メルセデスの最新SUV「GLC」に試乗|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz GLC250|メルセデス・ベンツ GLC250
メルセデスの最新SUV「GLC」に試乗
死角のないSUV
日本に導入されたばかりのメルセデス・ベンツの新たなミドルサイズSUV「GLC」。CクラスのSUV版であり、「GLK」の実質的な後継モデルとなる同モデルに試乗した。
Text & Photographs by OGAWA Fumio
GLEから大きくイメージチェンジ
2016年はSUVイヤーと、大いに気炎を揚げるメルセデス・ベンツ日本が、2月に導入したメルセデス・ベンツ「GLC250」。「GLK」の後継モデルであり、現在のラインナップにおいては、「GLA」と「GLE」のあいだに位置づけられる。「Aクラス」と「Eクラス」のあいだにある「Cクラス」に対応するポジションだ。
本国ではラインナップも豊富なGLC。日本ではまず、211ps(155kW)の2リッター4気筒ガソリンエンジン搭載の「GLC250 4MTIC」が発売された。追って、2016年内にプラグインハイブリッドモデル、17年にクリーンディーゼルモデルが追加される予定とのことだ。
GLC250は、GLKのフルモデルチェンジになるが、イメージはだいぶ異なる。GLKは角張ったクロスカントリー型4WD的なスタイルだった。GLCはだいぶ曲面的な印象で、「Cクラス」を思わせる。ステーションワゴンとSUVの中間的な、いわゆるクロスオーバー型のスタイルが特徴的だ。ハンドル位置もGLKが左のみだったのに対してGLCは右になった。
車体寸法はGLKより少しずつ大型化している。ホイールベースが1,200mm延びるとともに、全長がプラス110mm、全幅が同50mmと、ボディサイズには余裕が出ている。それでもCクラスよりは30mmほど短い。ボディの特徴は前後のオーバーハングをできるだけ切り詰めているところにある。それで荷室容量は550リッター。GLKより100リッターも拡大している。
GLC250の4MATICは、フロントに33パーセント、リアに67パーセントのトルクを常時配分する固定式のフルタイムシステムである。ここまで後輪への配分が多いと、いっそオンデマンド式といって、路面のコンディションがよくないときだけ前輪を駆動する4WDシステムを採用したほうがいいのではないかとも思う。
しかしそれでは、滑ったときの一瞬に対応できない(のでより安全な走行を考えてフルタイム4WD方式採用)と、メルセデス・ベンツ日本の担当者は説明している。
走りは、かなり気持ちがいいのでびっくりした。
Mercedes-Benz GLC250|メルセデス・ベンツ GLC250
メルセデスの最新SUV「GLC」に試乗
死角のないSUV (2)
まるで路面に吸い付いているようなコーナリング感覚
乗ったのは、メルセデス・ベンツGLC250 4MATICスポーツ。現在の日本でのラインナップにはGLC250 4MATICというスタンダードモデルと、このスポーツ(そしてスポーツの革内装)と2つのモデルに大別される。スポーツはスポーツサスペンションが組み込んである。
オフロード的な荒れた道では、路面の凹凸を拾い、振動が多い。それでも乗員への不快な突き上げは極力抑えられているし、路面の不整でステアリングホイールをとられることもない。クロスカントリー型4WDのようにサスペンションアームのストロークを延ばしてオフロードをこなしていくというのではないが、電子制御システムがトラクションを確保するのを手伝ってくれるため、少なくともスノースポーツを楽しむ人などは、安心して乗っていられるだろう。
GLC250 4MATICスポーツの真骨頂は、舗装路面だった。ひとことで表現すると、じつにスムーズ。1200rpmから350Nmの最大トルクを発生する2リッターエンジンは低回転域からもりもりと力を出し、回転が上がっていっても、トルクカーブの息切れを感じることもない。足回りはしなやか。オフロードではゴツゴツする感じもあったスポーツサスペンションだが、一般道では丁寧に路面の凹凸を吸収してくれる。
ハンドリングはスムーズで、ステアリングホイールの小さな動きにも車体はきちんと反応する。まるで路面に吸い付いているように感じられるほどのコーナリング感覚は気持ちよい。SUVというよりよく出来たセダンを操縦しているようだ。アクセルペダルの踏み込み量に対する加速性のリニアリティも高いし、ブレーキングも微少なコントロールが可能だ。
