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2020年8月27日
モータージャーナリスト小川フミオ氏が選ぶ、いま注目のクラシックSUV ベスト10
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モータージャーナリスト小川フミオ氏が選ぶクラシックSUV ベスト10
世界中でとどまるところを知らないSUVブームだが、近頃、クルマ好きのあいだで注目を集めているのが、それらのオリジンともいえるクラシックなSUVモデルだ。ここでは、モータージャーナリスト小川フミオ氏が、いまでも色あせない魅力を持つ懐かしのSUVを、10台厳選して紹介する。
Text by OGAWA Fumio
新しいライフスタイルを開拓しようというコンセプトは、魅力を失っていない
いま、クルマ好きを中心に注目を集めているクラシックSUV。昨今のブームしか知らないと、新しいジャンルだと思いがちだけれど、1960年代にはけっこう魅力的なモデルが見つかる。
最近、自動車メーカー自身が、新型SUVを開発するにあたって、自社のヘリティッジを掘り起こすことすら散見される。分かる。SUVっていう言葉すらなかった時代だけれど、力強いスタイリングに、新しいライフスタイルを開拓しようというコンセプトは、魅力を失っていない。
SUVがどこで生まれたか。人によっては1970年のレンジローバーといい、また、人によっては米のインターナショナルハーベスターのスカウトだとも。本格的なクロスカントリー型4WDだと、もちろんジープ(1943年)や、ジープの英国版をめざして開発されたランドローバー(47年)がある。
クラシックSUVのよさは、先にも触れたとおり、大径タイヤによる力強さを強調したシンプルなボディラインにある。加えて、オフロードで破損しても汎用部品と交換できるように、丸型ヘッドランプや平面ガラスなどを使った機能主義。これが逆にいい味になっているのだ。
人気が高いので、いまでも中古車市場でいろいろな個体が見つかるのもよい。米国車が欲しければ、権威ある雑誌が母体になっている中古車販売サイト「ヘミングス (https://www.hemmings.com/)」などをのぞいてあたりをつけて、専門店に問い合わせをする手もある。もちろん、買う前に個体をこの眼で観るのは、よい中古車選びの鉄則だ。
1)ランドローバー
ランドローバー(ディフェンダー)は、鉄板銘柄。歴史は古く、車体のバリエーションは多い。
短いホイールベースの2ドア(88とか90と呼ばれることも)と、長いホイールベースの4ドア(110とも)が基本で、ピックアップもあれば、作業用車もある。
短いホイールベースの2ドア(88とか90と呼ばれることも)と、長いホイールベースの4ドア(110とも)が基本で、ピックアップもあれば、作業用車もある。
リベットが表に出ているような、いわばスチームパンク的感覚が新鮮で、いまもって人気が高い。が、エンジンは古いディーゼルが中心なので、登録地の陸運局に事前に問い合わせを。
写真は1965年のシリーズⅡ(ヘッドランプが引っ込んでいる)で「88」とホイールベースをインチ表示したものが通り名になっている。私にとってもっとも魅力的なスタイリングはこのシリーズⅡ。
2)フォード・ブロンコ
いまの眼でもっとも魅力的なルックスの1台。ジープCJ-5やスカウトの市場に向けて開発されたモデル。
1964年に初代の最初のモデルが発表され、65年に写真のモデルが発売された。すべてのクルマが4WDシステムを持ち、エンジンは2.8リッター直列6気筒から、4.9リッターV8とパワフル。
初期型にはオープンボディもあって、実際の使い勝手はよくわからないけれど、見た目ではたいへん魅力的だ。米国の中古車市場でもけっこう高い。
3)ジープ・チェロキー
四角い箱を2つくっつけただけのようなシンプルな形が、逆に印象に強く残る。しかもフロントグリルをはじめ、ウィンドウグラフィクスやキャラクターラインも直線基調。
