ジャガー「F-Pace」国内試乗|Jaguar
Jaguar F-Pace|ジャガー Fペイス
ワインディングロードが生んだ英国のSUV
ジャガー初のSUVモデルとして昨年9月にデビューした「F-Pace」。日本へは2015年の東京モーターショーでジャパンプレミアと同時に初回限定モデルの予約受付を行い、今年の6月にはついにカタログモデルが上陸したばかりだ。その最新SUVに小川フミオ氏が試乗し、そのキャラクター性を探った。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
Fペースを表す3つのキーワード
発表いらいずっと注目を集めてきた、ジャガーが手がけたSUV「Fペイス」がついに日本上陸した。高級SUVの人気が高まるなか、先陣を切って発売されたモデルともいえる。日本では2015年に東京モーターショーに出展されて大いなる話題をふりまいてきたモデルだ。Fペイスを支える3本の柱として「グレイス(優美さ)、ベイス(速さ)、スペイス(広さ)」という韻を踏んだキーワードが挙げられているのが興味ぶかい。
Fペイスの“グレイス”という点は、ジャガーのサルーンと共通するスタイリッシュさが印象的だ。SUV(スポーツ多目的車)を謳うものの、前後長を長めにとったルーフに加え、やや薄く感じるキャビンで「クーペ的」とジャガーカーズが表現するスタイルを持つのだ。やはりサルーンに準じる内装は、ダッシュボードやシートの素材など質感を重視したもので、ここにも優美さが感じられる。
“スペイス”は室内空間。4人のおとなには十分すぎるほどだ。フロントシートはやや高めの着座位置のため広々感がある。リアシートは後席重視といってもいいぐらい、ヘッドルームにもレッグルームにも余裕がある。オプションでグラスルーフをオーダーすればリアシートの爽快感はさらに高まる。空が頭上に大きく広がる感覚は新しい世代のリムジンといってもよい。
そして“ペイス”。速さはFペイスの魅力の大きな部分を占めている。日本仕様は3つのエンジンでラインナップが構成される。2リッター4気筒ディーゼル、2つの3リッターV型6気筒ガソリン(340馬力仕様と380馬力仕様)だ。どのパワーユニットもすでに日本では「XE」や「XF」、さらにスポーツカーの「Fタイプ」などで紹介ずみのものだが、どれもすばらしく洗練されていて、全長4,740mmと大ぶりなボディにかかわらず必要にして十分な力を持っている。さらにエンジンによってはそれ以上。余りある力強さがある。
印象ぶかかったのは、ディーゼルエンジン搭載の「F-Pace 20 d」だ。
Jaguar F-Pace|ジャガー Fペイス
ワインディングロードが生んだ英国のSUV (2)
「速さ」をしっかり感じさせる鋭い加速
ジャガーFペイス 20 dのパワーユニットは、さきに「XE 20 d」や「XF 20 d」という新世代のジャガーセダンで紹介ずみだ。430Nmという2リッターとは思えないほどのトルク数値も誇張ではないと感じられる。そんな力強さが記憶に鮮明だが、Fペイスでもかなり印象がよかった。
Fペイス 20 dの魅力は、静かでスムーズで、回転マナーがなめらかな2リッターエンジンに負うところが大きい。始動時から静かでディーゼルエンジン車に乗っていることは失念してしまうほどだ。走り出しのスムーズさは最大トルクを1,750rpmから発生する設定からも納得いく。その先の加速でも、驚くほど軽やかに回る感覚に魅了される。
インジェニアムとよばれる新設計の4気筒ユニットは、走行中はアクセルほとんどオフの状態でも2,000rpmあたりをキープするプログラミングになっている。そこからアクセルを踏み込んでいくと加速の反応の早さはじつに気持ちがいい。5,000rpmあたりまでしゅんっと回っていく快感と、加速の鋭さはまさに「速さ」をしっかり感じさせるのだ。
ハンドリングは意外なほどシャープで、ワインディングロードが得意科目のようだ。Fペイスはすべてのモデルが総輪駆動であるが、ふだんは後輪に90パーセントのトルク配分という設定もあるのだろう、感覚はナチュラルだ。ステアリングホイールを切り込んだときの動きはするどく、アクセルペダルへの反応のよい加速性でもってスポーツドライビングが楽しめる。「ドイツ車はアウトバーンが生み、英国車はワインディングロードが生んだ」とジャガーカーズが言うのも納得する気分になるほどだ。
