CITROEN DS4|遊び心あふれる4ドアクーペに試乗!
CITROEN DS4|シトロエン DS4
フランス製、SUVふう4ドアクーペに試乗(1)
「4ドアクーペ」を謳う、クロスオーバービークル、シトロエンDS4が、2011年9月28日よりプジョー シトロエン ジャポンの手で輸入販売開始される。チューンのことなる1.6リッターターボエンジンが用意されて、2モデルのラインナップだ。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
SUVにクーペの要素を足すことで独特な意匠に
「いったい人生で何万回、ウイ(はい)って言っているのか? たまには勇気をもってノン(いいえ)と言おう」というのが、本国で放映されているDS4のテレビコマーシャルのメッセージ。個性的であることを強調したスタイリングと、豊富なオプションパッケージによるパーソナライズ化をセリングポイントにしたDS4は、この主張が伝わる遊び心をもったひとがターゲットのようだ。
現行シリーズは商品名の頭にCをつけるのがシトロエンの決まりだが、これと並行して2009年からDSシリーズという、ニッチ(すきま)マーケット狙いのモデルレンジを拡充しようというのが、成熟したマーケットで販路を拡大するためにシトロエンがとった戦略だ。
DS4は高い着座位置をもつ点ではSUV的でありながら、リアのドアの存在を目立たなくしてパーソナルな印象の強いクーペを思わせるデザイン処理を各所にほどこしているのが特徴だ。
モデルラインナップは2本立て。156psの1.6リッターターボエンジンに、オートクラッチによる2ペダル方式の変速機を組みあわせたDS4 Chic(309万円)と、おなじ排気量ながら200psに、6段マニュアルの変速機というDS4 Sport Chic(345万円)からなる。オプションであざやかな2トーンのレザーシートなどが選べる。
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フランス製、SUVふう4ドアクーペに試乗(2)
見る角度によって雰囲気がことなる凝ったデザイン
「ウィンドウグラフィクスをデザインしたときには、背の高いクーペをイメージしました。同時にこの手のクルマは、乗るひととの関係が親密であるべきなので、人格を感じさせたいと思いました。そこで、フロントマスクは、ひとがひとを見つめるような、まなざしをどう感じさせるかに腐心しました」
DS4のエクステリア デザインを手がけたシトロエンのオリビエ・バンサンの言葉だ。
DS4の特徴はプロポーションとフロントマスク以外にもある。リアドアのウィンドウを細く広くするため、じつははめ殺しであることや、曲線で抑揚をつけられた前後のフェンダーの存在感、そしてリアビューを斜めから見たときに感じる、どことなくアウディ TTを彷彿させる、ルーフからバンパーまでなだらかに湾曲したライン、といったぐあいだ。見る角度によって、あたらしい発見がある。デザイン的に凝ったクルマだ。
インテリアで特徴的なのは。パノラミック フロントウィンドウとよばれる大きなウィンドシールドだ。運転席に座って目を上げると、どこまでも空が見え、開放感が強く印象に残る。着座位置は一般的なセダンよりやや高め。コントロール類の配置は機能的で、はじめて乗り込んでもとまどうことがない。
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フランス製、SUVふう4ドアクーペに試乗(3)
スポーツの名に恥じない軽快なドライビングが可能なSport Chic
2つのモデルがあるDS4。かたやATでかたやMTなので、この国ではおのずと選択が決まってきてしまうかもしれないが、まず結論から書いてしまうと、じつはマニュアル変速機を備えるSport Chicのほうが、楽しさと快適性がより高いレベルで実現されていると感じた。
小さくユニークなギアセレクターを備える2ペダルのChicは、日常使いで充分パワフルな156psのエンジンを搭載し、コンピュータ制御でクラッチのオンオフをおこない、ギアを変えていく変速機の制御もスムーズだ。ふだんは2人乗車が多いが、たまにはひとを後席に乗せることがあったり、荷物のために4枚ドアがあると便利というひとには、309万円で個性的なデザインが手に入るので、けっこういい選択だと思う。
いっぽう200psに出力が引き上げられたSport Chicはダンパーなど専用のものが用意されタイヤの径も1インチ上がった18インチとなるなど、“スポーツ”のサブネームに従って手がくわえられている。
ギアセレクターはヘッドが比較的大ぶりで、シフトストロークはやや大きい。さらに、クラッチは欧州車によく見られるように、半クラッチの多用によるクラッチ板の消耗を防ぐため、かなり上のほうにミートポイントがもってこられたものなので、慣れないとやや戸惑いがあるかもしれない。
走らせると、Chicは高速でダンピングの調整がいまひとつか、と思わせる場面がある。快適志向ゆえか、段差を越えるときなど、揺れが一回で収まらないところがある。
しかしSport Chicはやや硬めながら、そこの処理はうまく、気持ちのよいドライビングができる。タイヤ径が大きいとハンドルを切ったときなど車体の反応がよくなったりする反面、乗り心地に影響が出るのが一般的だが、DS4ではSport Chicがどちらもうまく両立させている。
ひょっとしたらChicが燃費重視のミシュランタイヤを装着していたので路面にあたる部分の踏面が硬めで、いっぽう側面がソフトで、といった細かい部分が影響しているのだろうか。
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フランス製、SUVふう4ドアクーペに試乗(4)
低回転域から充分なトルクを発生
ハンドリングのよさもSport Chicの身上だ。軽めの設定のハンドルだが、細かな動きにクルマがすぐ反応するよう、上手な連携が見られる。275Nmのトルクを1,700rpmから発生するのでパワー不足を感じさせることもなく、高速でも山岳路でも、楽しい気分で運転することができる。
DS4 Sport Chicのパワフルさを感じさせるのはハイウェイだ。高速走行時も、軽くアクセルペダルを踏みこむと、反応よくトルクが前輪を駆動して、瞬時に加速に移る。法定速度での静粛性は高く、長い距離を乗るのにも、なんのストレスを感じさせない。
やや気になるのは、Sport Chicのギアセレクターの操作性で、ゲートがいまひとつわかりにくい。とくに5段から4段へとシフトダウンするときなど、瞬時におこなおうとしても、わからなくなってしまうことがあった。レバーの前後左右のストロークに慣れれば、問題ないのかもしれないが。
大胆なフォルムのシトロエン DS4。とりわけマニュアル変速機のモデルがよくできていることもあり、楽しさが身上のクルマだ。これまでの自動車観に「ノン」と言おうというシトロエンの主張にのっとって、日常のパートナーに選ぶと、乗って出かけるのが楽しくなる。これこそもっとも大事なことだ。そうは思いませんか?
CITROEN DS4 Chic|シトロエン DS4 シック
ボディサイズ|全長4,275×全幅1,810×全高1,535mm
ホイールベース|2,610mm
車輛重量|1,360kg
エンジン|1,6リッター直列4気筒DOHC ターボチャージャーつき
最高出力|115kW(156ps)/6,000rpm
最大トルク|240Nm/1,400-3,500rpm
トランスミッション|6段AT
燃費|11.7km/ℓ
価格|309万円
CITROEN DS4 Sport Chic|シトロエン DS4 スポーツシック
車輛重量|1,400kg
エンジン|1,6リッター直列4気筒DOHC ターボチャージャーつき
最高出力|147kW(200ps)/5,800rpm
最大トルク|275Nm/1,700rpm
トランスミッション|6段MT
燃費|12.9km/ℓ
価格|345万円