新型ポロ GTIのMTモデルに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2016年2月5日

新型ポロ GTIのMTモデルに試乗|Volkswagen

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

新型ポロ GTIのMTモデルに試乗

フォルクスワーゲンの常識を覆すモデル

今やすっかり一般的となったDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)。この革新的なメカニズムを手がけるメーカーの草分けともいえるフォルクスワーゲンが、「ゴルフ R」「ゴルフ GTI」、そして「ポロ GTI」という3台のスポーツモデルに6段MTモデルを追加した。同社が目指すクルマづくりを、ポロ GTIの 6段MTモデルに試乗した大谷達也氏が読み解く。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

ダウンサイジングならぬアップサイジング

今やスーパーカーからコンパクトカーまで幅広く採用されているDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)。ベースがマニュアルギアボックスだからダイレクトなフィーリングが味わえるうえに効率が高く、しかもシフトがスムーズかつ素早いことが数多くのモデルに搭載されている最大の理由だろう。

ところでこのDCT、世界で最初に量産車に採用したのがフォルクスワーゲン・グループだったことをご存じだろうか? 私は2003年にニースで行われたアウディTT 3.2 クワトロ DSG(その後Sトロニックと名称を改めたが、アウディも当時はDCTのことをDSGと呼んでいた)に試乗し、その優れたスポーツ性とスムーズさに圧倒されたのをよく記憶しているが、DCTはマニュアルギアボックスで常識だったHパターンのシフトが不要なため、多段化が容易という副次的なメリットが存在する。

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

実際、フォルクスワーゲンのDSGモデルは現状ではその多くが7段とされているが、フォルクスワーゲンが推し進めてきたもうひとつの技術であるダウンサイジングエンジンの効率を高めるうえでギアボックスの多段化は大きな効果があり、いまやダウンサイジングエンジン+DCTがヨーロッパ製コンパクトカーのデファクトスタンダードとなっていることは皆さんもご承知のとおりである。

このフォルクスワーゲンの常識を覆すモデルが登場した。それが最新の「ポロGTI」である。

現行の5世代目ポロにGTIが追加されたのは2010年のこと。このとき登場したポロGTIはターボチャージャーとスーパーチャージャーのふたつで過給する最高出力179psの1.4リッター直噴ガソリンエンジンと7段DSGを搭載しており、ダウンサイジングコンセプトのまさにど真ん中を捉えた構成となっていた。

ところが、2015年2月に行ったマイナーチェンジで、ポロGTIのエンジンはターボチャージャーのみを取り付けた最高出力192psの1.8リッター直噴ガソリンエンジンに置き換えられた。つまり、ダウンサイジングならぬアップサイジングが施されたのだ。これに呼応するかたちで6月にはDSGモデルに加えて6MTモデルを発売。「小排気量直噴過給エンジン+多段ギアボックス」というダウンサイジングの潮流に逆行する仕様がここに誕生したのである。

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

新型ポロ GTIのMTモデルに試乗

フォルクスワーゲンの常識を覆すモデル (2)

燃費はDSGの17.2km/ℓに対し15.9km/ℓ

なぜ、フォルクスワーゲンは自らのポリシーに反するモデルを敢えて生み出したのか? 理由のひとつは、「そのほうが効率が高かったから」というもの。ちなみにJC08モード燃費は従来型の16.6km/ℓから17.2km/ℓへとおよそ4パーセントの改善を果たしている。

もっとも、これはダウンサイジングの原理を否定するものではなく、1.4リッターの小排気量エンジンにターボチャージャー+スーパーチャージャーという複雑な過給システムを組み合わせるよりも、排気量に1.8リッターと余裕を持たせたうえでターボチャージャーのみのシンプルな過給システムを組み合わせたほうがエネルギーのロスが少なかったからと見るのが正解だろう。

なお、上記の17.2km/ℓというデータはDSGモデルのもの。これはDSGモデルしかなかった従来型と比較するために取り上げたもので、6段MTモデルのJC08モード燃費は15.9km/ℓとなる。