GLC250 4MATIC(628万円〜)の競合としては、ポルシェ・マカン(685万円〜)がすぐに思いつく。SUV的でありステーションワゴン的でありクーペ的であるという、スタイリングコンセプトには、少し近いものを感じるが、キャラクターはだいぶ違う。スポーティな気分の時はマカン。ゴルフなどリラックスして遠出をしたい時はGLC。車庫に2台並べておきたいぐらいだ。
インテリアももうひとつの魅力だった。
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死角のないSUV (3)
高級リムジン並みの静粛性
メルセデス・ベンツGLC250 4MATICスポーツの乗り味のよさについて触れたが、もうひとつの魅力はインテリアだ。運転席は空間的余裕があって、かつ見晴らしがいい。着座位置はそう高くないので、小柄なひとでも、乗り降りに苦労することはないと思う。ダッシュボード中央に、大径のエアアウトレットが3つ並ぶ、昨今のメルセデス車に共通するスポーティな雰囲気だ。
GLKに対してホイールベースが延長されたいっぽう、パッケージングも見直された。結果、後席にその恩恵が大きく現れている。フットスペースの拡大とともに、レッグルームはプラス57mm。居住性が大きく向上しているのだ。空力抵抗を表すCd値が「セグメント最高水準」(メルセデス・ベンツ日本)の0.31だが、クルマは低く細くなったりしていない。快適性がしっかり確保されている。
室内の静粛性も驚くほど高い。エンジンルームからのもろもろの音、排気音、風切り音、路面からの擦過音……ようするにクルマから発生する雑音がほとんど遮断されているといっていいぐらいだ。聞こえてくるのは、前を走るクルマの排気音など、外からの音ばかり。高級リムジン並みといっていいかもしれない。オプションで、遮音性と制震性に優れることを謳うAMGのマットが用意されているが、これを敷いたら、魔法の絨毯に乗っているみたいになるだろうか。
安全装備も充実している。歩行者検知機能付き自動ブレーキや、アクティブレーンキーピングアシストなどを備えた「レーダーセーフティパッケージ」は全車標準装備。やはり標準装備の「LEDインテリジェントライトシステム」も注目の技術だ。ロービームでの走行時に対向車線を広く明るく照らすカントリーモードや、高速をロービームで走行時に照射範囲を2段階で拡大してより遠くを照らすハイウェイモードなど5つのモードを走行状況や天候に応じて自動で選択してくれる。
GLC250 4MATICを別の言い方で端的に表現すると−−死角がない感じのSUVである。
Mercedes-Benz GLC 250 4MATIC|メルセデス・ベンツ GLC 250 4マティック
Mercedes-Benz GLC 250 4MATIC sport|メルセデス・ベンツ GLC 250 4マティック スポーツ
ボディサイズ|全長 4,660 × 全幅 1,890 × 全高1,645 mm
ホイールベース|2,875 mm
トレッド 前/後|1,620 / 1,615 mm
重量|1,800 kg(sportは1,830 kg、sport本革仕様は1,860kg)
最低地上高|180 mm
エンジン|1,991 cc 直列4気筒 直噴DOHC ターボチャージャー付
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|9.8
最高出力| 155 kW(211 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|350 Nm(35.7 kgm)/ 1,200-4,000 rpm
トランスミッション|9段AT(9G-Troinic)
駆動方式|4WD
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|235/60R18(sport、sport本革仕様は235/55R19)
最小回転半径|5.7 m
トランク容量|550-1,600 ℓ
燃費(JC08モード)|13.4 km/ℓ
ハンドル位置|右
価格|(標準)628万、(sport)678万円、(sport本革仕様)745万円
メルセデスコール
0120-190-610
http://www.mercedes-benz.co.jp/