広々としたスペースを確保し、機能性の高いデザインをもつ内装

フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン（以下トゥーラン）は、3列7人乗りのミニバン。1.4リッターツインチャージャーエンジンにツインクラッチの7段DSGトランスミッションを搭載した前輪駆動だ。今回はゴルフファミリーに準じたフェイスリフトを受け、フロントマスクは精悍さが増した。

トゥーラン（293万円）のボディサイズは、全長4,405（ゴルフ＋195）×全幅1,790（ゴルフと同寸）×全高1,670（同＋185）mmとなる。2,675mmのホイールベースはゴルフおよびゴルフバリアントより100mm長い。それが広い室内スペースと高めの着座位置を実現している。

トゥーランの最大の特徴は、シート。第1列にふたり、第2列は3人、第3列はふたりが座れる。ドイツではシャトルサービス用としても活躍している。第2列には取りはずし可能なシートが3つ、第3列のシートは床下格納できる。欧州生まれだけあって、機能的なデザインはぬきんでている。

「日本市場ではミニバンがいまも人気。高品質の輸入モデルは少ない。そこにあって、フォルクスワーゲンは、トゥーランと、それよりボディサイズが大きくスライドドアを備えるシャランで、販売攻勢をかけていく」。フォルクスワーゲングループジャパンの広報担当者は、トゥーランにこめた思いを説明する。

「日本のミニバンユーザーがあきらめている、高い走行安定性と好燃費がフォルクスワーゲンの強み。ニーズを満たすことで、あたらしい選択肢としてトゥーランとシャランを、国産ライバルのなかに入れてもらえる。むしろ競合他社に対して十分な競争力をもつ」（広報）

上質な空間と、確かな力強さを見せるTSIエンジン

トゥーランの着座位置はゴルフより高くハンドルはやや寝かしぎみ。大型ミニバンと乗用車の中間的デザインだ。低回転域ではスーパーチャージャー、中回転域からうえはターボチャージャーと、2基の過給器をうまく併用。220Nmの最大トルクを1,250rpmで発生するエンジンは、1,580kgのボディをスムーズに発進させる。高速道路では100km/hに達する時間はあっというまだ。

乗り心地は快適。軽くない車重がしっとり感に寄与している。いっぽう、エンジンルームからの透過音や風切り音は低く抑えられているし、室内につかわれる素材が革やアルカンターラなど質感もよく、乗ったとき、全体として高級感が増しているように思う。大きな荷物を運ぶことが多いひとにもつかい勝手がいいクルマだが、なにより乗るひとにとって、居心地のよさがあるのがよい。

ただし重厚な車体にはネガもある。慣性質量が大きくなるいっぽう、足まわりの設定は、どちらかというと快適志向。そこでワインディングロードなどで飛ばしたとき、カーブでは外にふくらむ傾向がやや感じられた。運転を楽しむためにトゥーランを買うひとはそれほど多くないだろうが、市街地にかぎれば、適度なキビキビ感が好ましく感じるはずだ。

もうひとつ、少々気になったのが、DST変速機。ギアがつながる時間のタイムラグに違和感をおぼえることがある。とりわけ、ドライブとリバースを繰り返さなくてはいけないとき、ギアがつながりトルクが伝達されるまでに一瞬の「間」がある。それを待てずにアクセルペダルを踏むと、クルマの動きがギクシャクして不快に思うことがあるかもしれない。DSTの特性については慣れもあるだろうから、とりたてて大きなネガではないかもしれないが。

大きすぎないボディサイズ、実用主義のスタイリング、好燃費（満タンで東京と箱根間を2往復なんてお茶の子さいさいだ）と、道具としては高得点。一本筋のとおったミニバンだ。

なお、トゥーランよりひとまわりサイズの大きいシャランは2011年2月より発売予定。全長4,855×全幅1,910×全高1,750mmのボディを、2,920mmのホイールベースに載せている。エンジンは大径ターボチャージャーを備えて150psの最高出力を発生する。やはり3列シートの7人乗りだが、2列目のシートが前後にスライドするなど、独自の機能を備える。試乗できたら報告したい。

Volkswagen Golf Touran｜フォルクスワーゲン ゴルフ トゥーラン
ボディ｜全長4,405×全幅1,795×全高1,670mm
エンジン｜1.4ℓ 直列4気筒＋スーパーチャージャー&ターボチャージャー
最高出力｜103kW（140ps）/5,600rpm
最大トルク｜220Nm（22.4kgm）/1,250-4,000rpm
駆動方式｜FWD
トランスミッション｜6段DSG
10・15モード燃費｜14.6km/ℓ
CO2排出量｜159g/km
価格｜293万円

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