フルモデルチェンジした新型シトロエン「C3」に試乗|Citroen
Citroen C3|シトロエン C3
フルモデルチェンジした新型シトロエン「C3」に試乗
シトロエンのコンパクトモデル「C3」がフルモデルチェンジし、今年から日本でも販売が開始された。先代の丸いスタイリングから一転し、独特のSUVライクなルックスを得た新型C3に、小川フミオ氏が試乗した。
Photographs by ARAKAWA MasayukiText by OGAWA Fumio
クロスオーバーをシトロエン的に解釈したかたち
Kawaiiという言葉をフランスのパティシエ、ピエール・エルメがコレクションのために使ったのは2003年。その頃すでにあちらでは、この日本独自の美意識が受け入れられるようになっていた。
キャワイイ(とフランス人は発音する)がやはりベーシックコンセプトになっているのかと思ってしまったのが、シトロエンの新型「C3」。
少なくとも日本に住むひとがこのクルマを見たときに口にする感想が“かわいい”である。
17年にフルモデルチェンジを受けたC3。先代も円弧を意識させるルーフラインを持っていて、どちらかというとかわいいクルマだった。
それに対して、新型のプロファイル(横から観たシルエット)はもっと一般的だ。しかしディテールに凝りまくっている。そこにはペイントワークも含まれる。
C3はさきに日本で限定発売された「C4カクタス」と共通するデザインランゲージを使用している模様だ。
それを的確に解釈するのは部外者にはむずかしいけれど、プレスリリースのなかにシトロエンによる記述がある。
「ボリューム感やプロポーションおいてユニークな存在感があること。つまりそれこそがシトロエン デザインです。高く立ち上がったフロントエンドは力強い印象を与えつつ、水平基調のウェストラインへと連続しています」
ようするにSUVとハッチバックのクロスオーバーを現代的に、かつシトロエン的に解釈したのが新しいC3ということなのだろうか。
加えて個性を出すことが求められたため、デザイナーはそのひとつの手段として「エアバンプ」を採用した。
エアバンプは車体側面につけられたエア封入の軟素材。6つの空気入りのポリウレタン製のカプセルが金属の車体に貼られている。さきにも触れたC4カクタスで話題になった手法だ。
加えて試乗車はホワイトのボディ色と、レッドのルーフ色の組み合わせ。自動車デザインの世界はマジメというか、かたちには理由がなくてはならないとされる。
素材も同様だ。なのでペイントで個性を出すのはレースカーを除けば、あまり推奨されていない(はずだ)。
そんななかにあって、MINIやスマートは大胆なカラースキームを採用してきた。スマートは塗り分け部分の素材が使うので従来の考えかたに近いかもしれない。
これらのクルマは市場で好評を博してきたので、新型C3も自信をもって市場に出されたはずだ。自転車やスポーツギアのように心を浮き立たせるカラーリングだから、大目に(!)見るとしようではないか。
もうひとつ印象的なのが走りである。けっしてかわいさだけを売りにしたクルマではないのだ。
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排気量で評価できない、力強い走り
日本市場に2017年7月に導入されたシトロエンの新型C3。1.2リッター3気筒エンジンに6段オートマチック変速機を組み合わせた前輪駆動だ。
全長4メートルを切るサイズで、しかも大きなエアダムとかスポイラーでなく、ぽこぽこと膨らんだエアバンプが特徴。
ちょっと前にはやった言葉でいうと脱力感のある雰囲気をもつ。しかし乗った印象をひとことでいうと、期待以上にパワフルなのだ。
205Nmの最大トルクを1,500rpmでというスペックスは数字的にも悪くないとおもうけれど、実感として力強い走りである。
欧州のコンパクトカーというと、エンジンを高回転域まで回してがんばって走るというケースもあった。
それに対して新型C3はフツーに走れる。しかものんびりと走っている他車はすっと追い越せる。1.2リッター3気筒をむかしの概念で評価してはいけないのだ。
6段トランスミッションがしっかりトルクバンドを保持してくれるのだろう。どの速度域でも加速性は予想以上に良好。高速道路では活発なダッシュ力をみせてくれる。
エンジン回転をあげていったとき、ターボチャージャーの息継ぎ感が目立つようなこともなかった。日常での使い勝手を重視した小径ターボチャージャーのよさがしっかり活きている。
