新型メルセデス・ベンツ「Eクラス カブリオレ」に試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz E Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ E クラス カブリオレ
快適で安逸、しかし刺激もある
2016年にフルモデルチェンジを受け、5世代目へと進化したメルセデス・ベンツ「E クラス」。その5番目のモデルとしてデビューしたばかりの「E クラス カブリオレ」に、小川フミオ氏が試乗した。
Text by OGAWA Fumio
2台ぶんの美を楽しめる
メルセデス・ベンツが「Eクラス カブリオレ」を発表し、欧州で試乗会が開かれた。
Eクラスではセダン、ステーションワゴン、クーペ、そしてオールテレイン(日本未発売)につぐ5番目の車種であり、ラインナップにおいて最もエレガントなモデルだ。
Eクラス カブリオレの特徴は、爽快なオープンドライブを味わえるところにある。50km/hまでなら20秒でフルオープン。新型は室内に余裕が生まれて、大人4人も快適に乗れるようになっている。
もうひとつの特徴は先進的安全装備と、運転支援技術の充実ぶりだ。快適と安全ともに視野に入れた技術として注目に値する「マジックビジョンコントロール」は、このクルマで初採用である。
これまでメルセデス・ベンツは乗用車ベースの4人乗りフルオープンとしては、「S クラス カブリオレ」と「C クラス カブリオレ」(ともに2016年発表)をラインナップに持っていた。
Eクラス カブリオレは豪華さではS クラスに迫り、軽快さではC クラスと肩を並べるような、ユニークな存在感が光るモデルだ。
試乗会が開催されたのは、2017年6月も終わり頃の欧州。スイスとイタリアとフランスが国境を接する山岳地帯のリゾートが舞台だった。
試乗したのは「E 400 4MATIC カブリオレ」と、「E 300 カブリオレ」。前者は245kW(333ps)の3リッターV6エンジンにフルタイム4輪駆動。後者は180kW(245ps)の2リッター4気筒の後輪駆動だ(本国のラインナップはディーゼルもAMGもあり豊富)。
夏の短い欧州ではオープンドライビングを好む傾向が強い。日本では夏に向いていないけれど、残りの3つの季節を楽しめるという、クーペやセダンにはない“機能”もまたカブリオレの魅力だ。
メルセデス・ベンツは戦前からパッドが詰まった耐候性の高いカブリオレに力を入れてきただけあって、幌の作りはいいし、なによりエレガンスとスポーティ性をうまくバランスさせている印象だ。
E クラス カブリオレは大きなスリーポインテッドセンターを中央に据えたいわゆるスポーツグリルを持ちながら、伸びやかにリアへと続くキャラクターラインは流麗。
幌を開けたとき開口部の大きなスタイルは古典的ともいえるいっぽう、クローズドでは薄く見える幌が大型のクーペのような印象を与えてくれ、幌を上げたときと下ろしたときとで2台ぶんの美を楽しめるとさえいえる。
走りの性能ぶりは、うれしい驚きだった。
Mercedes-Benz E Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ E クラス カブリオレ
快適で安逸、しかし刺激もある(2)
クルマを超越した乗りものを操縦している気分になる
メルセデス・ベンツが2017年夏に国際試乗会を開催したEクラス カブリオレ。25年前に「300CE-24」が発表されて以来、連綿とモデルチェンジが繰り返されてきたロングセラーだ。
途中、主要市場での法規制改定などがあり、1980年代はカブリオレにとって冬の時代だった。そこにあってもメルセデスはぶかっこうなロールオーバーバーなど絶対に採用せず、新しい技術を果敢にとりいれてセダンベースのカブリオレを作り続けてきた。
そういう筋金入りのカブリオレである。スタイルについては先に触れたとおりで、もうひとつ、豊かな経験が活きていると思わせられるのがボディ剛性を含めた操縦性の高さだ。
