Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗
CAR / IMPRESSION
2015年2月26日

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック

アウディが提示する新世代の5ドアプレミアムクーペ(1)

高級車の分野でも、従来なかった個性派が続ぞく誕生。アウディジャパンはさきごろ、5ドアクーペを標榜するアウディA7スポーツバックを日本で発売した。900万円に迫る高級車なのに、ハッチゲートを備えている点がさらにユニークだ。

文=小川フミオ

ハッチゲートを備えたファストバックスタイルのボディ

アウディ A7 スポーツバックは「プレミアムラージセグメントにあらたな価値を提供」(アウディジャパン)と謳われる、新型車。プレミアムラージとは、高級大型車のこと。全長5メートルになんなんとする車体をもち、プラットフォームはアウディのフラッグシップ「A8」と共用。しかし、大型車イコール保守的という時代は過ぎ、やはり4ドアクーペを標榜するメルセデス CLSといい、A7スポーツバックはあたらしい指標を打ち立てようとしている。

アウディA7スポーツバック(879万円)の個性がひときわ輝いている点はいくつもある。ひとつは、小ぶりに見えるグリーンハウス(窓のある部分)でクーペ的なデザインを与えられたこと。もうひとつは、大型高級車セグメントであるにもかかわらずハッチゲートを備えたファストバックスタイルであること。そしてエンジン排気量が小さくなったいっぽうで性能が向上していること。

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗|02

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗|03

見た目は、たしかにアウディが喧伝するように、スポーティさとエレガントさがうまくミックスされたものだ。とくに印象に残るのは、強くアクセントがつけられた面づくり。車体側面をみても、力強い張り出しに、大胆に深くえぐるようなアクセントとが組みあわされて保守的な雰囲気はいっさいなし。アクティブな印象が強い。

リアは流れるようにボリュームが下のほうに凝縮されたスタイルで、これもあたらしいアウディとひと目でわかる。大きくて、かつ大胆。「高級車を買うひとの志向は保守的」と最初から日和ることなく、マーケットに挑戦的であるところがアウディのなによりの魅力だ。A7 スポーツバックは、前へ前へと進んでいくアウディのイメージをうまく牽引する役割も果たしてくれるだろう。

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アウディが提示する新世代の5ドアプレミアムクーペ(2)

V8エンジンに匹敵するパワーを誇るV6

コクピットにおさまると、外観から想像するような大きさを感じないのがうれしいおどろきだ。実際よりずっとコンパクトなクルマを運転しているような気にすらなる。おそらくハンドルを切ったときに車体が動く反応速度、いわゆる車体の追従性がよいのだろう。そしてハンドルが正確。ハンドル自体は軽めの設定だが、走行中、中心ふきんでも車体が反応する速度は速い。もうひとつ、ハンドルで興味ぶかかったのは「味つけ」だ。カーブなどで切り込んでいくと、慣性がついたようにハンドル自体がぐーっとまわっていこうとする。前輪にやや強めにキャンバー角をつけて、コーナリングを楽しくしようとしているせいだろうか。スポーティなクルマが好きなら歓迎すべきたぐいの感覚だ。

エンジンは、3リッターV6。「高級車を買うひとがV6で満足できるかという議論は(導入前に)あった」とアウディジャパンでは話すが、排気量を小さくしていくのは、現在ドイツの各自動車メーカーの傾向。そのかわりエンジン出力をあげるために低い回転域から作動して空気をシリンダーに送り込む機械式スーパーチャージャーを装着して、燃焼効率を高めている。最高出力は300ps。

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗|05

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗|06

アウディ ジャパンにいわせると「従来のV8に匹敵する性能」という。これに7段ギアを介してフルタイム4輪駆動のクワトロドライブが組みあわされている。小型エンジンはノーズ部分の慣性質量低減にもつながり、ハンドリングが軽快になるという、大事なおまけもついてくる。

