ポルシェ911カレラ4に試乗|Porsche
Porsche 911 Carrera 4|ポルシェ 911 カレラ 4
911 カレラ4に試乗
後輪の上部にエンジンを搭載し、後輪にエンジンの力を伝える──リヤエンジン・リヤドライブ(RR)という駆動方式を、現在まで採用しつづけるポルシェ「911」には、3代目である964型から、前輪も駆動する、四輪駆動の「カレラ4」が設定されている。2011年9月にデビューした、7代目911となる991型にも、カレラ4がついに追加され、パリモーターショー2012にてワールドプレミアを飾った。そんな、あらたな「911 カレラ4」に、はやくも渡辺敏史氏が乗り込んだ!
Text by WATANABE Toshifumi
万能かつ安心な生活のパートナー
ポルシェにとって象徴的なプロダクトといえば「911」であることに異論を挟む人はいないだろう。
来年は誕生から50年を迎えるその911は、エンジンをリアタイヤの後方に積み、後輪を駆動する“RR”を出自からの基本レイアウトとしている。
RRはエンジンの自重がつねに後輪=駆動側に掛かることもあって、パワーを効率良く伝えられる反面、当然ながら前輪=操舵側の荷重がつねに軽くなってしまうというのが物理的な特徴だ。平たくいえば、前にはグングン進むけれど曲げるのが難しい。911はつねにこの難題と戦いつづけながら今日までの歴史を紡いできた。
いっぽうで、その難題を乗りこなす楽しみとして捉える、多くのファナティックがこのクルマを支えてきたのも事実だ。彼らは911に安楽で簡単なことを求めはせず、シンプルなRRを求道的に良しとしている。
そんなこともあってか、日本においては四駆の911を積極的に選ぶユーザーはそう多くはない。が、世界の趨勢においては911は35パーセント以上、つまり3台に1台以上が四駆となっている。
しかし、911本来の設計思想である多用途性が、2ペダルモデルの普及とともに、ここ日本でも商品力として認められているのも確かだ。
ピュアなスポーツカーがゆえに意のままに操れる。その上でコンパクトで取りまわしやすく、積載力も高い──という側面を、普段の生活をともにするパートナーとして好都合とみる向きが、今やポルシェのビジネスの屋台骨を支えているとも言えるだろう。
言い換えれば、より万能かつ安心の材料として、四駆をチョイスするユーザーの伸びしろはまだまだあるということだ
Porsche 911 Carrera 4|ポルシェ 911 カレラ 4
911カレラ4に試乗 (2)
そのメカニズム
991型の「カレラ4」および「カレラ4S」は、前型と同様、ベーシックなカレラにたいしてワイドボディを纏っている。
左右22mmずつで計44mmの拡幅は、額面以上の抑揚感をアピアランスに与えているが、全幅は1,850mm以内と、扱いやすさもギリギリで保たれているといえるだろう。
テールランプ間にリアガーニッシュが配されるのは前型からの倣いだが、991型はこの部分がマーカー的に点灯するなど、その主張をより強いものとしている。
駆動方式は前型と同様でセンターデフに電子制御多板式のクラッチを用いるフルタイム4WD。通常時はほぼ100パーセントの後輪駆動だが、車輌の走行状況に応じて最大で約50:50の駆動配分となる。
搭載されるトランスミッションはカレラ系と同一で7段のMTおよびPDKの二本立て。7段MTについてはスポーツプラスモードを選んだ時のみ、シフトダウン時に自動で回転をあわせるシンクロロジックがあらたに設けられた。
エンジン出力はカレラ系と同一。サスペンションもダンパーおよびバネレートそのものに変更はなく、スタビライザーを強化してマッチングをはかっている。
Porsche 911 Carrera 4|ポルシェ 911 カレラ 4
911カレラ4に試乗 (3)
想像以上に4輪を使う
911伝統の5連メーター内に設けられたマルチインフォメーションディスプレイに表示される前後輪のトルクグラフを見ていると、前輪への駆動配分=四駆状態での走行は想像以上に頻繁だ。
発進やコーナリング時はもとより、高速巡航時にも前輪にはわずかながらトルクが掛かっている。つまり前後のグリップバランスのためだけでなく、横風等の外乱にたいしても、直進性の向上においても、四駆は有効に活用されているわけだ。
その割に作動感はつとめてナチュラルで、通常時のステアリングフィールは四駆であることをまるで匂わせない。
よほどアクセルを強引に踏みつけるようなドライブをしないかぎり、舵角の方向に引き込まれるような旋回をみせることもなく、車体は綺麗な弧を描くように中立的に曲がっていく。
確実にアシストは働いているものの、911の美点である後輪側の駆動の存在感はつねに活かされる、そんなセットアップだ。
いまや四駆が911のスタンダードか
もちろんブレーキベクタリングなど、旋回性を強力に高めるデバイスも搭載されているが、一般道を気持ちよく走るペースでそれらの出る幕は恐らくほとんどないだろう。四輪の強力なメカニカルグリップで、すべては事足りている。一般路で乗るかぎりは違和感のない盤石感が、ドライバーの安心材料へと繋がっている。
普通ならドライブそのものを躊躇するような悪天候の中を、RRの911で走ったことが幾度かある。
前輪側の重量配分が軽いクルマが苦手とするシチュエーションで、並のスポーツカーならば緊張で手に汗握っただろう状況を、それでも911が淡々と走り切ったのはさすがだと唸らされた。
反面、やはり高速域では心許なさを感じたのも事実である。
長距離をものともしない快適性と実用性を備えるクルマだからこそ、全幅の信頼を備えておきたい。そういったユーティリティを求める向きにとって、いまや911は四駆を積極的に選ぶべきかもしれない。そればかりか、生粋のスポーツカー好きからみても、カレラ4の他類なき洗練度は魅力として捉えられるだろう。
無論、あくまでRRで走りを突き詰めたい向きには別の選択肢=「GT3」が今後用意されることになる。
そういった幅広い商品レンジの中で、カレラ4のスタンダード感は前型以上に顕在化したことは間違いない。
Porsche 911 Carrera 4|ポルシェ 911 カレラ 4
ボディサイズ|全長4,491×全幅1,852×全高1,304mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,532 / 1,560 mm
トランク容量|125 リットル
重量|1,430 kg[1,450kg]
エンジン|3,436cc 水平対向6気筒
最高出力| 257 kW(350ps)/ 7,400 rpm
最大トルク|390 Nm / 5,600 rpm
トランスミッション|7段マニュアル[7段PDK]
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|235/40R19 / 295/35R19
0-100km/h加速|4.9 秒[4.7秒]
燃費(NEDC複合)|9.3 ℓ / 100km[8.6ℓ / 100km]
CO2排出量|219 g / km[203 g / km]
*カッコ内はPDK仕様の場合
Porsche 911 Carrera 4S|ポルシェ 911 カレラ 4S
ボディサイズ|全長4,491×全幅1,852×全高1,296mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,552 mm
トランク容量|125 リットル
重量|1,445 kg[1,465kg]
エンジン|3,800cc 水平対向6気筒
最高出力| 294 kW(400ps)/ 7,400 rpm
最大トルク|440Nm / 5,600 rpm
トランスミッション|7段マニュアル[7段PDK]
駆動方式|4WD
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/30ZR20
0-100km/h加速|4.5秒[4.3秒]
燃費(NEDC複合)|9.9 ℓ / 100km[9.1 ℓ / 100km]
CO2排出量|234 g / km[215 g / km]
*カッコ内はPDK仕様の場合