燃費の公表値はリッター15.8キロと良好。ゴルフなどを趣味とするひとにも、家族での旅行が好きというひとにも向いている。価格はベースグレードの「ピュア」の639万円がスタート。いい買い物といえる。
洗練さに加えてパワフルでちょっと“悪い”感じのV6モデルもまた違う魅力を放っていた。
Jaguar F-Pace|ジャガー Fペイス
ワインディングロードが生んだ英国のSUV (3)
存在感のある黒
ジャガーFペイスのよさは、異なるいくつかの顔を持つことだ。スムーズな走りと空間効率や燃費などのバランスのよさでファミリーユースやビジネスユースに最適な2リッターディーゼルエンジンのFペイス 20 dとはまた異なり、とにかくパワフルでスポーティなハンドリングが光るモデルもある。それが380馬力エンジン搭載の「Fペイス S」である。
試乗したモデルは「アルティメットブラック」と名づけられたフレークの入ったブラックの塗色に加え、グリルもホイールも、ボディ各所がほとんどブラック。全長4,740m、全幅1,935m、全高1,665mという車体ゆえに、かなりの存在感を示す。
実際の走りは外観から期待できるとおり。280kW(380ps)の最高出力に加え、450Nmの最大トルクを3,500rpmで発生する。瞬発力もかなりのもので、車重は1,980kgあるが重さは感じられない。最高出力の発生回転は6,500rpmだし、回転が上がっていくにつれてもりもりと力を出すタイプなのだろうが、どの回転域でもアクセルペダルの踏み込み量に対するフットワークは軽快だ。
スーパーチャージャーの恩恵だろう。エンジン音は弾けるような乾いた快音。とりわけドライブモードで「ダイナミック」を選択し、ギアをSモードにすると、痛快な排気音が運転する楽しみをさらに増してくれる。
Pゼロという高性能タイヤのせいもあるだろう、くいくいと気持ちよく曲がっていく。スポーツカー的とまではいわないが、それでもステアリングホイールの舵角は小さく、長めのノーズが素直にコーナーの内側を向いていく感覚はとてもよい。
高速でのコーナリングではブレーキを使ったトルクベクタリングが働くようになっていてニュートラルに近い旋回特性が得られる。“SUV”の最初のアルファベットがスポーツであることを改めて認識させられるほどだ。価格は981万円で、20 d(たとえば装備が豊富な「プレスティッジ」は663万円)よりだいぶ高価だが、突出したものを求めるユーザーの期待に応える内容だ。
Jaguar F-Pace 20 d|ジャガー Fペイス 20 d
ボディサイズ|全長4,740 × 全幅1,935 × 全高 1,665 mm
ホイールベース|2,875 mm
トレッド 前/後|1,640 / 1,655 mm
重量|1,920 kg
エンジン|1,999cc直列4気筒DOHCターボチャージャー付
ボア×ストローク|83.0 × 92.4 mm
最高出力|132 kW (180 ps)/4,000 rpm
最大トルク|430 Nm (43.8 kgm)/1,750 - 2,500 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
0-100 km/h加速|8.7 秒
最高速度|208 km/h
最小回転半径|5.6 メートル
最低地上高|215 mm
トランク容量|508 リッター
燃費(JC08モード)|15.8 km/ℓ
CO2排出量|139 g/km
価格|(Pure)639万円 (Prestige)663万円 (R-Sport)728万円
Jaguar F-Pace S|ジャガー Fペイス S
ボディサイズ|全長4,740 × 全幅1,935 × 全高 1,665 mm
ホイールベース|2,875 mm
トレッド 前/後|1,640 / 1,655 mm
重量|1,980 kg
エンジン|2,994cc V型6気筒DOHCスーパーチャージャー付
ボア×ストローク|84.5 × 89.0 mm
最高出力|280 kW (380 ps)/6,500 rpm
最大トルク|450 Nm (45.9 kgm)/3,500 rpm
トランスミッション|8段AT
駆動方式|4WD
0-100 km/h加速|5.5 秒
最高速度|250 km/h
最小回転半径|5.6 メートル
最低地上高|215 mm
トランク容量|508 リッター
燃費(JC08モード)|10.1 km/ℓ
CO2排出量|209 g/km
価格|981万円
ジャガーコール
Tel.0120-050-689
http://www.jaguar.co.jp