新型レクサス LX570に試乗|LEXUS
LEXUS LX570|レクサス LX570
新型レクサス LX570に試乗
あらゆるニーズをカバーする、圧倒的なクルマ
これまで、レクサスのSUVモデルにおけるフラッグシップとして、北米をはじめとする海外市場で販売されていた「LX」。その最新型である570LXが、2015年8月に日本にも導入された。レクサスの手になる全長5メートル、全幅1.9メートルの大型高級SUVは、いったいどんなモデルに仕上げられているのか。モータージャーナリストの小川フミオ氏によるインプレッションをお届けする。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
最大級のレクサス
2015年9月に発売されて、いらい話題のレクサス「LX570」。どう定義すればいいだろう。クロスカントリーの王者か。それとも高級SUVの頂点か。4WDカントリーとも呼ばれる、米国、中近東、ロシアなどで先行発売されて人気を呼んでいるという。日本の路上でも、かなりの存在感だ。
LX570は、最大級のレクサスだ。全長5065mmで、全高1910mm。街で見かけると小山のように大きい。ボンネットの下のエンジンも負けていない。5.7リッターV型8気筒。さらに、ペリメーターフレームを備えたボディ構造をはじめ、オフロード性能も本格的だ。メルセデス・ベンツ「Gクラス」の強力なライバル出現といっていいだろうか。
巨大と表現したくなるスピンドルグリルが迫力を醸し出している。レクサス一族に共通のスタイリッシュさというより、無骨な迫力。ワークブーツやバッファロープレイドのウールシャツのように、合目的的に作られた男ウケする魅力がある。
「世界中の苛酷な大地」とこのクルマが活躍する舞台を、レクサスのホームページでは定義している。V8エンジンは534Nmの大トルクを3200rpmで発生。フルタイム4WDシステムと8段オートマチック変速機が組み合わされている。かつ、アプローチアングルは25度、デパーチャーアングルは20度。最大渡河性能は700mm。最大安定傾斜角は44度。最大登坂能力は45度という。LX570の迫力には内容がともなっている。
レクサスLX570は、いっぽうで、「SUVのラグジュアリーの究極」とも謳われる。内装は、フルレザー張りのシートを備え、ウッドとクロームに覆われた贅沢さが際立つ。かつてレンジローバーが砂漠のロールスロイスと謳われたとか。砂漠では、オフロード性能と、オアシスのような室内空間こそ、まことに贅をつくした組み合わせなのだろう。それと近いものがあるかもしれない。
大径21インチタイヤも勇ましいこのクロスカントリー型4WD。市街地ではどんな走りなのだろう。
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驚くほど乗用車的
レクサスLX570の走りはいかに。クロスカントリー型の4WDというのが念頭にあったので、サスペンションストロークが長くとってあるぶん、大きめのボディロールとともに走るかと思っていた。しかし実際は、驚くほど乗用車的だ。砂漠向きとか、荒れ地向きとか、先入観は吹き飛ばされる。乗用車として、いたってフツウである。
5662ccV8は277kW(377ps)の最高出力と534Nmの最大トルクを発生。感心するのは、軽快に感じられるよう、すべてが絶妙に調整されていることだ。エンジントルクの出かた、操舵力、ステアリングホイール切り始めのときの車体の反応。どれもが大きなクルマを動かしている感覚を打ち消している。とりわけ動き始めのとき、適切なトルクやパワーアシストやステアリングスピードなどが、微調整されているのだろう。昨日まで軽自動車に乗っていたひとでも問題なく乗れる。スポーツカーに乗っていた人もかったるさを感じないのではないか。
車内は“クロスカントリー”と呼ばれるほど本格的なオフロード性能を有しているわりに、豪華で贅沢だ。レザーとウッド調の内装が、乗員を取り囲んでいる。しかも走行中は静かで、エンジンルームからの音も、路面からの音も、風切り音も、かなり低いレベルで抑えられている。
唯一、大きさを意識するのは、ブレーキをかけたときだ。車重2.7トンの巨体を制動するのに、軽快なスポーツカーと同じようなブレーキ踏力では少し足りないのである。強めに踏む必要がある。大きなクロカン4WDを運転しているのだということを思い出す。といっても、ブレーキにいちど馴れれば、小さなコーナーが連続する道だろうと、無理なくとばしていくことができるだろう。
