ジャガーのステーションワゴン「XFスポーツブレーク」を試す|Jaguar
Jaguar XF Sportbrake|ジャガー XF スポーツブレーク
ジャガー「XFスポーツブレーク」を試す
ミッドサイズサルーン「XF」の、ステーションワゴンモデル「XFスポーツブレーク」が追加された。サルーン、スポーツクーペ、SUVに続くボディタイプとして、ジャガー ランドローバー ジャパンが発売したばかりのモデルだ。この最新モデルに小川フミオ氏がポルトガルにおいて先行試乗した。
Text by OGAWA Fumio
スポーティさとエレガントさを兼ね備える
ジャガーが「XF」をベースに開発したスポーティなステーションワゴン、その名も「XFスポーツブレーク」を発表。2017年10月にポルトガルで試乗会を開催した。
SUVにマーケットシェアを奪われている感もあるステーションワゴンだが、日本をはじめいくつかのマーケットでは依然人気が高い。
ステーションワゴンの魅力は、車高を抑えているゆえの使いやすさが大きい。
最たるものはセダンと同様の乗り心地のよさだ。サスペンションの動きが制約されにくいため、快適である。
もうひとつ、とくに東京のような市街地で使う際にタワー式の駐車場を使いやすい点もステーションワゴンの扱いやすさである。セダンと同等に使えて、長尺物など運びやすい。
さらにもうひとつ、ジャガー XFスポーツブレークにはスタイリッシュであるという魅力がある。低くかまえたスタンスをはじめ、前後長が長いルーフと、美しいウィンドウグラフィクスが端的な例だ。
「デザインにあたってはプロファイル(側面)をスポーティにすることに心を砕きました」。試乗会のときのメーカーによるプレゼンテーションの席上でデザインを統括したウェイン・バージェス氏はそう語った。
「もっとも気をつかったのはルーフのカーブです。スポイラーと一体化していますが、ここはスポーティになりすぎずエレガントさを意識するようにしました」
もうひとつ自慢したいのはサイドウィンドウのグラフィクスですとバージェス氏は続ける。「セダンをベースにステーションワゴンを作るときどこかに破綻が出がちです。XFスポーツブレークは自然にうまく出来たと自負しています」。
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すっと気持ちよく向きを変えるハンドリング
本国のラインナップは豊富だ。エンジンはガソリンとディーゼル。駆動方式は後輪駆動とフルタイム4WD。ガソリンは250psの4気筒で駆動方式は2種類用意される。380psの3リッターV6は米国や中国など限られた地域むけ。
ディーゼルは、163ps力から260psまで出力ちがいの2リッター4気筒が3タイプ。加えて300psの3リッターV6が用意される。仕様は「ピュア」「プレスティッジ」「ポートフォリオ」「Rスポーツ」そして「S」だ。
今回ポルトを出発してワイン畑が広がる内陸部までドライブしたのは、日本導入予定という2リッターの後輪駆動版。仕様はスポーツバンパーを含めた専用のボディキット、グロスブラック仕上げのウィンドウフレーム、スポーツシートなどを持つ「Rスポーツ」だった。
すでにジャガーのいくつものモデルで導入されている新世代の「インジェニアム」とよばれる4気筒エンジン。最高出力は184kW(250ps)/5,500rpm、最大トルクは365Nm/1,200-4,500rpmだ。それに8段ATである。
乗り込んだときの印象は(当然といえば当然だけれど)XFサルーンと変わらない。操作系がきれいに整理された左右対象型のセンターダッシュボードで、大きなTFT液晶のモニターによるインフォテイメントは操作できる。
シートはやはりサルーンの「Rスポーツ」でおなじみのホールド性のいいスポーティなタイプ。僕が乗ったクルマはブラックとレッドの2トーンのレザー張りだった。
走りはスムーズですなお。エンジンはどちらかというと回すとより楽しいタイプだ。3,000rpmの手前からぐぐっと力が出てくる感じである。市街地では軽くアクセルペダルを踏んだだけで十分な加速感があるので、山道の印象限定かもしれない。