チェロキーのアイコンともいえるこの2代目が登場した1984年はすでにエアロデザインがトレンドになりつつあったけれど、こちらの力強さを感じさせるフォルムは負けていなかった。
そしていま、エアロデザインは懐かしさのなかに消えかけているけれど、チェロキーの魅力はまったく色褪せていない。
XJと呼ばれるこの世代のモデルに搭載されたのは、4リッター直列6気筒エンジン。トルクがたっぷりあり、乗り心地も快適。
当時、シボレー・ブレイザーやフォード・エクスプローラーといった競合のほうが華やかだったが、走りのクオリティは負けていなかった。
90年代には円高で300万円を切る価格設定が話題になったし、日米貿易摩擦を受けて一時期ホンダ系ディーラーで販売されたこともあった。いろいろ思い出を残したモデルだ。
4)レンジローバー
オフロードとプレスティッジを結びつけたことで自動車史に残る1台。現在までモデルチェンジが繰り返されるなかで、一時は存在感が薄れかけた初代(1970年−96年)だが、いままた人気が復活している感あり。
理由はシンプルだけれど、デザイン的に調和がとれている外観とインテリアだろう。
あんまり評価できない考えだけれど、英国ではスコットランドなどに領地を持つ富裕層が、ロンドン市内からそのままオフロードまで走っていける、というイメージなどで高級感を訴求していた。同様のイメージは欧州各地でも見受けられた。
本気でオフロードで乗ろうというなら、89年までのモデルがお薦め。90年からはサスペンションにスタビライザーが装着され、高速での直進安定性は眼にみえて向上したものの、悪路を走るとき、4つの足(サスペンションアーム)が自在に伸びて乗員にショックをほとんど感じさせない、素晴らしい走りを体験するのは難しくなった。
5)ランドクルーザー60
世界に誇るクロスカントリー型4WD。ランドローバーは(腐食に強いアルミニウムの)車体が残り、ランクルはエンジンが残る、とは世界中の”現場”で言われること。
1954年から現在に続く歴史のなかで、いまもクラシックスとして人気が高いのが、1980年から90年まで作られた「60(ロクマル)系」だ。
全長4.6〜4.7メートルの4ドアボディは、いやみのないスタイリングで、いかにも広そうな居住空間と荷室と、タイヤが目立つ頑強そうなボディの組合せが人気の理由だろう。
80年代のいわゆるRVブームを受けて、高速性能に重きを置いたような4リッターガソリンエンジンの採用や、乗用車然としたプラスチッキーなインテリアなど、惜しいなあと思う点はいくつかあるのだが、それでもラギッド(荒々しい)なイメージは、いまでも訴求力が高い。
ディーゼルエンジン車もあったが、いまは登録できない市町村が少なくない。自動車NOx・PM法で規定する「窒素酸化物及び粒子状物質の排出基準」を満たさないと車検がおりない「車種規制」の対象になっているからだ。一部のガソリンエンジン車についても同様。なので確認を。
6)フォルクスワーゲンThe Thing(181)
実にシクスティーズな1台。米西海岸で多かったフォルクスワーゲン・ビートルをベースにした改造車といえば、デューンバギーのメイヤーズマンクスが知られる。いっぽう、この「The Thing」はメーカーによるオリジナル。
軍で使うクーリエカー(部隊内で人やモノを運ぶ車両)として開発され、1969年に市販された。リアエンジンで後輪駆動のビートルのシャシーを共用。
ウィンドシールドも倒せてしまえるフルオープンの車体。サイドウィンドウもガラス巻き上げ式などではなく、合成樹脂のものを差し込むようになっている。外板は平板で構成されていて、補強のために波状のリブが入っているのも雰囲気だ。
エンジンは1.5リッター。のちに1.6リッターにパワーアップ。開放感は圧倒的。オフロードはまったく得意ではないはず。でもまあ、こういうのもいい。
7)フォルクスワーゲン・ゴルフカントリー
ゴルフ好きに特にウケる、ユニークなクロスオーバー。フォルクスワーゲンが1990年に発表したゴルフ・カントリーは、昨今のクロスオーバーとよばれるジャンルに先鞭をつけた。
