新型プリウスのプロトタイプに試乗|TOYOTA
CAR / IMPRESSION
2015年12月15日

新型プリウスのプロトタイプに試乗|TOYOTA

Toyota Prius|トヨタ プリウス

新型プリウスのプロトタイプに試乗

走りも快適性も大きく進化

フルモデルチェンジを受け、4代目へと進化した新型プリウス。12月9日のデビューに先駆け、11月にはそのプロトタイプの試乗会が富士スピードウェイにて開催された。同試乗会に参加したモータージャーナリスト、小川フミオ氏によるリポートをお届けする。

Text by OGAWA Fumio

従来型から一新されたシャシー

常にもっとも期待されるクルマ。そう呼んでいいのが、トヨタ「プリウス」だろう。歴代を見ていても、発売前から大きな注目を集めてきた。いま高い関心を集めているのは、4代目プリウス。2015年の東京モーターショーにも姿を現し、12月9日に発売された同モデルだが、それに先んじて、11月にプロトタイプの試乗会が開催された。

11月末には、ISIS(イラクとシリアのイスラミックステート)による悲惨なテロに遭遇したパリで、気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催された。2050年には、ハイブリッド車や燃料電池車の比率を高めて新車の走行時のCO2(二酸化炭素)排出量を、2010年比で9割減らすとしたトヨタ自動車。パリでのCOP21と歩調を合わせたかのような、新型プリウス(プロトタイプ)のお披露目だった。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius|トヨタ プリウス

新型プリウスに惹かれるのは、燃費コンシャスなユーザーばかりでない。ジャーナリストも同様だ。従来と基本的にはおなじ1.8リッター4気筒のアトキンスンサイクルエンジンに、電気モーターを組み合わせた、トヨタ独自のシリーズパラレルハイブリッドによる前輪駆動という構成も引き継いでいる。しかし「走りの質は大きく変えました」とトヨタ自動車の担当者は胸を張る。外観が、燃料電池車の「MIRAI」とのつながりを感じさせる斬新なイメージになっただけでない。内容的にも大きく前進していることが強調されているのだ。

新型プリウスと書くのは時期尚早なので、ここではプリウス プロトタイプ(以下、プロトタイプ)としよう。従来型と比較して、大きく変わったのは、シャシーだ。トヨタが「TNGA」(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)と呼ぶ新世代のプラットフォーム戦略の第1弾として開発されているという。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius|トヨタ プリウス

車体寸法は、全長4,540mm、全幅1,760mm、全高1,470mmが、トヨタの社内測定値。現行モデルと比較すると、全長で60mm長く、全幅で15mm広く、全高で20mm低くなっている。2,700mmのホイールベースは同一だ。空力はCd値に0.24とだいぶ低い。

とりわけ低重心化が強調されている。今までの弱点として「走りの楽しさ」を挙げた開発陣。新型プリウスが目指すのは、あたらしいシャシーによるハンドリングのよさだという。

プロトタイプは、プリウスなのだがプリウスでない。従来から想像できないぐらいだ。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

新型プリウスのプロトタイプに試乗

走りも快適性も大きく進化 (2)

リチウムイオンバッテリー搭載モデルも登場

プロトタイプは、大きくいって2つのモデルでラインナップが構成される。ひとつは、従来と同じようにニッケル水素バッテリー搭載モデル。もうひとつはより小型で高性能のリチウムイオンバッテリー搭載モデルだ。今回は荷室の大きなプリウスαのモデルチェンジについての言及はなかった。追って追加されるものと思われる。

シャシーが新しくなってバッテリーの搭載位置が見直されるとともに、バッテリーそのものも技術改良によってコンパクト化しているのが特徴だ。リチウムイオン電池搭載モデルのほうが、パワフルなのかと確認したところ、出力は2つのモデルで同じになるように設定しているとのことだ。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius|トヨタ プリウス

