ジャガーがLA自動車ショーで発表したピュアEV、I-ペースとは|Jaguar
CAR / FEATURES
2016年12月8日

ジャガーがLA自動車ショーで発表したピュアEV、I-ペースとは|Jaguar

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

スポーツカーメーカーとしてのジャガーによる未来への提案

ロサンジェルス自動車ショー2016でお披露目されたジャガーのピュアEV、「I-ペース」。同時に開催された発表会には、同社のデザインを統括するイアン・カラム氏が英国から駆けつけるなど、同モデルへのジャガーへの意気込みが感じられる。現状明らかにされているその詳細をリポート。

Text by OGAWA Fumio

ゼロから設計した初めてのモデル

ジャガーカーズがいま電気自動車「I(アイ)ペース」を準備している。「ゼロから設計した初めてのモデル」(ジャガーカーズの資料)といい、床下にリチウムイオンバッテリーを搭載し、前後1基ずつのモーターで4つの車輪を駆動するピュアEVだ。排ガスゼロのクルマ(ZEV)であることに加え「ジャガーらしさを盛り込んだ」(開発担当者)という操縦性など、現在と未来をうまくブレンドしたモデルといえる。

ジャガーIペースが公開されたのは2016年11月のロサンジェルス。同月18日から開催されたロサンジェルス オートショーで一般にお目見えして大きな話題を呼んだ。ジャガーでは「5ドアのスポーツカー」と呼んでいるように、従来のSUVの概念にとらわれないコンセプトが大きく目を惹く。

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

700Nmという大トルクを活かして発進加速は静止から100km/hまで4秒とスーパースポーツカーに迫る。同時に内燃機関と変速機と燃料タンクを廃したことでパッケージングも一新され「自動車史の新しい1ページになる」と同社のデザインを統括するイアン・カラム氏は胸を張る。内容も外観もいままでとは一線を画したモデルなのだ。

ZEV規制といって排ガスゼロのクルマをラインナップに一定の台数持つことを義務づけるのがカリフォルニアでは定まっている。ジャガーのクルマはいまのところ規制の対象ではないと思うが、やがてカリフォルニア州で販売を行うすべてのメーカーが対象になると言われる。ジャガーカーズにとって重要な市場である中国も排ガス規制を強化する方向へと進んでいる。そこにあってジャガーIペースはプレミアムセグメントにおける覇権を握るという意味でも重要な位置づけを持つはずだ。

自動車ショーより先にベバリーヒルズのミルクスタジオなる大きな撮影スタジオを借り切って報道陣などへの内々のお披露目があった。そこに登場したのは意外な人物だった。

ミランダ・カーも登場した発表会

ジャガーカーズがいかにIペースに気合いを入れているか。その証左が事前の特別プレビューだ。会場に招き入れられた我われはヘッドセットが置いてあるテーブルが並んだ場所へと案内される。クルマはなし。促されるままにヘッドセットを装着すると、Iペースのプレゼンテーションが開始する。まるで自分が本当にクルマを操縦しているような視覚的驚きに満ちたものだ。それが終わると実車との対面だ。

「もしデザイナーがフリーハンドでクルマを描くとしたら、前後ホイールの中央にドライバーを座らせるようなパッケージにするでしょう。それはスポーティなクルマの理想の姿です。そしてまさにIペースではそのことが可能になったのです」

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

先にも触れたように、ジャガーカーズのデザインをまとめるイアン・カラム氏が英国から渡米し、プレゼンテーションの会場に姿を現した。カラム氏が強調するのはIペースのスタイリングの新しさである。内燃機関を持たないために可能になったものである。長年の理想を現実のものにできたという意味では、古くて新しいデザインともいえる。技術の進歩を活用したという点では昨今のデジタルデバイスとも似ているかもしれない。見たこともないものを提供するというより長年の願望を実現することで消費者の支持を得る。Iペースでも同じことが言えるかもしれない。

発表会は昼夜の2部構成だった。夜の部はカクテルパーティ形式。よりリラックスした雰囲気でIペースの世界観を楽しませようという感じである。そこに登場したのはビクトリアズシークレットのエンジェルとしても知られるモデルのミランダ・カー。Iペースの前でポーズをとり妖艶な笑みを見せてくれた。新しいライフスタイルへの期待をつなぐという意味でIペースもグラマラス。2つのグラマー(うっとりさせる魅力)が同じ場所と時間をシェアしたといってもいい。

買い方までエキサイティングである。

すでに予約もスタート

「まったく白紙から開発をはじめた車両で、持てる技術のなかからベストと思われるものを組み合わせました。スペース効率、ドライビング プレジャー、そして性能のすべてにわたって徹底的に追求しています」。そう語るのは総指揮をとったジャガー・ランドローバーのテクニカル デザイン ディレクター、ドクター・ウォルフギャング・ジーバート氏だ。

床下にはパウチタイプのリチウムイオン電池を36個並べて90kWhを発生。200馬力、350Nmの電気モーターを前後に搭載して4輪を駆動。トータルで700Nmの数値は現行の「Fタイプ SVR」というスーパースポーツと同等である。コンピューターで駆動を制御し、前後のトルクだけでなく、カーブを曲がるときなどの挙動を安定させるトルク ベクタリング機能もここに組み込んだという。

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

ジャガー I-ペース|Jaguar I-Pace

室内の造型も斬新だ。しかし行きすぎてはいない。というのもIペースはSUVといってもスポーティなキャラクターが強い。そのため“形態は機能に従う”というコンセプトが重要になる。人間の直感的な使用を前提に考えていくと特にそうだ。高速でも間違いない操作ができることが最重要課題であるスポーツカー デザインと考え方が近くなってくる。

着座位置がSUVとしては異例に低いことは先に書いたとおり。あくまでスポーツカー メーカーとしてのジャガーによる未来への提案なのだ。薄いがホールド性に優れ、かつ斬新な造型のシートといい、ダッシュボードの操作性といい、新しさと機能性がうまくバランスされているようだ。走らせてみないとなんともいえないけれど、2018年になればこれが路上を走るのだからジャガーカーズの先進性と本気ぶりに感心させられる。

すでに予約が始まっており、ウェブサイトで「I WANT ONE」をクリックすると予約ページにアクセスできる。あちらでは手付け金も必要だが日本ではそれも必要ない。クリックで未来が手に入るとはなんともエキサイティングだ。

           
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