運転して1.900kgの車重を意識することはほとんどない。強いていえば高速道路で乗り心地がいいので、これは重量ボディの恩恵だろうと想像されるぐらいだ。440Nmの最大トルクは2,900rpmから発生する設定で、高速走行中に加速するときも、瞬発力はしっかりある。かつ回転をあげていくと、よく反応して、どんどん力が出てくるのも、運転好きにはうれしい。2ペダルのデュアルクラッチシステムである7段Sトロニックの制御も細かく、ドライバーが望むように、そのとき最適なギアを瞬時に選択する。少しアクセルペダルを踏みこむと、トップギアから即座に2段落ちて有効トルクが使えるようになったり、というぐあい。ドライバーを大切にしてくれるクルマといえるだろう。

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アウディが提示する新世代の5ドアプレミアムクーペ(3)

高い乗り心地を実現したサスペンション設定

A7スポーツバックでもうひとつ、印象に残るのは乗り心地のよさだ。これまでアウディは、とくにリアサスペンションの設定が硬すぎて、路面の凹凸がすこしでも大きくなると「ドタバタ」と動く印象が強かったが、A7スポーツバックはしっとりしている。従来のアウディ・オーナーはぜひこの乗り心地を体験してみるとよい。しなやかで、よく動くが、いっぽうでショックを上手に吸収する。

エンジンルームからの透過音も低く、とくに前席はまことに快適だ。リアはハッチゲートの開口部まわりから風切り音が聞こえてきてしまうのはファストバックの宿命だ。後席座面もフラットで、腰が落ち着かない。座面がフラットなのは、後席のシートバックを倒して荷室を広く使えるようにしたためだろう。「そもそも4ドアでもクーペのスタイルで、前席に2名が乗車することを主眼に設計された」とアウディ ジャパンでは説明するが、そういうクルマなのだろう。

荷室は広く、ハッチゲートは電動で閉められる。バンパーの高さから開くので重いものを載せるときも使い勝手がよい。当初はトランクの奥行きをかせいで、ゴルフバッグなどは縦に搭載する設定だったものを、アウディジャパンの強い要望が受け入れられて、横方法にスペースをかせぐように設計変更がなされたという。結果、ゴルフバッグを横にして搭載できる。

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗|08

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック 試乗|09

今回の試乗では試せなかったが、オーナーになるひとの興味を惹くと思うのが安全性だ。A7 スポーツバックには、いくつもの新テクノロジーが採用されている。ひとつは「ドライバーアシスタンスシステム」。具体的には先行車との距離を、速度と制動によって自動的に調節するアダプティブクルーズコントロール。先行車が停止すると4メートル手前で自車輌も停止する。これには「アウディプレセンス」および「アウディプレセンスプラス」と呼ばれる前後両方向の衝突を回避するための自動システムとの組み合わせが有効に働く。プレ(あらかじめ)+センス(感知する)という言葉からなるシステムだ。

暗闇で歩行者などを検知する「ナイトビジョン」、そしてリアビューカメラつき「アウディパーキングシステム」など、いわば運転者の「眼」となり、クルマがひとつの大きな感覚器官として働き事故を回避してくれるのが、A7 スポーツバックの特長だ。

見た目のエレガンスさ、運転しての楽しさ、それにくわえて、危険の察知(と回避)――。さまざまな点で、人間の感覚を重視した、新世代の高級車、それがA7スポーツバックといえる。

Audi A7 Sportback|アウディ A7 スポーツバック
ボディサイズ|全長4,990×全幅1,910×全高1,430mm
ホイールベース|2,915mm
車輌重量|1,900kg
エンジン|3.0リッターV型6気筒スーパーチャージャーDOHC
トランスミッション|7段Sトロニック
最高出力|220kW(300ps)/5,250-6,500rpm
最大トルク|440Nm(44.9kgm)/2,900-4,500rpm
10・15モード燃費|10,2km/ℓ
CO2排出量|228g/km
価格|879万円

           
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