新型ポルシェ911 タルガ 4Sに試乗|Porsche
CAR / IMPRESSION
2016年10月17日

新型ポルシェ911 タルガ 4Sに試乗|Porsche

Porsche 911 Targa 4S|ポルシェ911 タルガ 4S

しっかりしたスポーツレーシングカーの味わい

ポルシェのクルマづくりの哲学は健在

ターボ化された新エンジンが注目の「991(コードネーム)II型」ポルシェ911。なかでもオープンエアの爽快感と実用性が絶妙に融合した「タルガ 4S」に小川フミオ氏が試乗した。

Photographs by ARAKAWA MasayukiText by OGAWA Fumio

トルク配分制御プログラムがより緻密

ポルシェならではの楽しみは、順列組み合わせにある。新しいエンジンを得たニュー911シリーズも、後輪駆動の「カレラ」から「ターボ S カブリオレ」まで車種展開は幅広い。エンジン、駆動方式、ボディ形状などが好みで組み合わせられるぐらいバリエーション豊富だ。加えてレーシーな「R」や「GT3 RS」も用意される。そのなかでも実用性を念頭に選ぶと、「911タルガ 4S」は、高速性、走行安定性、そして爽快感において最も好ましい組み合わせのモデルといっていいだろう。

タルガはそもそも1965年に設定された仕様。魅力はオープンの爽快感とクーペの堅牢性を両立させたところにある。加えてタルガバーとよばれるリアのピラーと、大きく湾曲したリアウィンドウが美しいスタイルだ。

911シリーズの新しい心臓となった3リッター水平対向6気筒エンジンを搭載。前後のトルクスプリッターに電気油圧制御多板クラッチを使ったフルタイム4WDシステムが組み合わされる。272kW(370ps)のタルガ4より37kW(50ps)高い309kW(420ps)の最高出力を発生するのが“S”の特徴だ。

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全長4,499×全幅1,852×全高1,293mm。ホイールベースは2,450mm

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車重は1580kg

エンジンが新しくなったのにともない、今回のモデルでは4WDシステムにも改良が加えられた。高速道路など負荷の少ない走行状況ではトルクは後輪にほぼ100パーセント。路面や走行状況によって前輪へのトルク配分が後輪よりも多くなることもあるようだ。新しいエンジンを得たいわゆる「991(コードネーム)II型」では前後のトルク配分を制御するプログラムが緻密になっている。軽負荷、無負荷時には燃費改善のためフリクションの低減がはかられる一方、加速時にはよりスポーティなキャラクターが強化されているのだ。

アクセルペダルの踏み込み量が多くなるときは、タイヤの駆動力を最大化するようコンピューターによる最適な制御が入る。いたずらにフルパワーを路面に伝えるのでなく、路面状況などに応じて前後輪に最適なトルクをかける。そのため結果的により速く走れるのだ。そのためカレラ2よりカレラ4の方が、優れた加速性能を実現している。

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水平対向6気筒エンジンは可変バルブタイミングシステム(インテーク/アウトレット側)および可変バルブリフトシステム(インテーク側)を備える

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スチール製のロールオーバーバー

試乗車はオプション(37万9,000円)の「スポーツ クロノ パッケージ」を備えていた。ダンパーの減衰力調節やスロットル制御を司るため、マニュアルで好みに応じてスポーティな設定を行える。このあたりは快適性を追求しつつ、同時にスポーツカーメーカーの矜恃を捨てていないポルシェの大きな魅力になっている。

オーナーに嬉しいのは「スポーツ クロノ パッケージ」でステアリング ホイールの右下に小さな円形ダイヤルが備わったことだろう。回転させて「ノーマル」「スポーツ」「スポーツプラス」「インディビデュアル」という4つのモードが選択できるのだ。さらにすばやい追い越しのために「スポーツ レスポンス スイッチ」が設定されている。マニュアルによるシフトなしに自動的に加速に最適なギアが選択される仕組みだ。加速用のギアは20 秒間ホールドされる。

装備もかなり充実している。

Porsche 911 Targa 4S|ポルシェ911 タルガ 4S

しっかりしたスポーツレーシングカーの味わい

ポルシェのクルマづくりの哲学は健在 (2)

安全装備もそれなりに充実

新しいエンジンを得たポルシェ9 11タルガ 4Sは2016年1月に日本市場に投入された。3.8リッター6気筒エンジン時代のタルガ4Sは294kW(400ps)/7,400rpmの最高出力と、440Nm/5,600rpmの最大トルクを持っていたのに対して、新世代は2,981ccにダウンサイジングされたいっぽうターボチャージャーを装着して309kW(420ps)/6,500rpmと500Nm/1,500-5,000rpm となる。

価格も1,825万円(2015年4月)から1,913万円(2016年10月現在)へと引き上げられている。新しくなった点も少なくない。「リア アクスル ステアリング」と呼ばれる後輪操舵システムは新しくなる一方、ブレーキは強化されドライバビリティは向上。電子制御可変ダンパーを持つ「PASM(ポルシェ アクティブ サスペンション マネージメント)」採用で運転状況に応じて自動で減衰力を調整。加えてグラウンドク リアランスを調整できることで実用性の向上が謳われている。

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最高速は303km/hと発表されている

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フェンダー、ドア、トランクリッドおよびエンジンフードにアルミニウムを使用