走りがスムーズというのはハンドリングについてもいえる。切り込んだときにすっと気持ちよく車体は向きを変えていく。これはワインディングロードでとくに感心させられた。
後輪駆動に乗ったせいか鼻先が軽く内側を向き、瞬時に後ろからそれをプッシュする感覚が好ましいのだ。全長が4955mmもある、むしろ大型ステーションワゴンなのだが、運転席にいるかぎり大きさは意識させられない。
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都市とレジャーを同時に楽しめるプレスティッジ性と快適性を追究
高速になるとリアスポイラーをはじめ空力的付加物が効果が発揮しはじめる。一定の速度を超えると車体が地面に押しつけられるようになり、安定感が増す。そのときも乗り心地が悪化することはないのはさすがだ。
エンジンにはもうひとつ魅力がある。サウンドである。回転が上がっていくと、やや低音が強調された排気音が聞こえてくる。乾いた音で、それほど大きくはないが、確実に快音だ。
音については、不快な要素はていねいに排除されている。走行中も静かで居心地がよい。ステーションワゴンの場合、ルーフ後端部を風が“叩く”音や、荷室で音がこだますることもある。しかし前席にいるかぎり荷室内からの音が気になることはなかった。
乗り心地はやや硬め。35パーセントというプロファイルのタイヤのせいかもしれない。ダイナミックなハンドリング特性のためにタイヤもしっかり役割を果たしているということか。
ネガは乗員が多少なりとも凹凸感をおぼえることかもしれない。けれどステーションワゴンであって、後席重視のセダンに乗っているわけではないから、納得できる範囲内である。
長尺物も積めるのがこのクルマのセリングポイントなので、ゴルフをはじめとするスポーツが好きな人はとくに恩恵を感じるだろう。リアサスペンションには車高維持機能があるので機能的だ。
ジャガーではたしか「Fペイス」から導入されたアクティビティキーもXFスポーツブレークに採用されている。腕時計型のキーで、サーフィンなどポケットを持たないウェアを着るアクティビティのとき重宝する。
SUVでは悪路走破性を追究し、ステーションワゴンでは都市とレジャーを同時に楽しめるプレスティッジ性と快適性を追究。同時に前記のアクティビティキーなど提供価値を強化する周辺装備の開発もぬかりない。
ジャガーは同じグループのランドローバーをアセットとして上手に利用して、プレスティッジモデルの「XJ」を頂点とするサルーン系、Fペイスやまもなく日本導入される「Eペイス」というSUV系、近い将来発売予定の電気自動車の「Iペイス」とフルラインナップが出来上がりつつある。
XFスポーツブレークは、メルセデス・ベンツが「Eクラス」で、BMWが「5シリーズ」でステーションワゴンを持ち、それぞれ成功を収めているのと同様の理由で、新しい顧客を惹きつける力を発揮すると思う。
Jaguar XF Sportbrake R-Sport 2.0|ジャガー XFスポーツブレーク Rスポーツ 2.0
Jaguar XF Sportbrake R-Sport 2.0|ジャガー XFスポーツブレーク Rスポーツ 2.0
ボディサイズ|全長 4,955 × 全幅 1,880 ×全高 1,496 mm
ホイールベース|2,960 mm
車両重量|1,705 kg
エンジン|1,997cc 直列4気筒ターボ
最高出力|184 kW(250 ps)/5,500 rpm
最大トルク|365 Nm/1,200-4,500 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|FR
サスペンション前|ダブルウィッシュボーン式
サスペンション後|インテグラルリンク式エアスプリング
タイヤ 前/後|255/35R20
最高速度|241 km/h
0-100km/h加速|7.1 秒
燃費(EU)|6.8 ℓ/100km(14.7 km/ℓ)
トランク容量|565-1,700 ℓ