多様なパワーソース、電子デバイスの充実

2014年の自動車業界はバラエティに富んでいた。パワーソースの変化はさらに加速し、各社次のステージに立ったといった様子だ。

目立ったのはBMWのサブブランド「i」。完全なEVの「i3」そしてプラグインハイブリッドの「i8」の登場は華々しく、特にロサンゼルスを起点として行われた国際試乗会は印象深いものだった。テスラやレクサス「RX450h」のようなハイブリッドカーのボリュームが多い場所だけに、エコカーに対する興味の度合いは高い。しかもこいつはスーパーカーのようなスタイリングをしているのだからこの上ない。信号待ちのたび、地元の人に話しかけられたほどだ。

ディーゼルエンジン車の充実も挙げられる。BMW「3シリーズ」やマツダの“スカイアクティブD”はさらに加速し、人気を博した。ニッチなところでは、3リッター ディーゼルターボを搭載したアルピナ「D3」なんかも印象に残っている。彼らがディーゼルを扱うとこんなにもナチュラルなのかと感心させられた。

また、高効率ガソリンエンジンのダウンサイジング化も見逃せない。特にこのところボルボやジャガーおよびランドローバーといったメーカーが積極的に自社開発および自社生産に踏み切っている。話としてはマイナーだが、投資の額を鑑みると今後を占う重要な要因となるであろう。

そして年末に飛び込んできたのが水素燃料電池のトヨタ「ミライ」。まぁ、これにかんしては2015年の動向をみないとなんらコメントはできない。

パワーソース以外では、自動運転に向けての電子デバイスの充実化が図られた。オートブレーキ、レーンキープ、ACC（アダクティブクルーズコントロール）、パーキングアシストシステムを備えれば、かなりできたようなもの。ドライバーがステアリングを握らず目的地に着く日はそう遠くない――。

といった動きのなかから5台をピックアップ。個人的な趣味嗜好を取り入れながら選考した。

九島辰也がOPENERS読者にオススメする2014年の5選

BMW i8｜ビー・エム・ダブリュー i8

スタイリングからするとやっかいな乗り物かと思いきや、じつは快適なドライブを約束してくれる。シザードアの開閉など乗り降りに若干慣れるまでの時間を有するが、走り出せば通常のクルマとなんら変わらない。ただし、モーターを使った出だしの加速はガソリン車と明らかにちがう。そこはEVならではの感覚が生じる。強力なトルクだ。気に入ったのはエンジンサウンド。外には鳴り響かないが、ドライバーは気持ちのいい加速音を耳にすることができる。そんな演出もうれしい。なにはともかく、燃費がよくてこのスタイリングなのだから、なんら文句はない。

Tesla Model S｜テスラ モデルS

予約注文開始は2013年だが、実際にデリバリーされ試乗する機会を得たのは昨年となる。よって2014年の1台としたい。で、このクルマはいろいろな面ですごい。たとえば航続距離はおよそ500km。リーフが160kmなのだからその差は倍以上。東京から大阪まで無充電で走れる。しかもこのスタイリング。BMW「i8」やフェラーリ、ランボルギーニといったスーパーカー系ではないが、アストンマーティンやポルシェ「パナメーラ」を彷彿する。二度見するくらいクールだ。そしてインテリアを覗き込めば、驚きのモニター。iPad 2個分のモニターがダッシュパネルに鎮座する。こんなクルマ見たことない！

Mercedes-Benz C Class｜メルセデス・ベンツ Cクラス

メルセデスのドル箱というか中心モデルだけに、彼らのテクノロジーがすべて注がれている。前年の「Sクラス」に搭載された電子デバイスがほとんどそのまま使われるのだから驚きだ。採算はとれるのだろうか？　そしてその走り。近年のメルセデスは“走り”に振っているが、このクルマも類に漏れずかなりアグレッシブ。ワインディングロードでのコーナリング性能は高く、ドライバーを夢中にさせる。ステアリングは思いのほかクイックで軽快さが前面に出る。またそのときの挙動もいい。リアサスの粘り感は最高で、運転がうまくなったような気にさえなる。お見事！

Nissan Skyline｜日産 スカイライン

4ドアセダンの中でもかっこいいスタイリングに入るだろう。抑揚ある面とエッジの効いた面がうまい具合にかみ合っているのがいい。この辺のクオリティの高さは、このクルマが北米で“インフィニティ”として売られていることと関係する。質感はかなり高いと言えそうだ。それとパワートレーンはハイブリッド、2リッター直4ターボともに優れている。メルセデス設計の後者とのマッチングは思いのほかよかった。ダイレクト アダプティブ ステアリング（ステアリング バイ ワイヤ）はフィーリングの面でまだ改善の幅はあるが、こういった新技術投入はすばらしい。

Lexus NX｜レクサス NX

新世代となったレクサスらしいキビキビした走りを楽しめるSUV。アメリカのマーケットには少々クイックすぎるとも思える大胆なハンドリングのセッティングが施された。それにスタイリングも目を惹く。北京モーターショーのターンテーブルで見たときは「ヤリ過ぎ？」とも思えたが、バンクーバーでのテストドライブではスポーティさが強調されたマトマリ感は強いものだった。また細部までかなり凝っているのがグッド。LEDをふんだんに使った前後のライト類は絶妙で、2つ上のクラスに匹敵するコストがかけられる。つくり手のホンキが伺えた。