Audi|アウディ A8 ドイツ試乗インプレッション
Audi|アウディ A8
清閑なハイパフォーマンスサルーン(1)
アウディのフラッグシップ「A8」がさきごろ、フルモデルチェンジを受けて3代目に。2011年に日本導入が予定されている、新世代の高級サルーンにドイツにてモータージャーナリストの小川フミオが試乗した。
文=小川フミオ写真=アウディ ジャパン
大型化したスタイリッシュな高級サルーン
アウディA8の特徴をひとことでいうと、軽く安全で速い、となろうか。オールアルミニウムのアウディスペースフレーム(ASF)コンセプトによる車体をもつのが、ほかのアウディ車とことなる点。それに総輪駆動のクワトロシステムが組みあわされている。アウディの象徴といっても過言ではないこの組み合わせは、ほかのブランドとの差別化を図る一因となり、その結果、欧州において高い人気を誇っている。
2009年末に発表された新型は、2002年登場の2代目より大型化。47mm延長された2997mmというロングホイールベースに載る車体も、全長5137(従来型+82mm)×全幅1949(同+54mm)×全高1460mm(同+10mm)。全高がわずかに高くなっているが、長く広くなっているので、むしろ低く構えた印象が強い。高級サルーンでもスタイリッシュであることに徹底的なこだわりをみせるのが、まさにアウディ流といったところだ。
大トルクを誇る4.2TDIというディーゼルエンジンを筆頭に、本国でのエンジンバリエーションを豊富に取り揃えている。日本には本国発表値、最大出力273kWの4.2リッター直噴ガソリンエンジン搭載モデルが導入される予定。トランスミッションは8段と多段化したオートマチックとなる。
タイトかつ居心地のよいシート
外観については変形ヘッドランプに、あたらしい意匠の線上LEDランプが組み込まれ、フロントマスクがアグレッシブになった。が、全体の印象は実際のサイズとはことなり、従来型よりむしろコンパクトに見える。車体と車輪の関係や前後バランスなどプロポーションが均整よくまとめられているせいだろう。軽快な印象を出すのがデザイナーの意図のように思われる。
室内は立体的な造形のシートなど、特別感を増した設定。外観同様、広々感というより、むしろタイトに仕上げられている印象がある。あくまでドライバーズカーとしての側面が強く感じられる。しっかりとホールドしてくれるシートは居心地良く、全長5メートル超の大型サルーンという意識を忘れさせるほど。ダイレクトな操縦感とあいまって快適な運転ができる。
Audi|アウディ A8
清閑なハイパフォーマンスサルーン(2)
クワトロからさずかった直進安定性
発進時のみやや重量を感じさせるが、加速はよく、クワトロシステムの恩恵で、直進安定性にも秀でたものがある。エンジンはよく回り、2500rpmからとくに力がわき出てくるかんじはスポーティで、変速もゆるやか。もっとも、ミュンヘン空港からアウディ本社のあるインゴルシュタットまでのアウトバーンで走っているかぎり、発進用のギアと、トップギアと、加速用にさらにもう1段あればこと足りてしまう。
サスペンションの設定は、テストしたクルマは比較的マイルドで、リアでもごつごつした感じがないのには強い印象が残った。車重の重いクルマは、いわゆる「バネ上重量」が重くなるため、乗り心地がよくなる。A8ではくわえて、路面の凹凸の吸収もたくみでショックが伝わることはなかった。
歓迎すべき、サスペンションセッティング
A8につづいて欧州で発表されたA7スポーツバックでも足まわりの「味つけ」は快適性を意識させた。これまでは多少のゴツゴツ感をともないながらもスポーティさを追求してきたのがアウディ流サスペンション設定だったが、この志向変更したらしいセッティングには歓迎すべきだとおもった。
室内の静粛性は高く、エンジン回転が上がっていっても、騒音レベルがいちじるしく上がることはない。風切り音も低く抑えられている。加速していくと、外の景色の流れ方が劇的に変わるので、高い速度域にはいったことがわかるといったぐあいだ。スタイリングをふくめて軽快な印象の強い新型A8。まさに確実な進化を感じさせてくれるクルマだ。
AUDI|アウディ A8
ボディ|全長5,137×全幅1,949×全高1,460mm
エンジン|4.2リッター V型8気筒DOHC
最高出力|273kW(371ps)/6,800rpm
最大トルク|445Nm(45.4kgm)/3,500rpm
駆動方式|フルタイム4輪駆動
トランスミッション|8段AT
燃費|13.3ℓ/100km
CO2排出量|308g/km
価格|未定
(上記データは本国仕様にもとづく)