新型ベントレー ミュルザンヌに試乗|Bentley
Bentley Mulsanne|ベントレー ミュルザンヌ
新型ベントレー ミュルザンヌに試乗
よりスポーティになったフラッグシップサルーン
今年3月のジュネーブモーターショーでお披露目された新型「ミュルザンヌ」。ベントレーによる最新のフラッグシップモデルの進化を確かめるべく、オーストリアはインスブルックで開催された国際試乗会で九島辰也が試乗した。
Text by TATSUYA Kushima
フロントの意匠がよりアグレッシブに
自身初のSUV「ベンテイガ」の登場で販売台数を伸ばしているベントレー。新たな領域に足を踏み入れたと言っても過言ではない。つい数年前まで、誰が背の高いベントレーを想像したであろうか。
その勢いに乗ってか、続いて進化を遂げたのがこの「ミュルザンヌ」である。ベントレーのフラッグシップモデルが、かなりイメージを変えて降臨した。
とはいえフルモデルチェンジではないので、パワートレーンに大きく手を加えてはいない。お馴染みの6.75リッターV8ツインターボは健在で、500psオーバーのパフォーマンスを見せる。標準で512ps、スピードで537ps。それぞれ最高速度は296km/h、305km/hに達する。もはやスーパーカーの数値だ。今回ここではZF製8段ATのプログラミング変更だけにとどまる。
それじゃどこが変わったかというと、まずはフロントの意匠。これまでちょっと上品顔だったそれがかなり攻めの印象となった。左右に80mm広がったミュルザンヌ初採用の縦縞グリルと、ダイヤモンドの輝きをLEDで再現したというヘッドライトが雰囲気をつくる。
ただ、この縦縞の奥にマトリクスグリルが潜んでいるのを見過ごしてはならない。レーシーなスピリットはそこで表現される。左右の小さいライトはデイライトで、センターのボディ同色の円形が飛び出てヘッドライトにウォッシャー液をかけるというワザありだ。バンパーも大きく変わり、下部でグリルの形状をつなげる。しかもグレードによってディテールを変えているのだから恐れ入る。
Bentley Mulsanne|ベントレー ミュルザンヌ
新型ベントレー ミュルザンヌに試乗
よりスポーティになったフラッグシップサルーン(2)
進化したインターフェイスに驚く
国際試乗会の舞台となったのはオーストリアのインスブルックである。冬季オリンピックが行われたことのあるスキーリゾートといえばご記憶の方もいらっしゃるだろう。そこで、ドイツ国境を超えミュンヘン近くまで行きUターンするというコース。試乗車は標準車となるシグネチャーモデルとハイパフォーマンス版の「スピード」であった。
実際にクルマに接して驚いたのは、インターフェイスの進化。これまで若干遅れがちだったそれが是正された。感覚的に操作できるタッチスクリーン式8インチモニターや後席用のタブレット型デバイスが搭載される。この10•2インチタブレットはアプリ次第でいろいろ活用できそうだ。
また、走行に関する電子デバイスが追加されているのも見逃せない。まわりの状況でヘッドライトの照射距離を変えるアダプタブルヘッドライトやブラインドスポットワーニング、それとアドバンスクルーズコントロールなどである。もはやライバル車には装備されているものだけに新鮮ではないが、あると便利なのは確か。ベンテイガでデフォルトになったものがこうして採用されるようになった。
では実際に走らせた印象だが、ハイパフォーマンスモデルとなるスピードの印象が強くミュルザンヌ全体でスポーティになったように感じさせる。というのも、エアサスペンションの設定が従来よりもスポーティで、ドライブモードをコンフォートにしてもこれまでのような柔らかさはなくなったからだ。もちろん、それでも硬すぎることはなく、お尻に段差の突き上げを感じはしない。その辺はまさにマジックで、ベントレーならではの一日の長といえるだろう。
Bentley Mulsanne|ベントレー ミュルザンヌ
新型ベントレー ミュルザンヌに試乗
よりスポーティになったフラッグシップサルーン(3)
おいしいところ取りの“B”モード
そのエアサスの設定には“B”モードがあるのも重要なポイントといえる。これはベントレーが推奨する乗り心地を表現したもので、オートマチックにスポーツとコンフォートを切り替える。要するに、おいしいところ取りだ。1人でワインディングを走っているときは“スポーツ”でいいが、乗員がいたらこちらをお勧めする。今回の試乗でいろいろと試してみたが、そんな結論に至った。
ホイールサイズはシグネチャーモデルが20インチ、それ以外は21インチとなる。デザインはそれぞれ専用。無論この大径が直接的に乗り味を変えることはない。繰り返しとなるが、ベントレーのサスペンションセッティングは絶妙である。
といったのが今回のインプレッションだが、空港からホテルまでの送迎に使われたショーファードリブン用にホイールベースを延ばしたエクステンデッド(日本への導入予定はない)も忘れられない一台となった。というのも、リアコンソールのバルクヘッド側にシャンパンクーラーが装備されていたからだ。しかもグラス込み。こんな装備が似合うのもまさにベントレー。自然と「地上のファーストクラス」なんてワードが頭に浮かんでくる。いやはやお見事である。