ラグジュアリー SUV レンジローバーの世界|Range Rover
Range Rover Autobiography|レンジローバー オートバイオグラフィ
Range Rover Sport 5.0 V8 Limited|レンジローバー スポーツ 5.0 V8 リミテッド
ラグジュアリーSUVといえばレンジローバー
レンジローバー & レンジローバー スポーツの世界
イヴォーク、レンジローバー スポーツ、レンジローバーと3つのボディバリエーションを展開するレンジローバー。いずれも劣らぬ、英国産ラグジュアリーSUVだ。今回は、そのレンジローバーブランドの最高峰、「レンジローバー オートバイオグラフィ」と、日本でもモデルチェンジを目前に控えて、いよいよ手に入るチャンスもあとわずかとなった「レンジローバー スポーツ」の限定モデル「5.0 V8 リミテッド」を、長崎で九島辰也氏とともにテストした。
Text by KUSHIMA TatsuyaPhotographs by ABE Masaya
なぜレンジローバーを選ぶのか?
イヴォークの登場で新たなセグメントへ打って出たランドローバー。
とはいえ、ラグジュアリー嗜好の人気モデルといえば、レンジローバーとレンジローバースポーツにほかならない。洋の東西に限らず、ラグジュアリーSUVの最高峰はこれで決まりだ。
もちろん、そこにはこれまでつきかってきたストーリーがある。
1970年デビュー当時からレンジローバーは位の高い人々の趣味の足として愛用されてきた。ハンティングやキャンプ、ホースライディングといったアクティビティ、それと大陸を横断するといった冒険なんかにも使われた。
そもそも冒険なんてお金と時間のかかることは、相当余裕のある人々にしかできない芸当だ。
では、なぜ彼らはレンジローバーを選んだのか。
その理由はこのクルマがオンリーワンだったから。
つまり、悪路を走れる4WD機能とアクティビティに使うギアを積めるカーゴスペースが十分にあるクルマはほかになかったのだ。それまでは4WD車は荷物を積めず、2WDのステーションワゴンは悪路を走り切るだけのパフォーマンスを備えなかった。
また、位の高い人がこのブランドを躊躇なく使う理由はほかにもある。
ランドローバーはシリーズ1からエリザベス女王のパレード車として使われていた事実がある。前述したように、英国の自動車産業において、オンリーワンだったことでそんな使われ方をした。
背の高いクルマがパレードに都合がよかったのはご想像のとおりである。
北米からの追い風
最大のマーケットである北米での動向もこのクルマの誕生と関係する。アメリカ大陸におけるSUVの需要がどんどん高まってきたのはちょうどこの時期。
彼の地ではピックアップトラックおよびその派生であるSUVは当たり前の存在となる。そして、そこにレジャー的要素が求められてきたのもまさに60年代以降の流れ。見るからにヘビーデューティなモデルよりも、家族団らんの足となるSUVが求められるようになったのだ。
ランドローバーの首脳陣はそこをめがけてレンジローバーの開発に取り組んだ。もちろん、そこで成功すれば外貨獲得の絶好のチャンスとなるのはいわずもがなである。
アメリカにおけるラグジュアリーSUVの起源は、一説に63年にリリースされた「ジープ ワゴニア」ともいわれる。それまでにない、ウッドパネルをボディに貼るという行為が、グレードの高さをアピールした。
Range Rover Autobiography|レンジローバー オートバイオグラフィ
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ラグジュアリーSUVといえばレンジローバー
レンジローバー & レンジローバー スポーツの世界 (2)
レトロモダンと形容したい
といった話を念頭に、新型「レンジローバー」を長崎で試乗した。
大室湾にあるリゾートホテルを起点に、市内などいろいろなところを走り回った。
新型はこれまでもすでに何度かステアリングを握っているし、デザインの責任者ジェリー・マクガバン氏にも何度かインタビューした。イヴォークを世に送り出した彼だが、さすがにレンジローバーのモデルチェンジは慎重だったという。すでにたくさんいるレンジローバーオーナーが受け入れられるものでなくてはならないし、そこにあたらしさも取り入れなければならない。まさにヘリテージとモダンの融合が今回のテーマとなった。
ご覧頂ければわかるように、それは見事達成できたとおもう。
どこから見てもレンジローバーであるが、従来型と並べるとそのちがいは大きい。特にヘッドライト周りはそうで、かなりモダンな印象を与える。
というか、個人的にはレトロモダンといったワードが似合う気がする。建築の世界でいえば、ル・コルビュジェの作品のような。年代を超えたモダニズムがそこにあるようだ……
ハードウェアは最先端だ
ただ、ハードウエアにかんしては決定的な進化があるのを忘れてはならない。
新型レンジローバーのボディフレームはオールアルミニウム。SUVでは世界初となる屈指のアルミ加工技術がそこで振る舞われた。もちろん、そのノウハウは一朝一夕のものではない。兄弟ブランド ジャガーが2003年から進化させてきたものだ。X350型と呼ばれる「XJ」でスタートした。