ワインディングロードとハイウェイでの試乗が中心だったが、感心させられっぱなしだった。アルミニウムとスチールを複雑に組み合わせ、剛性感、軽快感、それにボディのロールコントロールを含めた操縦性にいたるまで、じつに印象に残るドライブになったのだ。
「E400 4マチック」は480Nmの最大トルクを1,600rpmと低い回転域から発生する設定だ。力強さには舌を巻く。ごくわずかなアクセルペダルの踏み込み量に反応して加速するうえに、メーカーが用意した資料を読むとシフトアップは通常2,000rpm以下で行われるそうだ。
燃費効率を考えて高めのギアを選択しているにもかかわらず、トルクが細くなるところが皆無である。クルーザーを思わせるぜいたくな室内でステアリングホイールを握っていると、あまりのスムーズぶりからクルマを超越した乗りものを操縦している気分になってくるほどだ。
試乗車はどれもランフラットタイヤを装着していたが、「エア ボディ コントロール」というフル エア サスペンションシステム(オプション)を備えたE 400 4MATICでは乗り心地はじつにしなやかである。ゴツゴツ感は皆無。
「E 300 カブリオレ」の場合、ランフラットに金属バネの組み合わせだった。こちらは低速の街中走行ではゴツゴツとはっきりわかる。乗り較べれば気になるといえるけれど、速度が上がるとフラット感が強くなるため、いっさいに気にならなくなる。
E 300 カブリオレは車名から想像しにくいが2リッター4気筒エンジン搭載だ。最大トルクは370Nmもあり、それが1,300rpmから得られのだから、実用上ほとんど不満はない。かつて小さな排気量の車種は“燃費モデル”と揶揄されたものだが、2リッターのE 300 カブリオレに不足感はないだろう。
ほんとうのぜいたくさはこういうものだというのが、E クラス カブリオレである。
Mercedes-Benz E Class Cabriolet|メルセデス・ベンツ E クラス カブリオレ
快適で安逸、しかし刺激もある(3)
風の巻き込みが極端に少ない
Eクラス カブリオレのよさは多岐にわたっている。そこがメルセデスのすごいところだ。BMWだと楽しめるクルマだということをシャープに設定したステアリングで主張したりするだろうか。
トルクがたっぷりあるエンジンフィールだけでなく、走らせての楽しさはワインディングロードで強く感じる。
ほかのモデルと同様、コーナーの大小を選り好みしないのがメルセデスの長所である。つまりたとえタイトコーナーでもしっかりと足を踏ん張りながら、驚くほど早い速度で抜けていく。
ゆるやかな姿勢変化と確実なステアリング。コーナーの入り口から途中、そして出口に向けて加速していくときに最適なトルクが得られるよう9枚のギアから最適なものを選んでいるのだろう(9段オートマチックだ)。力強い感覚が途切れない。
同時にカブリオレは快適だ。このクルマは風の巻き込みが極端に少ない。ウィンドシールド上端が前席乗員の頭の上あたりまできていることもあるだろう。
そこにはまた「エアキャップ」という風の巻き込みを防ぐ一種のスポイラーが備わり、効果的に役目を果たしている。
後席背後にもウィンドストップなるスクリーンが出せる。ボタン操作による電動でするするっと立ち上がり、風を後席に巻き込まない。
フルオープンで風にあたるのが好きという人もいるだろうし、いっぽうでヘアスタイルの乱れを気にする人もいるかもしれない(というか絶対にいる)。
どちらにも対応できるのが新型Eクラス カブリオレの万能選手たるゆえんだ。もうひとつオープン走行時に嬉しいのが、今回新採用された「マジック ビジョン コントロール」。下向きに洗浄液を噴射するウォッシャー内蔵のワイパーである。
ウィンドシールドの汚れをとろうとウォッシャーを使うとオープンモデルでは往々にして乗員まで噴射液がかかることがある。その“被害”を最小限に抑えようというのが狙いだ。
快適装備でいえば、室内の各所に使われる照明の色に変化をつけるアンビエントライトにも、メルセデスは積極的だ。オプションでは64色というものもある。
運転支援技術も先進的安全装備も充実していて、快適に安逸に、しかし刺激もあるという、よく出来たクルマに仕上がっているのだ。