シトロエンDSのデザインを手掛けたフラミニオ・ベルトーニの発想の源とは?|BOOK

シトロエン/フラミニオ・ベルトーニ《シトロエンDSのオブジェ》。1957年ミラノ・トリエンナーレ会場。Photograph by Stellantis

CAR / NEWS
2023年2月3日

シトロエンDSのデザインを手掛けたフラミニオ・ベルトーニの発想の源とは?|BOOK

BOOK|『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』

天才デザイナー、フラミニオ・ベルトーニの生涯をひも解く書が刊行

イタリア在住26年のジャーナリスト大矢アキオ氏が、シトロエンの「2CV」や「DS」のデザインを手掛けた天才デザイナー・彫刻家、フラミニオ・ベルトーニの発想源を解く著書を刊行した。

Text by OPENERS

ベルトーニが残した貴重なデザインスケッチや美術作品等も収録

世界の自動車史を語るとき欠かせないシトロエンの「2CV」や「DS」。それらを手掛けた天才デザイナー・彫刻家、フラミニオ・ベルトーニの61年にわたる生涯を辿りながら、彼の発想源を解く書が刊行された。
ベルトーニは1903年、イタリア北部ヴァレーゼに生まれた。少年時代からイタリア美術に関する書を読み漁るなど向学心に溢れていたが、家庭の事情で学業を断念。15歳で地元のカロッツェリアに見習い工として職を得た。その一方で、ブレラ美術学校ゆかりの芸術家たちのもとで、めきめきと彫刻の腕を磨いてゆく。
1931年、28歳のとき恋人と駆け落ちしたパリで、まだ創業十数年のシトロエン社に就職。画期的な前輪駆動量産車である「トラクシォン・アヴァン」(1934年)のデザインを手掛けて、社主アンドレ・シトロエンの注目を浴びた。かたわらで、みずからの彫刻作品をもってパリのさまざまな美術展で次々と入選を果たしてゆく。
しかしシトロエン社は倒産。加えて第二次世界大戦中は、イタリア国籍を守り通したゆえに2度の勾留生活も体験する。同時に、創作活動に熱中した代償としての家庭環境の不安定、インハウスのデザイナーとしての苦悩といったものも経験した。にもかかわらず戦中・戦後を通じて来たるべきシトロエンの造形を模索していった。
著者は、イタリア在住26年のジャーナリストで、長年にわたりOPENERSのコントリビューターも務める大矢アキオだ。彼は2002年から20年にわたりイタリアとフランス両国で、ベルトーニの子息(故人)も含む当時を知る人物のインタビューを行うとともに、彼による数々の美術作品を検証するなど研究を続けてきた。
それらをもとに、DSの未来的な内外装デザインがけっして突然のイマジネーションではなく、彼の美術作品と深い関わりを擁するものであることを説いてゆく。自動車ファンだけでなく、哲学者ロラン・バルトをはじめとする知識人にも熱心な崇拝者を生み出したのは、まさにそうしたベルトーニの深い美的センスが存在したからであることが分かる。
彼が同様にデザインした1961年「シトロエン・アミ6」のキッチュともいえるデザインにも、実は論理的なものが隠されていることも興味深い。加えて、ベルトーニが構築したシトロエンのデザインランゲージが、彼の没後どのように継承されていったかについても触れられている。
文中にはベルトーニが残した貴重なデザインスケッチや写真の他、美術作品も多数収録されている。
ベルトーニの生きざまと仕事への情熱は、カーデザインのみならず、デザイン活動に携わるすべての人にとって、大きな指標となることは間違いなかろう。
フラミニオ・ベルトーニの作品群と『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』の著者、大矢アキオ。ヴォランディア航空公園博物館で
『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』
著者|大矢アキオ
発行|三樹書房
定価|3600円(税別)
                      
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