。けっして暴力的ではないが、3,500rpmで515Nmの最大トルクを出すエンジンは、途切れることのないトルク感でもって車体をどんどん押し出していく。

中間加速も素早く、今回はスポーツ性能を勘案してフロントは金属バネにしたサスペンションの特性と相まってステアリングへの反応はダイレクト。エアサスペンションによる後輪の追随性もよく、高速レーンチェンジも軽快だ。ジャガーはまったりしたサルーンだと思っていると、実際の身のこなしは軽快で驚くだろう。

よりスポーティな「ダイナミック」モード

5リッターのV8の実力はすでにXKやXFで実証ずみで、トルクがたっぷりある一方、回転マナーもよく、運転する楽しさを感じさせてくれるエンジンだ。XJとの相性もよい。発進時の出足も俊敏だし、中間加速といって走行中にアクセルペダルを踏み込んだときの加速性も申し分ない。

ドライブコントロールが設けられていて、「ダイナミック」を選択すると、よりスポーティなドライブを楽しむことができる。ギアセレクターの近くにあるチェッカーフラッグ図案のボタンがセレクターで、ダイナミックの場合、バーチャルクラスターと呼ばれるデジタルの計器板が赤くなる。これでエンジン出力をはじめ、シフトタイミング、トラクションコントロール、アダプティブダイナミクスなどの特性が変わる。ダイナミックではスポーティな性格がより強く打ち出され、刺激性が強くなる。

今回「ソフト」にしても「ハード」にしてもスーパーチャージドエンジンは用意されていなかったが、おそらくそちらは「過剰」を求めるひと向け。自分でハンドルを握るのが好きなオーナーなら、ダイナミックモードが設けられた自然吸気エンジンで充分すぎるぐらいだと思う。

Jaguar XJ Portfolio|ジャガー XJ ポートフォリオ
ボディ|全長5,135×全幅1,900×全高1,455mm
ホイールベース|3030mm(スタンダード)
車両重量|1850kg
エンジン|5ℓ V型8気筒DOHC
最高出力|283kW[385ps] / 6,500rpm
最大トルク|515Nm / 3,500rpm
駆動方式|後輪駆動
トランスミッション|6段AT
タイヤサイズ(前、後ろ)|245/45 ZR19、275/40 ZR19
価格|1320万円

           
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