ランボルギーニ ウラカン国内初試乗|Lamborghini
Lamborghini Huracan LP610-4|ランボルギーニ ウラカン LP610-4
次の50年に向けての、ランボルギーニのあらたな方向性
ランボルギーニ ウラカン国内初試乗
今年3月、ジュネーブモーターショーでデビューを飾った「ウラカン」が、はやくも日本上陸を果たした。ランボルギーニ史上最高のセールスを記録した「ガヤルド」の後継として、10年振りに登場したニューモデルを今回、西川 淳氏がテストドライブ。長年に渡り同社の活動を取材し続けてきた氏にとって、新世代ベイビーランボはどう映ったか。ランボルギーニオーナーならではの視点で、ウラカンを斬る。
Text by NISHIKAWA JunPhotographs by NAITO Takahito
ガヤルドよりギュッと凝縮してみえる
ランボルギーニの新型主力モデル「ウラカン」がついに上陸、日本のナンバープレートを付けて走り出した。
ヨーロッパですでに400キロ以上を試し済みの筆者であっても、ランボルギーニの新型車を日本で改めて試すという機会には、いつもワクワクしてしまうもの。“乗り慣れた道”を走ってみることで、あらたな発見もあるはず……。
試乗車はグリジオ・リンクスというガンメタリック系ボディカラーで、インテリアコーデをブラウンとブラックのバイカラーとした、渋めの仕様だった。個人的な意見だけれども、イマドキのスーパーカーには、落ち着いたカラーコーデの方が似合うとおもう。
丸い形と色めの影響もあるだろうか。日本の路上で見ても、さほど大きくは思えない。しっかりとした直線の枠組みをもつガヤルドより、わずかに全長と全幅が増しているにもかかわらず、ギュッと凝縮してみえる。全高はおなじながら、さらに平べったい印象だ。
ロックを解除すると、ドアノブバーが飛び出た。それを握りしめてドアを開けるわけだが、初めて見る人はけっこう驚く。スーパーカーらしい演出。
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ランボルギーニ ウラカン国内初試乗 (2)
変速パドルが大型になった
乗り込むと、そこに広がる空間は、ガヤルドはもちろんのこと、最新のフラッグシップ「アヴェンタドール」ともまったくちがう雰囲気だ。センターよりに全てが凝縮して配置されていて、ちょっと煩雑な気もするが、見栄え質感はかなり高い。高級ラグジュアリーカーのレベルに達している。
ガヤルドとは比べものにならないほど、モダンになった。液晶技術をフルに使ったメーターパネルも、小ぶりだが見やすい。個人的には、変速パドルが大型になったことが嬉しい。ガヤルドのパドルは使いづらくて仕方なかった。
もっとも、この大型パドルを採用したせいで、ウィンカーレバーやワイパーレバーがその陣地を失い、ステアリングホイールの左右のステー上に移設されてしまった。“ハンドルにはホーンボタン以外何も要らない”派ゆえ、開発責任者に文句を言ったら、「F1マシンにだっていっぱい付いているし、それにガヤルドのパドルが使いづらいとさんざっぱら文句を言ったのは君の方じゃないか」と、切り返されてしまった。うーん。
ステアリングホイールにはもう一つ、六時のステーに大切なスイッチが付いている。
ANIMA(アニマ、イタリア語でソウル=魂の意)とランボルギーニが呼ぶ、ドライブモードのセレクタースイッチだ。エンジンやミッション、4駆システム、ブレーキ関連システム、シャシー&サスペンションシステム、パワーステアリング、といった走行にまるわる全てを統合電子制御することで、ストラーダ(一般道)・スポーツ・コルサ(サーキット)という3つのことなるライドキャラクターを実現するもの。
ウラカンのポイントとしては、オプションの磁性流体ダンパーを装備すればダンピングも統合制御されるという点を挙げたい。
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ランボルギーニ ウラカン国内初試乗 (3)
あらたに採用されたデュアルクラッチミッション
エンジンスターターボタンを押す。コールドスタート時には迫力の“目覚めサウンド”が響く。住宅街のガレージでは、少し迷惑なボリュームか。しばらくして暖まってくればトーンダウンする。まずはアニマをストラーダにして、出発した(ちなみに、このアニマボタンがまた使いづらい!)。
左手の親指でウィンカー操作。慣れないと、特に“右だし”が難しい。ウィンカー → 曲がるという行為を慎重におこなわせるという意味では、有効かも知れない。
走り出した瞬間に、やっぱり乗り心地のいいクルマだったと感心した。ヨーロッパで乗ったときもそうおもったが、とにかく4輪がキレイに動いているという印象が強い。低速域でも、凸凹やアンジュレーションを見事にいなして、硬質だけれどもフラットなライドフィールを引き出している。
ひたすら強固なボディに包まれた安心感と、意のままに動いて路面との関係性を的確に感じさせるフロントアクスル、そしてしっかりと踏ん張り乗り手の腰から後を一体におもわせるリアアクスルが、ライドフィールをいっそう“確かな手応え”系にみせた。ひとことで言うと、人馬(人牛か?)一体感で、狭い道や路地でもひるむことなく入っていける。
あらたに採用されたデュアルクラッチミッション(7段)も、街乗りでのスムースな乗り心地に寄与している。これまでは(というかアヴェンタドールは今も)シングルクラッチ式の2ペダルだったため、シフトアップ時の“つんのめり”が気になって仕方ないという人も多かった。それが解消されたというだけでも、“乗りやすい”という感覚をもたれる方も多いはずだ。
