フォードが取り組む持続可能なモビリティ|Ford
CAR / FEATURES
2015年1月15日

フォードが取り組む持続可能なモビリティ|Ford

L.A. Autoshow Special Interview
Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

フォードが取り組む持続可能なモビリティ

L.A.オートーショー」に出展されたフォードの研究車両「フュージョン エナジー」は、コカコーラのペットボトルを製造するリサイクル可能な原料から、シート表皮やドアトリムなどの内装材がつくられる「プラントボトル テクノロジー」を採用した1号車だ。フォードとコカコーラが参画する共同研究プラントボトル テクノロジーとはいったいどんなものなのか。フォードのマーケティングマネージャーとして、フォード「フュージョン エナジー」の開発に携わったサマンサ・ホイトさんに話をうかがった。

Text by SAKURAI Kenichi
Photographs by WATANABE Shinsuke & Ford Motor Company

米国の2大アイコンが環境技術でコラボ

フォードは異業種とのコラボレーションに積極的だ。過去にはP&Gやナイキとコラボレーションしたインテリアのコンセプトカーを開発。現在はそれを一歩推し進めて、コカコーラ、ハインツ、ナイキ、P&G、そしてフォードが共同で、植物由来のプラスチック素材を共同で使用する「プラント PET(ポリエチレンテレフタレート) テクノロジー コラボレート」(PTC)というWWF(世界自然保護基金)に協調した相互協力体制を設立している。こちらは石油系原材料の消費削減をテーマに、将来的には100パーセント植物由来のPET材料やPET繊維の開発と利用を掲げている。

フォードがLAオートショーに出展した研究車両フォード「フュージョン エナジー」は、先進的なプラグインハイブリッドシステムを採用したほか、さらにコカコーラと共同でおこなった、ペットボトルの原料からクルマの内装をつくる「プラントボトル テクノロジー」と命名した共同研究の具体的なサンプルになっている。

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

あらためて紹介するまでもなくこれまでのクルマの内装は、石油系素材でつくられるのが一般的だった。フォードは、PTCの研究開発成果として、シートやドアの内張などに世界で初めてコカコーラのペットボトルとおなじ原料からクルマのシートや内装を制作するという試みをおこない、フュージョン エナジーで具体化してみせた。

既報ではあるが、コカコーラのペットボトルは、石油系素材が70パーセント、残りの30パーセントはサトウキビを原料とした天然由来の素材を使用。フォードは、コカコーラから内装材のマテリアルとして提供されたこのフレーク状のペットボトルの原料を、繊維状に加工し、生地を織り上げてフュージョン エナジーのシートクッション、シートバック、ヘッドレスト、ドアパネルインサートとヘッドライナーなどの内装材として使用した。これまでの100パーセント石油由来原料よりも、環境負荷が小さいことは言うまでもない。

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Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

フォードが取り組む持続可能なモビリティ (2)

肌触りも耐久性も劣ることなく、リサイクルも可能なマテリアル

「化石燃料は便利に使える反面、地球の生物多様性、気候などの自然環境に重大な影響をもっています。使える量も無限ではなく、いつかは原油も枯渇するといわれています。

クルマは、化石燃料由来の材質で構成され、さらに化石燃料を消費しながら走る、化石燃料消費の代表のような存在におもわれています。フォードではクルマとクルマがもたらす生活を持続させていくために、その使用比率を少しでも下げて、環境への影響を減少させようと努力しています」

そのように語るのは、フォードのマーケティングマネージャーのサマンサ・ホイトさん。フュージョン エナジーの開発にたずさわった一員でもある。

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

サマンサ・ホイトさんは、ノースカロライナ州のウェイクフォレスト大学を卒業後、1991年にフォードに入社。休日になると家族で旧いポルシェ「914」をレストアするような大のクルマ好きでもあり、メーカーの一員として持続可能なモビリティの発展を強く望んでいる。旧いものを大切にしながらも、文明の進化や発展のためにあたらしい技術を取り入れることは重要だと話す。

「今回展示した“フォード フュージョン エナジー”コンセプトの内装に使用されているシート生地やドアトリム、カーペットなどは、コカコーラのペットボトルとおなじ原料を素材につくられています。30パーセントはサトウキビを原料とした天然由来の素材を使用したので、アクセントとしてグリーンのラインを入れました。

肌触りも従来のシート生地などとかわりません。ソフトな感触を出せたこと、耐久性にもすぐれていることなど、これまでの石油来素材の製品にかわるポテンシャルを証明できたとおもいます。さらにこの素材はリサイクルも可能です。クルマが使用期間をまっとうしたのちには、ふたたび簡単になにかの製品として蘇ることができます」

ちなみにサマンサ・ホイトさん、今日のネイルはフュージョン エナジーの内装にもちいたグリーンのラインに合わせたカラーリング。「せっかくなので、(内装のグリーンのアクセントに)マッチするように、私も合わせてみました。だって、このクルマは(私の)子供のような存在だから」と笑う。

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フォードが取り組む持続可能なモビリティ (3)

天然由来素材は、すでに使用されはじめている

純EVでの航続距離が21マイル(約33km)となるプラグインハイブリッド「フォード フュージョン エナジー コンセプト」は、トータルで最大620マイル(約992km)の航続距離を誇っている。

ただでさえ燃費の良い2リッター直4+モーターのハイブリッドユニットを外部充電可能なシステムに進化させ、これを5年間にわたり使用すれば、平均的なガソリン車にくらべ、燃料費は推定6,850ドル(約69万円)を節約することができるとフォードは試算している。

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

そうした、日常での化石燃料消費低減にくわえ、プラントボトル テクノロジーがもたらす製造時の化石燃料削減は、たとえば米国フォードの生産モデルの大半でフォード フュージョン エナジー コンセプトとおなじ内装材が使用されたと仮定すると、石油由来材料約400万ポンドを削減できることになるという。

「化石燃料使用削減にたいする取り組みは、すでにフォードの市販車でもおこなわれています。たとえば生産型の「フュージョン」では、シートクッションに大豆由来の原料を加工して使用しています。これは、1台あたり約31,250個の大豆を使用している計算になります。なにより、これまで捨てていた食用に適さない大豆の有効利用になりますし、廃棄する手間や費用も削減できます」

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フォードが取り組む持続可能なモビリティ (4)

2,000万ポンド以上のCO2排出量削減という実績

実際のフォード「フュージョン」のシートはとても大豆が原料だとはおもえない、一般的なクッション性をもっていて、あえていわれなければわからないようなできである。まさか、このシートクッション、食べようとおもえば食べられますか?

「それは無理です(笑)。素材として大豆を使用してはいますが、それをクッションフォームに加工して使用していますから。“羽毛枕”のように、クッションのかわりに大豆そのものが入っているのではありませんよ(笑)。

フォードでは、2007年に大豆素材で製造したシートクッションの導入をはじめておこなってから、毎年500万ポンド(およそ2,268トン)の大豆を原料として使用しています。計算すると、これまでで2,000万ポンド以上の二酸化炭素の排出量を削減してきたといえます。小さなことですが、大切な一歩です」

Ford Fusion Energi|フォード フュージョン エナジー

PTC参画企業では、フォードが内装材に、再生可能な植物由来原料を使用したPET繊維を使用したように、食品用ボトルやアパレル用品、靴、カーペットなどの製品にプラントボトル テクノロジーを有効利用していくという。

フォード フュージョン エナジーはフォードとコカコーラという米国の2大アイコンのコラボだが、今後はこうしたPTC参画企業の異種企業間の協力から生まれた新技術や製品が、われわれの生活をより豊かなものにしてくれるのかもしれない。

           
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