ランボルギーニ・ウラカンLP580-2にモトGPのコースで試乗|Lamborghini
CAR / IMPRESSION
2016年5月18日

ランボルギーニ・ウラカンLP580-2にモトGPのコースで試乗|Lamborghini

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

ランボルギーニ・ウラカンLP580-2にモトGPのコースで試乗

ランボルギーニの美点を凝縮

2014年のデビュー以来、好調なセールスを記録し、今やランボルギーニの屋台骨ともいえる「ウラカン」。同モデルに後輪駆動の「ウラカンLP580-2」が追加された。オーストラリアのフィリップアイランドサーキットで開催された国際試乗会から、自動車ジャーナリスト小川フミオ氏がリポートする。

Text by OGAWA Fumio

まさにザ・スポーツカー

スポーツカーの基本形は、スタイルがカッコよくて、エンジンが気持ちよく回って、後輪駆動であること。その定義がこの時世も通用するなら、ザ・スポーツカー、このクルマこそまさにスポーツカーといえるのが、ランボルギーニ「ウラカンLP580-2」だろう。従来のフルタイム4WDスポーツ、「ウラカン LP610-4」に追加で登場したのは2015年11月のことだ。

5.2リッターV型10気筒エンジンをミドシップし、後輪を駆動するウラカンLP580-2。ランボルギーニのカテゴライズによると、「ウラカンのラインナップは3つに分けられる」となる。同社で研究開発部門の技術プロジェクトリーダー長を務めるリカルド・ベッティーニ氏は、「パフォーマンス(真のスポーツ)はLP610-4、ライフスタイルはLP610-4スパイダー、そしてファン・トゥ・ドライブはLP580-2」と教えてくれた。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

車名が表すとおり、馬力は四輪駆動版に較べると少し抑えめ。サスペンション設定も、「リアのスプリングレートは少しソフトにして、後輪の接地性を確保することを重視しています」とベッティーニ氏は言う。「ステアリングもクルマの挙動変化を知る最初の手がかりとなるものなので、ステアリングラックのカリブレーションを(LP610-4とは)変えて、よりダイレクトに手の平に伝わるようにしました」。

ジャーナリスト向け試乗会が行われたのは、豪州メルボルンからクルマで90分ほどのフィリップアイランド。江ノ島のように橋でつながっている。そこにあるフィリップアイランドサーキットはモトGPのコースでも知られている。アップ&ダウンやブラインドコーナーもあるテクニカルなコースなのだが、スポーツカーも比較的高い速度での走行ができる。ウラカンLP580-2の楽しさを伝えるのに格好の舞台というのだ。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

ランボルギーニ・ウラカンLP580-2にモトGPのコースで試乗

ランボルギーニの美点を凝縮 (2)

後輪駆動スポーツのナチュラルなよさ

ウラカンは、ランボルギーニの好調なセールスを支える屋台骨だ。2015年の販売成績がその前年に対して28パーセントも伸びたのは、ウラカンの生産ラインがフル稼働したから、とランボルギーニ広報担当者は話す。アジア・パシフィックリムでは中国が最大のマーケットである一方、日本と豪州の伸びは大きく注目するものがあるというのだ。

「小さな田舎の会社から国際的なスポーツカーメーカーへと成長した」。ランボルギーニの社員がことあるごとに言うせりふだ。親会社は異なっても、いまも企業のDNAのなかにはスモールカンパニーとしての気概というものがあるようだ。それゆえ、「売り上げの20パーセントは研究開発費に回し、30パーセントの技術は2年以内に量産車に反映」という小回り性を強調しているのである。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

LP580-2は操縦すると、そんなランボルギーニの美点が凝縮しているように感じられる。コストダウン(拡販)のために後輪駆動を作ったのでない、というランボルギーニ技術者の主張がよく理解できる。フィリップアイランドのサーキットで最初のコーナーを曲がったときに、軽い!と感心。そこからアクセルペダルを踏みこんで加速していくときのダッシュ力も、すごく素直で気持ちがいい。昔のスポーツカー、というと荒っぽいととられてしまうかもしれないが、ハイテクでガチガチに武装した現代のスーパースポーツとは違う、後輪駆動スポーツのナチュラルなよさがしっかりある。

