メルセデス・ベンツの新型SUV「GLA」を試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz GLA Class|メルセデス・ベンツ GLA クラス
第5のSUVはアウトドアもこなすシティ派
メルセデス・ベンツの新コンパクトSUV、「GLA」を試乗する
輸入CセグメントやBセグメントのコンパクトSUVが全世界的にブームを巻き起こしているなか、メルセデス・ベンツが満を持して投入したのが、2013年のフランクフルト モーターショーでワールドプレミアを果たした「GLA」である。「Aクラス」をベースにする第4のモデルとして、そしてTVCMでお馴染みとなったスーパーマリオの愛車としても注目したい。
Text by SAKURAI KenichiPhotographs by ARAKAWA Masayuki
スーパーマリオの愛車、新型「GLA」の実力は?
日本を代表するプレミアムブランド、レクサスが「NX」を投入したように、いま世界でもっとも熱いカテゴリーが何を隠そうコンパクトSUVクラスなのである。ブームに火を付けたのはBMWの「X1」だといえるが、アウディの「Q3」しかり、「ミニ クロスオーバー」しかり、そうした例からもわかるように、いまやプレミアムブランドにもコンパクトSUVのラインナップは絶対不可欠と断言できる。
満を持してメルセデスがラインナップにくわえた新型コンパクトSUV「GLA クラス」は、車名末尾のアルファベットに “A”の文字が入ることからも理解できるように「Aクラス」の、4番目となる姉妹車であると同時に、メルセデスとしては5車種目となるSUVモデルでもある。
このGLAの登場によって、Cセグメントからフルサイズまで、ほぼすべてのセグメントにおいてSUVをラインナップする総合ブランドにメルセデスが進化した事実も忘れてはならない。さらに、先に発表した6輪駆動の「G 63 AMG 6×6」の導入からも、メルセデスがSUVラインナップの充実にちからを入れているのかが窺い知れる。
TVCMに起用されたスーパーマリオの効果もあってか、GLAをディーラーに見に来る人は、発売後3ヵ月たったいまでも途切れることが無いという。スーパーマリオの愛車ともなれば、ファミリー層の受けが良いことも察しがつく。小さな子供にもさぞ喜ばれるだろう……と思いきや、目を輝かせている中には、30-40代前後のユーザーも多いのだとか。なるほど、そこは幼少期にスーパーマリオのゲームで遊んだ層への刷り込みが効いているのかもしれない。なにせスーパーマリオも、気づけば来年で誕生30周年なのだから。
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日本での使い勝手も考慮されたサイズ
そうしたさまざまな要因で順調に受注を伸ばしているそのGLAのルックスは、ひと目でメルセデスであり、Aクラスのファミリーだとわかるものだ。大きめのサイズを採用したタイヤとホイール、そしてそれらを四隅に配置したフォルムがSUVであることを雄弁に物語るが、そうした反面車高は一般的なSUVにしては低めで、このスタイリッシュなアピアランスからは、いわゆる都会派のSUVというキーワードを導くことができそうだ。
中心モデルとなる「GLA 250 4MATIC」の全長4,430×全幅1,805×全高1,505mmというサイズは、日本での使い勝手も考慮されたもので、機械式駐車場に収まる全高もストロングポイントである。この1,505mmという数値は、Aクラス(A 250 SPORT 4MATICで1,425mm)よりも80mm高く、意外なことに「Bクラス(B 250が1,545mm)」よりも40mm低い。ホイールベースはAクラスとおなじ2,700mmという設定で、よってそのサイズを考えれば、車内スペースは決して広くはないが妥当といえるものだ。
前述のとおり、キャラクターを見れば、おなじく都会派のBMW X1シリーズやアウディQ3がライバルとして挙げられる。ただし、価格はX1が416万円(FRのsDrive20i/8段AT)からであるのにたいして、GLAは、「GLA 180」が344万円(FF/7段DCT)からとかなり、かなり戦略的なプライスをひっさげてきたことがわかる。これはQ3と比較しても同様だ。日本導入のQ3は4WDのみのラインナップであり、スタート価格は426万円であるからだ。
ただし、だ。4WDモデルのスタート価格をくらべれば、「Q3 2.0 TFSI quattro 170PS」426万円<「X1 xDrive20i」442万円<「GLA 250 4MATIC」459万円という結果になる。つまり、このクラスのSUVを求めるユーザーが4WD性能を本当に必要とするかどうかで、価格への評価はがらりと変わってきそうだ。国産車の例で恐縮だが、日産の「デュアリス」や「ジューク」では、販売車両のほとんどがFFだというデータもあるぐらいだから。
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SUVらしさに、Aクラス譲りのスポーティさをあわせもつ
さて、Aクラスに似た顔をもちながらもボリュームアップされ、より筋肉質な体躯を強調するエクステリアデザインでは、全車で標準装備されるルーフレールなど、SUに不可欠なタフなイメージもじゅうぶんに表現されている。細部の作り込みはさすがプレミアムブランド最新作といえるもので、たたずまいからもクオリティ感が存分に伝わってくる。
ドアの開閉音や、そのドアを開けて乗り込んだ先のキャビンも、メルセデスの流儀に従ったもので、おのずと「いいモノ感」が漂ってくる。インテリアは、Aクラスと共通の意匠だが、円を基調としたメーターやエアコンのエアアウトレット、ダッシュボード上で独立したCOMANDシステムの7インチワイドディスプレイなど、スポーティなそのデザインはGLAにもマッチしており、いわゆる取ってつけたようなイメージはない。