結論から言うと、アルミをまとったボディは走らせると想像以上に軽く感じ、軽快なフットワークを見せてくれる。連続するコーナーではクルマの大きさを忘れてしまうほどだ。また、それと同時にボディ剛性も上がったことでステアリング操舵にたいする一体感も増した。これだけ素直に反応するSUVも珍しい。
それにブレーキも躊躇なく踏めるのがいい。ボディが重く感じるとその分のGフォースが押し寄せてくるようでブレーキをガツンと踏みにくいが、こいつにそれはない。ある程度スピードが出ていても遠慮なくブレーキを踏み込める軽快さを感じる。これはけっこう大事なことだ。
それでいて乗り心地がしなやかなのもグッド。そもそも精緻にコントロールされたエアサスだが、新型はそれがさらに進んだようにおもえる。可変時に違和感はなく、硬くなってもゴツンという領域とは無縁である。このサジ加減はさすがだ。ロードレベリングは自動調整される。
それに5リッター+スーパーチャージャーのパワーは絶対で、ケチの付けどころがない。2,000回転で高速クルーズを決め込むのもよし、ガンガン踏んでガッツリ走りこんでもいい。
言っておくが、燃費走行に徹すればそれほどひどいことにはならない。低回転から太いトルクを発生させるとは、そういうことである。ちなみに、今回は高効率化を進め、二酸化炭素排出量も従来のものより少なくしている。
Range Rover Autobiography|レンジローバー オートバイオグラフィ
Range Rover Sport 5.0 V8 Limited|レンジローバー スポーツ 5.0 V8 リミテッド
ラグジュアリーSUVといえばレンジローバー
レンジローバー & レンジローバー スポーツの世界 (3)
あらためてレンジローバー スポーツを味わうし
ではレンジローバースポーツはどうか。
すでに新型が海外のモーターショーで発表されていることもあり、興味はそちらへ向くのも確かだが、こうしてあらためて試乗すると現行型の完成度が高いことがわかる。
レンジローバーより明らかにスポーティに振ったチューニングなど、クルマのキャラは確立している。5mを切る全長も、レンジローバーより切り詰められたホイールベースも、すべてがスポーティな味付けを助けているといっていい。
今回試乗した、5.0 V8 LIMITED は120台のみという限定車だ。ここでは詳細を省くが、エアロパーツなどが付いて雰囲気を盛り上げている。20インチのスポーティなデザインのホイールが足元を引き締める。
走り出すと、5mを超えるレンジローバーの後だと、やはりクルマが小さく感じた。ステアリングフィールもリニアで、切れば切るほど重さを感じるのがいい。背の高さを忘れて、グイグイ行きそうな気にさせる。
エンジンは過給器のない5リッターV8となる。最高出力は375ps。が、ここで物足りなさを感じることは正直ない。そりゃそうだ。相対評価ではなく、絶対評価でいえば、十分な値であることは不問である。
ただし、インテリアの細部については、レンジローバーとはちがうのは否めない。そこはこのクルマがひと世代ことなるのと、若干のヒエラルキーが関係する。
それでもこの限定車にかぎって言えば、プレミアムレザーシートが予想以上に高級感を醸し出していた。
この辺にかんしては実際に見て触れて感じてほしいところだ。
クルマは新型もいいが、こうした熟成モデルというのも捨てがたい魅力を感じる。レンジローバースポーツでワインディンを駆けながら、そんなことを久々に感じた。
Land Rover Range Rover Autobiography|ランドローバー レンジローバー オートバイオグラフィ
ボディサイズ|全長5,005×全幅1,985×全高1,865 mm
ホイールベース|2,920 mm
トレッド 前/後|1,690 / 1,685 mm
重量|2,520 kg
エンジン|4,999cc V型8気筒 DOHC スーパーチャージド
最高出力| 375kW(510ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|625Nm(63.8kgm)/ 2,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|275/40R22
燃費(JC08モード)|5.3 km/ℓ
価格|1,670万円
Land Rover Range Rover Sport 5.0 V8 Limited|ランドローバー レンジローバー スポーツ 5.0 V8 リミテッド
ボディサイズ|全長4,795×全幅1,930×全高1,810 mm
ホイールベース|2,745 mm
トレッド 前/後|1,605 / 1,610 mm
重量|2,580 kg
エンジン|4,999cc V型8気筒 DOHC
最高出力| 276kW(375ps)/ 6,500 rpm
最大トルク|510Nm(52.0kgm)/ 3,500 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|275/40R20
燃費(JC08モード)|6.0 km/ℓ
価格|793万円(120台限定)