スタイリング上はフロントとリアの意匠変更がまずあげられる。ヘッドランプには4個のLEDによる「ウェルカム ホーム ライト」が備わる一方、リア コンビネーション ランプはより立体的な造型となった。加えて4個のブレーキランプが装備されている。内装は基本的にダッシュボードの色を上下で分けるなどおなじみともいえる意匠が継承されている。一方「コネクト プラス」というインフォテイメントシステムは進化。オンライン ナビゲーション、Apple CarPlay、テレフォンモジュール、コネクトアプリなどが使えるようになった。

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サスペンション形式はフロントはマクファースン・ストラット、リアはマルチリンク

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より立体的なデザインとなったテールランプ

リアルスポーツカーを標榜するだけあって911は自動運転化に慎重だが、安全装備はそれなりに増えた。衝突後の二次被害軽減を図った「ポスト コリジョン ブレーキング システム」と、オプションで「レーン チェンジ アシスト」が用意されている。後者はレーダー センサーを使うシステムで、走行中ドライバーの死角となる左右の後方をモニターする。30km/hから250km/hの範囲で、隣のレーンを走る車を検知すると、その存在をドアミラー内蔵のLEDランプで知らせるというものだ。ないよりはあったほうが便利なシステムである。

最大の魅力であるタルガトップの機構自体に変更はない。911タルガ 4Sはリアグラスが大きくスライドしてそこにトップが収まるという凝った仕組みだが、要する時間は約19秒と短い。天気がころころ変わる欧州のような土地では短い開閉時間はじつに嬉しい。

操縦するとほれぼれするような楽しさだ。

Porsche 911 Targa 4S|ポルシェ911 タルガ 4S

しっかりしたスポーツレーシングカーの味わい

ポルシェのクルマづくりの哲学は健在 (3)

加速感覚はスポーツカーそのもの

ポルシェ911タルガ 4Sのよさは重厚さだ。最高速はいうにおよばず、発進も中間加速もダッシュ力はかなりのものだ。とりわけスポーツ クロノ パッケージ装着モデルでは静止から100km/hまで加速するのに3.8秒しかからない(従来の3.8リッターモデルに対してコンマ3秒短縮)。それでいながら軽量スポーツカーと違い、重めの設定のステアリングホイールが独特のキャラクターになっている。

ひらりひらりと動く感じではなく、しっかりしたスポーツレーシングカーの味わいなのだ。500Nmものトルクと軽々と吹き上がるエンジンのせいで、とくにコーナリングなどではある程度慎重な運転を心がけたほうがいい。重めのステアリングホイールはそのことをドライバーに無意識にわからせてくれるのだ。意識的に早いステアリングホイール操作をすればクルマは頭がしびれるぐらい快感的な動きを見せる。あるステップを超えると性格が変わる。昔から感じるポルシェのクルマづくりの哲学のようなものが健在なのだ。おとなっぽいクルマである。

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スパイダー由来のステアリングホイールにモードスイッチが備わる

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ノーマル、スポーツ、スポーツ・プラス、インディビデュアルの4 つのモード

エンジン回転を上げていったときのフィールは何にも増してすばらしい。高速道路ではカーブが連続するような道とはまた違い、圧倒的な加速感に加え、ステアリングホイールから伝わる安心感と、車体の動きの安定感が見事にバランスしていると感じられる。最高出力は6,500rpmで発生というだけあって、エンジンを回せば回すほどぐいぐいと加速していく感覚はスポーツカーそのものだ。

ワインディングロードでとばしたいときはステアリングホイールの「スポーツ クロノ パッケージ」のロータリースイッチでスポーツを選ぶといいが、高速道路ではノーマルで必要にして十分。7段PDKのシフトアップタイミングはやや速くなるといっても、急な加速をふくめて最適なギアを選ぶときのレスポンスは鋭い。なんの不満もない。

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PDKのシフターは手前に引くとシフトアップし、押すとシフトダウン

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エンジンはツインターボチャージャーを備える

タルガトップを開け、サイドウィンドウを下げて走ると、高速では風の巻き込みが想像よりは大きかった。勝手にそうとう無風状態で走れるだろうと思っていたせいで意外だった。しかしオープンにすれば、タルガだって風を巻き込むのは理の当然である。それを楽しめばいいのだ。

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Porsche 911 Targa 4S|ポルシェ 911タルガ 4S
ボディサイズ|全長 4,499 × 全幅 1,852 × 全高 1,291 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,552 mm
トランク容量(VDA値)|フロント125リッター
重量(DIN値)|1,600 kg
エンジン|2,981 cc 水平対向6気筒 直噴DOHC ツインターボ
圧縮比|10.0 : 1
最高出力| 309 kW(420ps)/6500 rpm
最大トルク|500 Nm/1700〜5000 rpm
トランスミッション|7段ツインクラッチ(7PDK)
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
ブレーキ 前 / 後|ベンチレーテッドディスク
最高速度|301 km/h
0-100km/h加速|4.2 秒(SPORT PLUS buttonの場合 4.0秒)
0-160km/h加速|18.7秒(SPORT PLUS buttonの場合 8.4秒)
最高速度|301km/h
燃費(NEDC値)|8.0 ℓ/100km
CO2排出量|184 g/km
燃料タンク容量|68 リッター
価格|1,913万円

問い合わせ先

ポルシェ カスタマー ケアセンター

0120-846-911

           
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