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2022年10月2日
フェラーリは初のSUVをなぜスポーツカーと主張するのか?──「プロサングエ」がワールドプレミア|Ferrari
Ferrari Purosangue|フェラーリ プロサングエ
フェラーリ初の4ドアモデル「プロサングエ」がワールドプレミア
長らく噂され、登場が待たれていたフェラーリ初のSUVがついにデビューした。プロサングエ(=サラブレッド)と名づけられた同車について、ワールドプレミアに参加したモータージャーナリストの小川フミオ氏がリポートする。
Text by OGAWA Fumio|Photographs by Ferrari
肝となるアクティブサスペンショシステム
いまかいまかとずっと待たれていた4ドアのフェラーリ。ついに、2022年9月13日に、伊ピサ県ラヤーティコのテアトロ・デル・シレンツィオで発表された。
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長距離旅行も快適そうなフル4シーターであることに加え、533kWの新開発V12エンジン、全輪駆動、後輪操舵と、フルスペック。プロサングエ(サラブレッドの意)と名づけられた全高1,589mmのこのモデルをして、「あくまでもスポーツカー」とフェラーリでは強調するのが、実に興味深い。
フェラーリでは、1980年にピニンファリーナの提案にもとづいて「フェラーリ・ピニン」という4ドアの試作車を作ったことがある。顧客が、家族で乗れるフェラーリも欲しい、と要求していたからだ。
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「そのときの計画は、性能に満足いかない当時のオーナー、エンツォ・フェラーリの判断で、ボツになりました。フェラーリが手掛けるからには、どんなカタチをしていても、フェラーリの水準に達していないといけない。そのポリシーはいまに至るまでずっと守られています」
私は、テアトロ・デル・シレンツィオでの発表に先駆けて、フェラーリ本社での記者向けお披露目会に出席。その席上で、チーフプロダクトディベロップメントオフィサーのジャンマリア・フルゼンツィ氏は語ってくれた。
「今回、プロサングエを発売できたのは、私たちの基準をクリアするアクティブサスペンショシステムが完成したからです。48ボルトで動作するモーターを使った電磁式で、ボディの動きとタイヤの動きの両方を高周波で制御するので、ロールとピッチを抑えるとともに、路面の凹凸も(コイルスプリングをうまく使って)吸収。エアサスペンションよりはるかに優れたレスポンスの高さゆえ、コーナリング性能を最大化できます」
フェラーリの開発チームのこだわりは、徹底している。先に触れたとおり、6.5リッターの自然吸気型V型12気筒は新開発。赤いシリンダーヘッドを持つそのエンジンはドライサンプ化して高さを抑え、前車軸より後ろ、キャビンに食い込むぐらいの位置に搭載して、前後の重量配分を適正化している。
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さらに、8段のツインクラッチ変速機はリアデフと一体のトランスアクスル方式にして、やはり重量配分を考慮。4WDシステムは、このトランスアクスルとともに、フロントは、クラッチを使ったPTU(パワートランスファーユニット)で左右の駆動力を制御する。
「プロサングエは、内容を表したネーミングです」と、チーフマーケティング&コマーシャルオフィサーを務めるエンリコ・ガリエラ氏が言うとおりの出来のようだ。