「ゴルフⅡ」に設定された「ゴルフ・シンクロ」をベースに、カジュアルな雰囲気を盛り込んだモデルで、私の隣家はいまも大事に乗っているぐらいで熱心なファンがいるようだ。
「シンクロ」とはフォルクスワーゲンによるフルタイム4WDシステムの呼び名でもある。フォルクスワーゲンは78年から軍用の4WD「イルティス」を作っていたので、そこで蓄積した経験も活かされているはずだ。
荒れた路面の走行用に大きめのクリアランスをとったホイールハウス。立木や石に衝突してもエンジンや灯火類がダメージを受けないための前後のプロテクトバー。さらに大きな補助灯や、岩からエンジンを守るアンダーガードなど”そそる”コンテンツのテンコ盛りである。
2年間しか作られなかったが、スタイリングにも手を入れた4WDというコンセプトは、以降のフォルクスワーゲン(「オールトラック」)やアウディ(「オールロード」)に引き継がれている。
8)ミニモーク
爽快なフルオープンモデル。当初は、英海軍のために開発された。ベースはミニでホイールベースも同じだけれど、軽量かつコンパクトで、簡単に運べて作戦に展開できる仕様を、というオーダーにのっとって、BMC(当時ミニを作っていた会社)が設計した。
ユニークなのは、剛性を受け持つボックス構造が採用されていることで、幌はつけられるけれど、基本はフルオープンで乗る。
私は以前幌をしっかり閉めて雨のなか駐車していたら、あっというまに車内に水たまりができて、へきえきした記憶がある。
結局、非力だしオフロードは得意じゃないし、という理由で英政府からの発注はなし。BMCは頭を切り替えて、1964年にミニのバリエーションとして市販に踏み切った。
同時に、豪州や南アなど、いわゆる英連邦諸国でも製造。68年に英国での生産が中止されると、豪州やポルトガルといった国に生産拠点が移ったのだった。
ドゥカティやフスクバーナなどの二輪ブランドを抱えていたカジバが製造権を買い取り、93年まで生産された。日本にもカジバのモデルが輸入されていた。車重は500kgそこそこなので、1.3リッターエンジンでけっこうよく走ったものだ。爽快で、夏場は幌をかければ日よけになるので、直射日光も避けられる。
9)スズキ・ジムニー
もっともオフロードの走破性が高い日本車というと、ジムニー。1970年に初代が発売され、81年にここでとりあげる2代目にフルモデルチェンジした。
このクルマは98年まで生産されたから、かなりの長寿だ。特徴は、モデルライフの途中、95年にパワフルなDOHCターボエンジンが採用されるとともに足まわりにコイルスプリングを使うようになったこと。また97年からは、走行中でも2WDと4WDの切り替えができるようになったことなどがあげられる。
ハンス・ムートが所属していたターゲットデザインがスタイリングコンセプトを手掛けというだけあって、直線基調だがボディには躍動感がある。
フロントマスクも丸型2灯式に縦型スロットのグリルと、やはりかなりシンプルなのだが、強く印象に残る。
ボディバリエーションが豊富なのも80年代の日本車だけある。パノラミックルーフというハイルーフ仕様がある一方、ソフトトップでほとんどフルオープンの爽快感を味わわせてくれる仕様まで多種多様。
10)シトロエン・メアリ
シトロエン2CVをベースに開発されたユニークなフルオープン。浜辺などで気楽に乗れる、ビーチカーというジャンルでもある。
ボディは合成樹脂性で、塗装ではなく、製造過程で顔料を加えて色がつけられていた。実用的なデザインなのだが、フレンチブルドッグのような、パッチリしたヘッドランプを備えた大きなエンジンルーフと、低い車体のアンバランスさが逆に、ブサかっこいいといってもいいのでは。
602ccなので遅い。が、全長3.5メートルの車体の車重は500kg程度なので、普段使いではほぼ問題がないだろう。
1968年に発売された当時は、可倒式ウィンドシールドなど、オプションもそれなりにあって、ビーチカーというよりファンカー(楽しみのために乗るクルマ)という方がより的確かもしれない。
87年まで生産され、いまもフランスではフルレストアをしたメアリを売る「MCCA」(仏トゥルーズ)のような会社がある。人気が衰えないモデルだ。