現代によみがえった“ドルチェ・ヴィータ”──フェラーリ ローマ発表会リポート|Ferrari
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2019年12月3日

現代によみがえった“ドルチェ・ヴィータ”──フェラーリ ローマ発表会リポート|Ferrari

F1マシンがイブニングドレスをまとう

「私たちの歴史を振り返りますと、例えば60年代にはエレガントで美しいデザインのモデルが数多く存在していました。当時は人々のファッションもエレガントで、クルマに乗る際のスタイルも美しかった。それこそがラグジュアリーであったわけです。我々は、こうしたヘリテッジを現代に持ち込み、まったく新しいグランツーリスモとして開発したのです」
今回のニューモデルの発表を前に、恐らくポルトフィーノのクーペ版が登場するのではないか、との見解がジャーナリストのあいだで一般的だった。しかし、ステージ上でアンヴェールされたローマを目の当たりにして、ガリエラ氏が語る通り、それがまったく新しいGTカーであることを一瞬で理解した。
ロングノーズ・ショートデッキの伸びやかなボディには、エモーショナルなキャラクターラインや彫りの深いエアインテーク、そして凝った空力デバイスなど、おなじみのアイテムが一切存在せず、フェラーリの現ラインナップとは、明らかに異なるデザイン文法が用いられていたからだ。
グラマラスかつ繊細な曲面で構成されたボディは、息を飲むほど流麗で、クラシカルな美しさに満ちあふれている。円形ではなく横一文字に光るテールランプも、ポルトフィーノの派生モデルではなく、まったく新しいGTであることを主張しているかのようだ。
デザインにあたっては、「250GTベルリネッタ ルッソ」や「250GT 2+2」など、フェラーリの往年のGTカーからインスピレーションを得ているとプレスリリースには記されているが、同車のスタイリングを担当したフェラーリデザインのチーフデザイナー、フラビオ・マンツォーニ氏は、必ずしもノスタルジックなスタイリングに仕上げたわけではないと語る。
「F1マシンがイブニングドレスをまとう──それが、ローマのデザインテーマでした」とは、フラビオ氏の弁だ。
ハイパフォーマンスとエレガントなスタイルを両立させるために、フェラーリの開発陣は新しい技術も導入したという。たとえば、リアスクリーンと一体化した可動リアスポイラーがそれだ。この辺りは、“アンダーステイトメント(控えめ)なラグジュアリー”というコンセプトを象徴するデバイスだといえるだろう。
インテリアには、運転席と助手席を別々の空間としてデザインする“デュアル・コクピット・コンセプト”が採用されている。ドライバーズシートは「視線は路上に、手はステアリングホイールに」という理念で設計されており、車両のほとんどの操作をステアリングホイールで行えるよう、ドライバーとクルマのインターフェイスが徹底的に追求された。一方、助手席にも車両の各種情報を表示する専用ディスプレイが設置されるなど、パッセンジャーも積極的にドライブを楽しめるデザインが施されている。
“2+クーペ”と謳われるローマには、ポルシェ911のように小さなリアシートが備わる。この辺りは、ローマがグランツーリスモとして開発されたことの証しといえるだろう。バッグや上着を車内に積めるリアシートのスペースは、日常でも遠方へのロングツーリングでも非常に役立つからだ。
パワーユニットには、F8 トリブートやポルトフィーノにも搭載されており、4年連続でインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを獲得したV8ターボエンジンを搭載。排気量はポルトフィーノと同じく3,855ccながら、最高出力は456kW(620ps)/5,750-7,500rpmと、ポルトフィーノに対して20ps強化されている。最大トルクはポルトフィーノと同じ760Nm/3000-5,750rpmだ。スタイリングと同様、エンジンサウンドにも細心の注意が払われ、エキゾーストシステムは完全な新設計で、サイレンサーを排して新開発のバイパスバルブを採用しているという。
トランスミッションには、SF90ストラダーレで導入された新型の8段デュアルクラッチが採用された。従来の7段タイプより1段ギアが増えているにもかかわらずコンパクトに仕上げられているという。
一方シャシーには、フェラーリが新世代モデルのために開発したモジュラー技術が用いられているが、コンポーネントの70パーセントが新設計されており、その結果75kgのダイエットに成功した。シャシーの軽量化とエンジンのパワーアップにより、パワー・トゥ・ウェイト・レシオはセグメント最高の2.37kg/psを実現。0-100km/h加速3.4秒、最高速度320km/hに達する。
ビークルダイナミクスシステムについても、フェラーリの最新モデルとしてアップデートが図られている。たとえば、6世代目へと進化したサイドスリップ・コントロール6.0がフェラーリのGT系モデルとして初めて採用されたほか、ブレーキキャリパーの制動力を油圧で調整してヨーイングを制御するフェラーリ・ダイナミック・エンハンサーも搭載される。新時代のグランツーリスモとして開発されたローマだが、そこはフェラーリのニューモデルである。ドライビングダイナミクスの面でも極めて高いレベルが実現されているわけだ。
こうして、世界中から集まったジャーナリストやメディア関係者を、いい意味で見事に裏切ってくれたフェラーリ ローマ。仮にフェデリコ・フェリーニ監督が存命で、現代版の「ドルチェ・ヴィータ」を手掛けるとしたら、ぜひこのローマを劇中に登場させてほしいと思った。これほど華やかで優美なライフスタイルをイメージさせてくれるクーペは、ライバルたちを見回してもなかなか見当たらないからだ。ちなみに、イタリアでの価格は20万ユーロ〜で、デリバリーは2020年半ばころからとのこと。
Ferrari Roma|フェラーリ ローマ
ボディサイズ|全長 4,656 × 全幅 1,974 × 全高 1,301 mm
ホイールベース|2,670 mm
乾燥重量|1,472 kg
エンジン|3,855cc V型8気筒ターボ
ボア×ストローク|86.5 × 82 mm
最高出力|456 kW(620 ps)/ 5750~7500rpm
最大トルク|760 Nm / 3000~5750rpm
トランスミッション|8段DCT
最高速度|320 km/h
0-100km/h加速|3.4秒
0-200km/h加速|9.3秒
タイヤ(フロント)|245/35 ZR20
タイヤ(リア)|285/35 ZR20
問い合わせ先

フェラーリ
http://auto.ferrari.com/ja_JP

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