レクサスLX570の運転席は、地上から高い。大型SUVになれていれば、逆に、隔離感があって落ち着くと感じる人もいるだろう。周囲の交通を見下ろすようにして走る。先にも触れたように太いトルクが低回転域からたっぷり出るので、どんな場面でも交通の流れをリードできるほどだ。
取り回し性にも、だいぶ配慮されている。舵角センサーを搭載していて、小さなコーナーを曲がっていこうとしているときをコンピューターが検知する。すると、後輪内側に適切なブレーキをかける。「ターンアシスト」と呼ばれる機能だ。これによって切り返し操作の回数が減り、ドライバーの負担を低減するとレクサスではしている。
実際に「ターンアシスト」機能が作動しているか、実感する場面に遭遇はしなかった。効いていたのかもしれない。なにはともあれ、オーナーだったら、おそらく恩恵に浴する機会に何度も出合いそうだ。そうとは知らせずにクルマがドライバーをサポートする。そこはレクサスの真骨頂だ。
マニア心をくすぐるスペックスも満載である。
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筋金入りのオフローダー
レクサスLX570は、都会で乗る高級SUVのように書いているけれど、じつは、筋金入りのオフローダーだ。レクサスにテクノロジーを提供しているトヨタ自動車が、ランドクルーザーで培った経験がフルに活かされている。
「都市をパワフルに走り抜け、路面状況や天候の変化が激しいオフロードを走破」と、レクサスのホームページには書かれている。それを裏付けるのが、最新の電子技術だ。ここでも、最高峰と呼びたくなる内容が満載である。
「マルチテレインセレクト」は、LX570で注目すべきテクノロジーの一つだ。凹凸の激しいオフロードや滑りやすい路面での高い走破性を目指した技術である。モードは6つ。岩場を走行するときの「ロック」、凹凸の激しい岩石路用の「ロック&ダート」、うねりや傾斜が激しい路面に向けた「モーグル」、土と石が混ざったがれき路などを走るには「ルーズロック」、そしてぬかるみなどで使う「マッド&サンド」。加えて「オート」モードも。各モードに応じたブレーキ油圧制御と、最適な駆動力配分が行われる。ダッシュボードにセレクターが備わっており、それを切り替えていく。
「クロールコントロール」も、1000万円を超えるこのクルマでも、本格的なオフロード性能を備えている証しだ。凹凸の激しいオフロードや滑りやすい路面を走行する際のサポート技術である。作動させると、極低速走行でアクセルやブレーキ操作は車両が自動で行う。ドライバーはステアリングホイールの操作に集中していればよい。
「ドライブモードセレクト」は、いっぽう、オンロードで効果を発揮する技術だ。レクサスオーナーにはおなじみ、エコ、コンフォート、スポーツ、スポーツ+が設定されている。センターコンソールのダイヤルで選択可能。クルマのキャラクターを変化させて楽しめる。エンジン特性とサスペンション設定が変更できるシステムである。「4輪アクティブハイトコントロールサスペンション」が組み合わされると、選択したモードと連動。車高自動調整システムなので、たとえば、高速走行時には、走行安定性のため車高を下げる。L4(オフロード)駆動時には車高を上げるハイモードへといった具合である。
テクノロジーは、枚挙にいとまがないほどだ。車速に合わせてステアリングギア比を変える「ギア比可変ステアリング」。操縦性のよさを狙った技術だ。狭い道や駐車場など、街中での取り回しをよくしている。「アダプティブバリアブル・サスペンショシステム」は、走行状態に応じて減衰力を自動制御する。快適な乗り心地でもって、LX570の使い勝手のよさを高めている。
全長5,065mm、全幅1,980mm、全高1,910mm の車体には、3列目には電動折りたたみ式のシートが2席ぶん備わるので、大家族にも向いている。上下2分割で開閉式のテールゲートは機能的で使いやすい。あらゆるニーズをカバーする。圧倒的なクルマである。
LEXUS LX570|レクサス LX570
ボディサイズ|全長 5,065 × 全幅 1,980 × 全高 1,910 mm
ホイールベース|2,850 mm
最低地上高|225 mm
車両重量|2,720 kg
トレッド 前 / 後|1,645 / 1,640 mm
乗車定員|8 名
エンジン|5,662 cc V型8気筒DOHC
最高出力| 277 kW(377 ps)/ 5,600 rpm
最大トルク|534 Nm/ 3,200 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ 前 / 後|285/50R20
燃費(JC08モード)|6.5 km/ℓ
価格│ 1,100万円