最大トルクの540Nmは6,500rpmでという高回転型エンジンだが、トルクの75パーセントは1,000rpmで得られるという。580ps (427kW)の最高出力は8,000rpmという。要するに回して楽しいエンジンなのだが、いっぽうで、ごくわずかなアクセルペダルの踏み込みに対しても鋭く反応する。エンジンの許容量は大きく、マニュアルでギアを操作していても、極端なことをいえば何速に入っていようが、どこからでも見事な加速を味わわせてくれる。

それでいて、パワーが出ていくカーブはきわめて自然なフィール。どんどんパワーが積み上がっていき、速度が上がっていく感覚は、ターボチャージャーでなく自然吸気のエンジンだからだろう。前出の技術開発部門のボッティーニ氏も、「ターボを持たない大排気量エンジンこそこのクルマの真骨頂」としている。ターボ化の進む今となっては、まことにぜいたくな味を持っているといってよい。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

ランボルギーニ・ウラカンLP580-2にモトGPのコースで試乗

ランボルギーニの美点を凝縮 (3)

運転好きだったらLP580-2

ウラカンLP580-2は、LP610-4より33kgの軽量化を成し遂げている。減量と、さきに触れたサスペンション設定の見直しや、ステアリングラックの最適化などで、明らかに別のクルマとして完成している。高速走行が多い人は全天候型のLP610-4(2,971万960円)がいいかもしれないけれど、運転好きだったらLP580-2(2,535万840円)という選択がいいだろうと思う。

エクステリアとインテリア、あらゆるところに六角形のモチーフが見つけられる、細部まで凝りに凝った造型感覚は、実際のクオリティ感と相まって、いいもの感がとても高い。素材と造型への強いこだわりこそハイクオリティであるというテーゼは、クルマにもあてはまるとランボルギーニに接していると強く感じられる。しかもたとえばエンジンスターターは赤く塗装されたカバーを開けてなど、クルマ好きなら心が躍るような演出も随所に見られる。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ・ウラカンLP580-2

演出といえば、たんに視覚にとどまらず、ウラカンの存在自体にかかわってくるほど重要なのが「アニマ」と呼ばれるドライブモードセレクターだ。ステアリングホイールに設けられていて、ストラーダ(一般道)、スポルト、そしてコルサ(レース)と選べるようになっている。ストラーダでも十分すぎるほどの性能ぶりなのだが、サーキットでスポルトを選択するとエンジン回転が上がり、ステアリングホイールは重くなり、スポーツカーとしてのしっかり感のようなものが増すのがわかる。

コルサは究極で、アクセルペダルの微妙な動きに対してもエンジンは繊細に反応して、パワーを後輪へと送り出す。安全性のマージンは低くなり、リアのコントロールはドライバーにゆだねられる部分が多くなるのだ。ウラカンには3軸のジャイロセンサーが備わっており、車両の挙動を常にチェックしてコンピューターを通じて出力を制御する。その範囲がストラーダなら絶対安心、スポーツなら楽しさが増え、コルサはクルマとドライバーが対話する領域が増えるということができる。

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Lamborghini Huracan LP 580-2|ランボルギーニ ウラカン LP 580-2
ボディ|全長 4,459 × 全幅 1,924 × 全高 1,165 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,668 / 1,620 mm
車輛重量|1,389 kg
エンジン|5,204cc V型10気筒
ボア×ストローク|84.5 × 92.8 mm
最高出力| 427 kW(580 ps)/8,000 rpm
最大トルク|540 Nm/6,500 rpm
トランスミッション|7段LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン
タイヤ 前|245/35R19
タイヤ 後|305/35R19
ブレーキ 前|ベンチレーテッド φ365 × 34 mm
ブレーキ 後|ベンチレーテッド φ356 × 32 mm
最高速度|320 km/h
0-100km加速|3.4 秒
0-200km加速|10.1 秒
燃費(EC値)|11.9 ℓ/100 km(およそ8.4km/ℓ)
CO2排出量|278 g/km
価格(消費税込み)|2,535万840円

           
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