ストラーダモードのオートマチックを選べば、軽やかなステアリングフィールとあいまって、ほとんどトルコンATと変わらず、ランボルギーニに乗っているということも半ば忘れるほど、気兼ねのないドライブが楽しめた。
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ランボルギーニ ウラカン国内初試乗 (4)
低回転域でも力強く、ノリノリの加速をみせる
高速道路でも、相変わらず乗り心地がいい。というか、速度域が上がれば上がるほどに、良くなっていく。ボディの強さはここでも効いていて、継ぎ目が多少連続しようと、アシがしっかりと働ける環境が続くから、タンタンタンと小気味よくこなす。快適だ。
気になったのは、後方視界が限られていること、くらいか(ちなみにガラスフードを選択してもあまり変わらない)。スピード注意、である。
通常の走行領域をストラーダモードでこなす限り、よくできたスポーツサルーンとほとんど変わらないライドフィール。史上最強の、毎日乗れるランボルギーニだ。
もちろん、本領発揮はここから。ワインディングロードやカントリーロード、サーキットで試すウラカンは、“実用スーパーカー”のイメージから一転、スーパーなハンドリングマシンとなる。
モードはスポーツ。エンジンのうなりが高まり、エグゾーストノートも劇的に変わった。ステアリングフィールやアシ回りもがっちりと引き締まり、クルマとの一体感がより高まる。緊張感も増した。右のパドルを引いて一速に。思い切り右足を踏みこんだ。
自然吸気とは思えないほど、低回転域でも力強く、ノリノリの加速をみせる。あらたに採用したデュアルインジェクションシステムと7段あるデュアルクラッチシステムとの相性も抜群だ。くわえて、こちらも一新された電子制御4WDシステムのおかげで、効率よく力を4輪、そして路面へと伝えてくれる。あっという間に、2速、そして3速……。
回転を上げていくときのサウンドは、正にV10だ。ガヤルドの直系であることを思い出させる。4千回転前後の盛大なトルクを右足の出し入れで楽しんだ。ボディが強いから車体が瞬時にエンジンパワーに反応して動く。
まるで、右足一本でコントロールしているようで、楽しい。それだけエンジンレスポンスが素晴らしいのだ。また、ウラカンのボディ構造はアルミニウムとCFRPのハイブリッドタイプとなったが、そのため特に腰回りの強靭さが乗り手には頼もしい。
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ランボルギーニ ウラカン国内初試乗 (5)
日常性をさらに上質に進化させた
アクセルオフと同時に、バリバリバリバリッっと、盛大なアフターファイア風サウンドをまき散らす。クルマ運転好きが好む演出だ。周りで聞いている人は、何かの爆発か?とおもってしまうことだろう。
ほどよくロールを与え、路面への食いつきをしっかりとドライバーに伝えるスポーツモードは、言い換えれば“ファン・トゥ・ドライブ“モードである。電子制御されたシャシーは適度にオーバーステアを許し、ミドシップスポーツカーを思う存分振りまわしている、という楽しいおもい出作りを演出してくれた。
対して、コルサモードを一般公道で試すと、そのダイレクトかつ俊敏な変速こそ、以前のシングルクラッチ式に近く、“これぞランボルギーニなシフトアップだ!”、などという感動を覚えたものの、シャシーは基本、ニュートラルステアをキープし、ブレーキタッチもフィールより利きを優先したプログラミングになる。速いが、楽しくはない。サーキットでタイムを出したいときのモード、と考えてよさそうだ。
非常に完成度の高いニューモデル、ウラカン。スポーツ性能のみならず、日常性をさらに上質に進化させたことで、より多くのスポーツカーファンに運転する歓びを提供してくれる、初めての“誰でもランボルギーニ”、になったと言えそうだ。
そして、これこそが、次の50年に向けての、ランボルギーニのあらたな方向性というわけである。
Lamborghini Huracan LP 610-4|ランボルギーニ ウラカン LP 610-4
ボディ|全長 4,459 × 全幅 1,924 × 全高 1,165 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,668 / 1,620 mm
車輛重量|1,422 kg
エンジン|5,204cc V型10気筒
ボア×ストローク|84.5 × 92.8 mm
最高出力| 449 kW(610 ps)/8,250 rpm
最大トルク|560 Nm/6.500 rpm
トランスミッション|7段LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)
駆動方式|4WD
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン
タイヤ 前|245/30R20(Pirelli P Zero)
タイヤ 後|305/30R20(Pirelli P Zero)
ブレーキ 前|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク φ380 × 38 mm
ブレーキ 後|ベンチレーテッド カーボンセラミックディスク φ356 × 32 mm
最高速度|325 km/h
0-100km加速|3.2 秒
0-200km加速|9.9 秒
燃費|12.5 ℓ/100 km(およそ8.0km/ℓ)
CO2排出量|290 g/km
価格(消費税込み)|2,970 万円
ランボルギーニ カスタマーセンター
0120-988-889