「Cクラス」などとおなじようにドアに用意された電動シートのスイッチを調整すれば、シートポジションはピタリと決まる。旧A/Bクラスでは、シート調整用スイッチがシート自体に取り付けられていたので、他モデルとのUIの共通という点や使い勝手の面でも、いささかメルセデスらしくないと言わざるを得なかったが、現在のラインナップではそうした不満が解消されている。
シートポジションがもたらす視点の高さは、やはりAクラスとはことなるSUVらしさを感じさせる部分だ。
GLAラインナップのメインストリームともいえる最高出力155kW(211ps)の2リッター直列4気筒ターボと7段デュアルクラッチ“7G-DCT”を搭載する4WDの「GLA 250 4MATIC」では、走り出しからパワフルな加速を楽しむことができる。
極低速時であっても滑らかなギアチェンジをおこなう“7G-DCT”は、舌を巻くほどできが良い。まるでトルコンATのように扱えるので、知らない人が乗ったらこれをDCTとは思わないかもしれない。
ワインディンロードでは、視線の高さを除けば、まるでAクラスのような俊敏なハンドリングとスポーティなエキゾーストサウンドを味わえる。足は良く動き、乗り心地も良好だ。左右のコーナーが連続するようなシーンでも、ハンドリングにダイレクトなコーナリングワークがおこなえる。Aクラスに比較すれば、上下の動きは多少顕著に感じられるが、それが不快でないのは、しっかりとしたボディのおかげでもあろう。とにかく、SUVというカテゴリーから想像されるような、もっさりとした動きとは無縁である。
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ある程度のオフロード走行は十二分におこなえる
これだけ乗り心地やハンドリングが乗用車ライクなら、オフロード性能に大きな期待は寄せられない……という気持ちを見事に裏切ってくれたのが、タフなことで知られる「富士が峰オフロードコース」に持ち込んだときのことだった。
GLAを飲み込みそうな深いモーグルやバンク、20度を超える急勾配やガレ場を備える本格的なオフロードコースにたいして、オンロードがメインの(と思えた)キャラクターでは、やはり荷が重いのでは? という懸念をよそに、ノーマルタイヤにもかかわらずGLAは、しっかりとした足取りで、コースをクリアしていくのだ。
オフロード走行の際は、センターコンソールにあるシートヒータースイッチの隣に用意されたオフロードモードスイッチを押すだけで準備が整う。これだけでシフトプログラムやアクセルのレスポンス、ABSやASRなどの各種電子デバイスがオフロード対応のセッティングになる。ほかに面倒な用意は一切必要ない。
GLAがオフロードモードになると、COMANDシステムの7インチワイドディスプレイには、前輪の切れ角、セレクトされているトランスミッションモード、方位、勾配、横方向の傾き、DSRの作動状況など、オフロード走行に必要な情報を表示する“オフロードスクリーン”に切り替わる。これまで経験やスキルによって判断されていたオフロード走行の状況や数値が、ひと目で確認できるのは実にありがたい。ほとんどのオーナーはGLAをオフロードに持ち込まないとは思うが、ビギナーでも安心してチャレンジできる装備として、オフロードスクリーンは有効だろう。
さらに急な下り勾配では、アクセルとブレーキを制御して4-18km/hのあいだで車速を自動調整してくれるDSR(ダウンヒル スピード レギュレーション)も用意されていおり、ドライバーはステアリング操作にのみ集中することができる。
「GLA 250 4MATIC」では150mmの最低地上高を確保しているので、そのクリアランスさえ注意すれば、「Gクラス」のように道なき道を行く……とまではいわないが、ある程度のオフロード走行は十二分におこなえるということである。ルックスこそシティ派ではあるものの、SUVとして期待される基本性能はしっかりと抑えている。
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ライバルは内にあり
BMWが先行し、それにアウディやMINIといったプレミアムブランドが参入し、注目を集めるコンパクトSUVのカテゴリー。デザインや走り、そしてオフローで性能やレーダーセーフティパッケージによる最先端の安全性能など、遅れてきた巨人メルセデスが放つ渾身のGLAに、いまのところ死角らしい死角は見当たらない。
日本はもとより、コンパクトSUVの主戦場たる北米や中国のマーケットでは、これにレクサスをくわえた熾烈なシェア争いが繰り広げられるはずである。しかし、そうした強力なライバルを前にしても、GLAが頭ひとつ抜けていることは、ステアリングを握った者であれば誰もが感じる共通の印象であるはずだ。
それほどまでにこのGLAのポテンシャルと魅力は高い。メルセデス側に立って考えうる唯一の懸念材料は、おそらくAクラスやBクラスのユーザーを喰ってしまわないかということぐらいだ。なにせ、この日本においても、車高を理由にGLAを諦める必要などはないのだから。
Mercedes-Benz GLA 250 4MATIC|メルセデス・ベンツ GLA 250 4マティック
ボディサイズ|全長 4,430 × 全幅 1,805 × 全高 1,505 mm(1,510 mm ナイトパッケージ装着時)
ホイールベース|2,700 mm
トレッド 前/後|1,555 / 1,545 mm
重量|1,570 kg(1,600 kgパノラミックスライディングルーフ(オプション)装着時)
エンジン|1,991 cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボ
最高出力| 155 kW(211 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|350 Nm(35.7kgm)/ 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7G-DCT)
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|235/50R18 / 235/50R18
燃費(JC08モード)|14.0 km/ℓ
価格|459 万円
メルセデスコール