新しさを強く感じたのは、外観もさることながら、インテリアだ。仕様によって違うが、たとえばクールグレイという白いシートはいいかんじだ。ダッシュボードもあえて合成樹脂の滑らかな質感を活かした、モダンな感覚がおもしろい。セレクターレバーなどは従来からおなじみのものだし、メーターも表示のスタイルは一新されたとはいえ、コンセプトは継承しているので、戸惑いはない。しかし繰り返しになるが、モダンで若々しくなって好感がもてる。

なにより新鮮だったのは、ドライブフィールだ。小さなサーキットとその周囲のコースでの試乗だし、“プロトタイプ”なので、限られた印象になるが、従来とはかけはなれた楽しさがある。英語だとクリスピーと表現されるような、加速のよさと、切れのいいハンドリングに、プリウスのイメージが上書きされた気分を味わわせられる。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius|トヨタ プリウス

ドライビングポジションからして、現行モデルと大きく違う。3代目はステアリングホイールが寝かされた独特のポジションをとるが、プロトタイプは、ふつうのクルマ的だ。自然で、少し脚を前に投げ出すような、スポーティな姿勢だ。運転を楽しむという前提において、これはすばらしい改善点だと思う。

ハンドリングは素直で、ライントレース性は抜群。富士スピードウェイのショートサーキットでの試乗では、ブレーキのコントロール性もいいし、コーナリングの正確さ、そして立ち上がりの加速性と、どれも感心させられた。新世代プラットフォームのポテンシャルは高そうだ。ハイブリッドのスポーツカーも視野に入れているのかなと思わせる出来なのだ。

プロトタイプでの驚きはまだまだ続いた。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

新型プリウスのプロトタイプに試乗

走りも快適性も大きく進化 (3)

快適性も大幅に向上

プリウスに乗る人は、言うまでもないけれど、どこへでも行く。海外(とくにドイツ)だと、ハイブリッドの性能を語るとき、まず市街地を中心に通勤における経済性が強調されることが多い。市街地での燃費(走行キロあたりのCO2排出量)が重視される欧州と事情が根本的に異なるのだが、日本でのプリウスも負けていない。プロトタイプで燃費はリッター40キロと発表されている。

燃費が魅力的であるいっぽう、もうひとつ、プロトタイプで感心させられたのは、高い快適性だ。限定的な試乗なので断言はできないけれど、速度が上がったときの風切り音や、ロードノイズの遮音性が大きく向上している。発泡材をうまく使ったシートの振動吸収性もいいのだろうが、足の裏を含めて振動が気になる場面はなかった。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius|トヨタ プリウス

プロトタイプで体験した快適性として、書き留めておくべきは、後席の居住性が上がったことである。現行モデルは、低重心化の目的もあるのかもしれないけれど、着座位置が低い。というより、低すぎて、前に前席シートが壁のように立ちはだかり、居心地がいまひとつよくなかった。それに対してプロトタイプは、ヒップポイントが上がり、ぐっと自然で快適に座っていられるようになったのだ。新しいシャシーの設計度の高さだろう。乗員を重りのように使わなくても、スポーティなハンドリング性能を実現できたと解釈できる。

スタイリングについては、好き嫌いがわかれるかもしれない。僕個人としては、“シルエットで(プリウスと)わかる”というスタリングコンセプトの継承はいいと思う。ただしリア部分の作り方が、エコカーファミリーであることを強調してか(想像)、MIRAIとの関連性をもたせすぎているように感じられる。そもそもMIRAIのリア部分の二階建てのような造型センスが納得いかないので、プリウスでも画龍点睛を欠くというか、惜しいなあと個人的には思うのだ。

Toyota Prius|トヨタ プリウス

Toyota Prius|トヨタ プリウス

自動安全装備もかなり充実するようで、これまで3代続いてきたプリウスの総仕上げのようなクルマになりそうだ。いま、路上で遭遇するプリウスのオーナーはみな、飛ばすのが好きなようだ。トルクの太い電気モーターがもたらす俊敏な加速を、フルに活用しているせいかもしれない。次世代はそれよりはるかに運転がおもしろくなるだろう。大いに歓迎されるであろうことは、いまからよくわかる。

           
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