マクラーレンGT発表イベントリポート|McLaren
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2019年6月7日

マクラーレンGT発表イベントリポート|McLaren

Mclaren GT|マクラーレンGT

マクラーレンの新境地を切り拓く「GT」

マクラーレン オートモーティブからこの5月に発表された最新モデル「マクラーレンGT」。スーパーカーとしてのパフォーマンスのみならず、グランドツアラーの特性も併せ持つ同モデルの発表会に参加したモータージャーナリスト、金子浩久氏のリポートをお送りする。

Text by KANEKO HirohisaPhotographs by Mclaren Automotive

大陸横断の実用性を備えたマクラーレンの第4のシリーズ

ロンドン郊外のマクラーレン・テクノロジーセンターに赴くと、入り口でスマートフォンとカメラを預けさせられた。

これから、正式発表前のニューモデル「マクラーレンGT」に対面するからだ。世界各国から召集されたジャーナリストたち20名弱も同じようにしている。

さっそく、プロダクトマネージメント責任者のイアン・ディグマン氏が次のように説明した。

「お見せするクルマは、マクラーレンの第4のシリーズとなります」

現在、マクラーレンはアルティメット、スーパー、スポーツと3つのカテゴリーを展開しているが、マクラーレンGTは新しいカテゴリーとなる。

スポーツシリーズに「540GT」というモデルが存在しているが、その新型というわけではない。シリーズが追加されるのだと強調している。 

「スーパーとスポーツの間に入りますが、どちらよりもロードユース方向に近付けてあります。コンペティションレベルの性能を持ちながらも、同時に大陸横断の実用性を併せ持っているのです」

つまり、アルティメット、スーパー、スポーツというパフォーマンス順に一直線につながっていた3つのシリーズの順列からロードユース方向に少しズラしたところに位置するというのだ。

これまでの3つのカテゴリーが動力性能を第一に造られてきたのに対して、GTは実用性と快適性も重視されている。「大陸横断の能力」とは、それを指している。

Mclaren GT|マクラーレンGT

マクラーレンの新境地を切り拓く「GT」(2)

トランク積載量は合計570リッターを実現

しかし、メカニズムの基本構成は大きくは変わらない。GTも、カーボンファイバー製シャシー「モノセルII-T」に軽合金製サスペンションを組み合わせ、620psの4.0リッターV8ターボエンジンをミドに搭載している。

注目したいのは、相互連関式の油圧ダンパーシステム「PDC」を更新したことだ。PDCはスーパーシリーズに標準装備され、スポーツシリーズでは選べない。

PDCの効能の大きさについては、以前に体験したことがある。マクラーレン・チャイナ主催のカスタマーイベント「シルクロードツアー」を同行取材し、当時のスーパーシリーズの「650S」で高速道路から一般道まで2500km余りを走った時に、その超高性能と快適性のハイレベルでの両立ぶりに驚かされ、また堪能したことを思い出した。

確かに、あのシステムがアップデートされるのならば、“大陸横断”も鬼に金棒だろう。マクラーレンGTの最も大きな特徴となるはずだから早く乗ってみたい。

「優れた乗り心地を実現しました。車高調整も可能で、アプローチアングルも実用的なものにしました」(ディグマン氏)

また、“大陸横断”の際に重要になってくる荷物の積載量も増やされた。前150リッター+後420リッターで合計570リッターというトランク積載量はライバルたちを大きく凌ぐと自信たっぷりだ。

Mclaren GT|マクラーレンGT

マクラーレンの新境地を切り拓く「GT」(3)

高性能スポーツカーのあるライフスタイルの喜びをもたらす

場所をシークレットプレゼンテーションルーム移動し、実車と対面。GTは、既存の3つのシリーズのどれとも似ていない。穏やかで、とてもエレガントだ。流れるような斜め後ろ姿が特に魅力的だと思った。色の濃さを変えられる、オプションのガラスルーフを選ぶとよりラグジュアリーな雰囲気を醸し出せるだろう。

テールゲートを開けると、苦心して積載量を増やした様子が伺えた。シートバックからテールエンドまで縦長にトランクスペースが設けられている。

「ゴルフクラブのバッグやスキーなども積むことができます」(ディグマン氏)

積めないこともないだろうけれども、あまり現実的ではないだろう。執念というかヤル気の強さが現れている。実際に、このクルマで旅に出る場合は、この縦長のトランクスペースになるべく合わせた形状の複数のスーツケースなりバッグを積んでいくのが多くの荷物を運べることになる。

用意周到なマクラーレンのことだから、そうした形状にピタリとフィットするバッグを、きっとどこかのメーカーとコラボレーション企画してオプションとして販売することを計画しているかもしれない。復活したコノリーあたりのメーカーだったら、テイストも違わないのでよろしいのではないだろうか?

その他、世界初の試みとしてシート表皮にカシミアを用いているのも面白いし、インフォテインメントを更新したりして使い勝手の向上にも努めている。

GTはマクラーレンの新境地を切り拓くことになるだろう。ややもするとパフォーマンス一辺倒に捉えられていたマクラーレン各車に、高性能スポーツカーのあるライフスタイルの楽しみと喜びをもたらす役割をGTは果たすことになるはずだ。と同時に、高級スポーツカーメーカーとしての守備範囲を広げ、新しいステージに引き上げることになるだろう。

           
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