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

もうひとつ、フォルクスワーゲンが新型エンジンのメリットとして謳っているのがエンジンの“スポーツ性能”。従来型も新型も最大トルクは250Nmで変わらないが、発生回転数は従来の2000rpmから1250rpmに引き下げられており、このため「発進直後から力強いスタートダッシュを実現」しているという。このエンジン特性の変化は、ここで紹介する6段MTとのマッチングという面でも好ましい影響を与えるものだ。

そして、DCT全盛の時代に敢えてマニュアルトランスミッションを投入した背景については、「ドライバー自らがクルマを操る喜びや楽しみを感じたいという理由でMTモデルの復活を望まれるお客様も多く」「ひとりでも多くのお客様に『ゴキゲン♪』なドライビングプレジャーをお届けするため」とフォルクスワーゲンは説明している。

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

新型ポロ GTIのMTモデルに試乗

フォルクスワーゲンの常識を覆すモデル (3)

人の感性に重きを置いたクルマづくり

その1.8リッター直噴ターボエンジン+6段MTの組み合わせとなった新型ポロGTI、走り始めてすぐに気づくのは乗り心地が優しくなったこと。従来型はもっとソリッドで、場合によっては路面からのショックを明確に感じる場合もあったが、新型はサスペンションがよりスムーズにストロークするようになった感覚が強く、GTIというモデル名から想像される乗り心地よりもはるかに快適である。

この影響で、従来型のようにステアリングを切るとスパッとノーズの向きを変えるレスポンスの良さは影を潜めたが、だからといって鈍重なわけではなく、安定感のあるフォルクスワーゲンらしいハンドリングに仕上がっていた。

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

エンジンの特性も、こうしたサスペンションのテイストによくマッチしている。スロットルレスポンスは、カミソリのようにシャープだった従来型とは異なり、もう少しマイルドな味付けながら、これが6段MTと実によくマッチしているのだ。

F1を例に挙げるまでもなく、最近のレーシングカーもほとんどがパドルシフトによる2ペダル方式を採り入れている。その理由は簡単で、もはや人間の手でマニュアルシフトしていては、いかにF1ドライバーといえどもそのパフォーマンスをフルに発揮できないほどエンジンのレスポンスが向上した点にある。

Volkswagen Polo GTI |フォルクスワーゲン ポロ GTI

また、瞬時にギアチェンジできるパドルシフトであれば、たとえエンジンのパワーバンドが狭くても、その回転域だけを利用しながら走行できることもパドルシフト全盛の時代を招いた理由のひとつである。

裏を返せば、MTモデルではもう少し扱い易いエンジン特性が求められることになる。その点、1.8リッター直噴ターボエンジンとの組み合わせは実に的を射たものといえる。

それにしても嬉しいのは、これまで効率一辺倒のように思えたフォルクスワーゲンが、「MTモデルの運転する楽しさ」という人の感性に重きを置いたクルマづくりに挑んでくれたこと。実は、MTモデルはポロGTIだけでなく、「ゴルフGTI」や「ゴルフR」にも導入されている。排ガス問題で大きく揺れているフォルクスワーゲンだが、ユーザー目線の商品開発で力強く復活することを心から祈りたい。

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Volkswagen Polo GTI 6MT|フォルクスワーゲン ポロ GTI 6MT
ボディサイズ|全長 3,995 × 全幅 1,685 × 全高1,445 mm
ホイールベース|2,470 mm
トレッド 前/後|1,440 / 1,435 mm
重量|1,240 kg
最低地上高|115 mm
エンジン|1,798 cc 直列4気筒 直噴DOHC インタークーラー付ターボ
ボア×ストローク|82.5 × 84.1 mm
最高出力| 141 kW(192 ps)/ 5,400-6,200 rpm
最大トルク|320 Nm(32.6kgm)/ 1,450-4,200 rpm
トランスミッション|6段MT
駆動方式|FF
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / トレーリングアーム
タイヤ 前/後|215/40R17
最小回転半径|4.9 m
燃費(JC08モード)|15.9 km/ℓ
CO2排出量|146 g/km(JC08モード走行 燃費値換算)
ハンドル位置|右
価格|327万5,000万円

問い合わせ先

フォルクスワーゲン カスタマーセンター

0120-993-199

           
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