メルセデス・ベンツ ML63AMG|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz ML63AMG|メルセデス・ベンツ ML63AMG
AMGのベストセラー
新型メルセデス・ベンツML63AMGに試乗
メルセデス・ベンツが北米市場を中心に見据えて、北米生産のSUVとしてデビューさせたMクラス。その3代目である新型に、AMGモデルが追加された。ハイパフォーマンスと環境性能を両立させた5.5リッターV8ツインターボエンジンを手に入れた同車に、モータージャーナリスト、九嶋辰也が試乗した。
Text by KUSHIMA Tatsuya
Photo by Mercedes-Benz
歴代モデルはAMGの稼ぎ頭
メルセデスのハイパフォーマンスモデルを開発・製造しているAMG。かつて日本で“アー・マー・ゲー”なんて呼ばれていたころは、メルセデス各車のチューニングを手がけるチューナーだったが、いまではメルセデス・ベンツの一部門として、高性能車を世に送り出している。
そもそも小さいマーケットが対象である彼らの仕事において、ここで紹介するML63AMGは重要なモデルとなる。というのも、SUVはいまや全世界を相手にするビッグセールスカーだからだ。オープンやクーペとは比にならないほど市場のパイは大きい。事実、1999年にリリースしたML55AMG以降、MLクラスのAMG仕様は2万4000台を販売してきたというから恐れ入る。
そんなML63AMGだが、こいつを解説する前にベースとなるMクラスが2012年モデルでフルモデルチェンジしていることをご理解いただこう。日本導入はまだだが、従来型のW164型を熟成させることでそれを達成した。新型のコードネームはW166型。ひとつ数字を飛ばしていることからも進化の度合いがうかがえる。3.5リッターV6ガソリンエンジンも3リッターV6ディーゼルエンジンもスライドされるが、燃費が25パーセント向上しているのがミソだ。
デザインはキープコンセプト
で、それをベースに早くもAMGバージョンが登場した。従来型と同じML63AMGという名称だが、パワートレーンがガラリ変わっている。ただ、デザインはご覧のようにキープコンセプト。好調なモデルだけに大幅な変更はない。目立つのはフロントグリル下の大口を開けたようなエアインテークや専用設計のAMGライトアロイホイール。チタニウムグレーと呼ばれるカラーがじつにいい。特徴的なツインテールパイプもセンスのいい仕上がりである。“見た目”だけでも欲しくなる要素はたっぷりと持っている。
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新型メルセデス・ベンツML63AMGに試乗(2)
パワーと低燃費を両立させた新型エンジン
新型は従来型と同じモデル名ではあるが、エンジンは6.3リッターV8の自然吸気式から5.5リッターV8+ツインターボへと世代交代している。AMGのエンジン型式でいうところのM156型からM157型へとスイッチした。よって、マックスパワーも510psから525psへスープアップ。しかも、今回はSLS AMGのようにパフォーマンスパッケージも用意され、そちらは557psを発揮する。もはやカイエンターボもレンジローバーも圧倒する数値である。
とはいえ、パワーと省燃費のバランスがとれているのもこのエンジンの特徴。それ自体が直噴式であり高圧噴射を可能にしたピエゾインジェクター採用したり、スタート/ストップ機能を搭載。結果、燃費を従来比28パーセントアップしたのは立派である。
前後トルク配分を50:50から40:60に変更
トランスミッションはAMGスピード・プラス7Gトロニックが搭載される。これはスタンダードモデル用の7Gトロニックをチューンナップしたもの。開発のトップに話を伺ったところ、北米ではSUVのトーイング(牽引)使用率が高いため、デュアルクラッチよりもトルクの途切れないこちらのほうが使いやすいといっていた。
このほかでは4WDの前後トルク配分を40:60に固定しているのが新しい。スタンダードモデルが前後50:50であることからしても走りに振っていることがよくわかる。コーナリング中の挙動や出口でのアンダーステアの軽減は、SUVであっても走りを楽しくする。このあたりはまさにAMGの十八番といえそうだ。
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新型メルセデス・ベンツML63AMGに試乗(3)
サーキットを走っているような感覚に引き込まれる
ML63AMGの走りを一言でいうなら“ド級”である。低回転から発生する太いトルクが力強くクルマを前へ押し出し、終わりがないのではと思えるほど加速をつづける。しかも、その間のサウンドがじつに心地よい。3,000rpm後半からレーシングカーのような音が顔をのぞかせ、4,000rpm中盤ではそれが本格的にうなりだす。そして5,000rpm以降はまさにサーキット走行しているような感覚に引き込まれる。ステアリング裏のパドルを駆使すれば、ブリッピングでさらにその感覚を堪能できる。もはや背の高いクルマをドライブしていることを忘れそうだ。
コーナリングについても同じようなことがいえる。アクティブ・カーブ・システムというデバイスが、ロールをきっちり抑え込みフラットな姿勢を保ちながらコーナーを駆け抜ける。しかも、単なるスタビライザーを太くしたモデルとちがう、自然な動作が気持ちいい。こういった味付けはさすがとしかいいようがない。
トータルバランスでノーマル仕様とチョイス
ブレーキの確かさも目立った。重量のあるボディをググッと制御する頼もしさは光るものがある。このストッピングパワーがあるから安心してアクセルを踏めるのだ。
今回の試乗では通常のML63AMGと、パフォーマンス・パッケージのステアリングを握った。ちがいは前述したエンジン出力とブレーキの容量、そしてホイールといったところ。ノーマルが265/45R20であるのに対し、後者は295/35R21。まぁ、タイヤサイズが物語るように、乗り心地のよさや日常使いのバランスを考えるとノーマルで十分に思える。ノーマルとはいえ、エンジン出力は525ps。SUVでそれだけあればは文句あるまい。とはいえ、AMGはさらなるハイパフォーマンスモデルを用意したのも事実。彼らはそのニーズがあることを確信している……。