試乗では東京都内から軽井沢まで走ったのだが、パワー不足を感じたことは一度もなかった。
中央自動車道談合坂あたりの上りでも、軽井沢プリンスのあるワインディングロードの上りでも、Dレンジのままぐんぐんと走っていく。
フランスは2040年までに(同国内で?)内燃機関の生産をやめるとしているけれど、その是非はここではさておき、みごとな内燃機関である。
そういえばルノー「トゥインゴ」もいいクルマである。コンパクトカーが熟成している。それなのに世の流れは内燃機関廃止。そこにはパラドクスがあるようにかんじてしまった。
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フルモデルチェンジした新型シトロエン「C3」に試乗 (3)
クルマとしての出来がよい
足まわりの設定もワインディングロードなどを気持ちよく走れる。硬さをかんじないけれど、コーナーでは姿勢も安定。
入り口から出口までしっかりふんばってくれる。ハンドリングは信頼できるのだ。
速度をうんとあげたときはわからないけれど、ふつうに走っているかぎりステアリングの特性はほぼニュートラル。車体の軽いロールを意識しながらカーブを曲がるのも楽しい作業だ。
フランス人のクルマ観として“クルマは道具という割り切り”があげられる、C3も道具としてよくできている。
街中に最適なコンパクトサイズで、流れに乗れる加速性を持ち、燃費も悪くなく、4人の大人が快適にいられるパッケージという点でC3は楽々合格だろう。しかも運転が楽しめる。
シトロエン(と姉妹会社のプジョー)の製品戦略はここ4年ぐらい、大胆なものとなっている。
2013年の「C4ピカソ」あたりから、どれがヘッドランプかわからないフロントマスクになった。おかげですぐにシトロエンとわかる。
ほかと変わっていればそれでよいと思ってはいないだろうけれど、ドイツ車が理知的だとしたら、感覚的なデザイン。次の手(デザイン)が論理的に推理できない。
いっぽうで乗ったときのテイストも、ドイツ車ともイタリア車とも違う。使い勝手はいいのだが、いっぽうでなんとなくやわらかくて、乗ったときに個性を感じる。
電気自動車時代というものが来るにしても、いま、自動車メーカーは従来からのクルマづくりをより洗練させて、いいクルマを作っている。そのよい例だとおもった。
先代C3は頭上までカバーするようなユニークなパノラミックウィンドシールドをもっていた。あの開放感は明確に“内から外へ”デザインした印象だった。
新型でそれはなくなった。ある意味、内と外ががっちりと同じテーマで組み合わされている感じだ。エアバンプと似た形状のエアアウトレットなど、つねに自分がなにに乗っているかを思い出させてくれる。
フロント部分を大きく覆うバンパーと、そこに埋め込まれた補助ランプ、それに「セグメント最大級の直径」をシトロエンが謳うように存在感を強調したタイヤまわり。
新型C3はモデルチェンジによって、印象的にはぐっと若々しくなっている。アピールするポイントがよりはっきりした感じだ。
カワイイといってもクルマはぬいぐるみと違う。感触がいいから、といって好きになるものではない。
日常的に使っていて信頼関係を築けることがなにより重要なのだ。かわいいC3だけれど、なによりクルマとしてよく出来ているのだ。
Citoroen C3 Feel|シトロエン C3 フィール
Citoroen C3 Shine|シトロエン C3 シャイン
ボディサイズ|全長 3,995 × 全幅 1,750× 全高 1,495 mm
ホイールベース|2,535 mm
トレッド前/後|1,480 / 1,480 mm
重量|1,160 kg
エンジン|1,199cc 直列3気筒DOHCターボ
ボア × ストローク|75.0 × 90.5 mm
最高出力|81 kW(110 ps)/5,500 rpm
最大トルク|205 Nm(20.1 kgm)/1,500 rpm
トランスミッション|6段AT(6EAT)
駆動方式|FF
サスペンション前/後|マクファーソンストラット / トーションビーム
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ|205/55 R16
燃費(JC08モード)|18.7 km/ℓ
最小回転半径|5.5 メートル
最低地上高|160 mm
燃料タンク容量|45 リッター
価格|(Feel)216万円 (Shine)239万円
シトロエンコール
0120-55-4106(9:00-19:00、年中無休)