FIAT|フィアット|柴田文江 vs フィアット500(2) 機能とデザインが情景をイメージさせる
Vol.2 柴田文江 vs フィアット500
Chapter2 機能とデザインが、素敵な情景をイメージさせる
「フィアット500」でもっとも感心したのは、工業製品として現代レベルをクリアしていること――柴田文江さんが語る、このクルマの頑張りどころとは?
──街で目にとまったというフィアット500ですが、目の当たりにされて印象は変わりましたか?
柴田 造形によるイメージはそのままですね。正面斜め横からながめると、昔のフィアット500のラインを上手に出していて、よく頑張っているなあという発見はありました。
私の事務所のスタッフにクルマ好きがいて、今日ここに来る前、いろんな情報を吹き込んでくれたんです。初代のフィアット500がどういうクルマだったかとか、「ミニ」もまたおなじような流れでリニューアルを果たしたとか、それはもう熱心に(笑)。彼は実際に古いミニに乗っているんです。
──それはたいそうなクルマ好きで(笑)
柴田 そうした名車への思い入れがこのクルマにいろんな影響を及ぼしたことは、細部をながめていると手に取るようにわかります。
過去のストーリーの気持ちを汲むことは大事です。ただ私は、クルマ特有とも言えるロマンチックさは好きじゃありません。そこに重点を置きすぎてあまりにもよく似たカタチを復刻させるのはナンセンスだし、今の時代のグローバリズムにも合わない。でもミニとフィアット500は、そういうスタンスでつくられていないと思います。
──具体的にはどういう部分からそれを感じましたか?
柴田 まず、現代のクルマになり得ているということですね。フィアット500にはチープなイメージがあるけれど、ドアを開け閉めしたフィーリングに高級感があるし、運転してみても適度なホールド感があって安心できる。意外と視線が高く、広い視野が確保できる点もよかったですね。
──つまり、工業製品としてしっかりしているということですね
柴田 そうしたクルマとしての機能と、スタイリングが醸し出してくれるイメージが上手に融合されていますよね。素敵な情景を思い浮かばせてくれるでしょ。そこの頑張り方が素晴らしい。このクルマの車内だったら、恋人になりたい人に告白されてもいいですよ(笑)。
──それはデザイナーとしてのご意見ですか(笑)
柴田 女の感覚です(笑)。職業的には道具論を語りますけどね。だからまぁ、大人の女性としては、自分で運転するクルマとしても彼氏に乗っていてほしいクルマとしても、フィアット500は合格ということです。