Dunhill Motorities meets ラリーニッポン 祐真朋樹 × 九島辰也 特別対談 後編
Dunhill Motorities meets ラリーニッポン 祐真朋樹 × 九島辰也 特別対談 後編
スタイリッシュさではツートップ(1)
イギリスを代表するラグジュアリーブランド、ダンヒル。創業間もない19世紀末にモータリゼーションの到来を予見し、クルマ乗りのための機能的なアイテムを打ち出す。以来、今日に至るまでファッションとモーターカルチャーの架け橋となる唯一無二のブランドとして高い人気を誇っている。MotoringとAuthoritiesを組み合わせた造語「Motorities(モートリティーズ)」をコンセプトとするダンヒルは、クラシックカーによるラリーイベント「ラリーニッポン」をサポートしていることでも知られている。2015年10月に開催された第7回大会では、ファッッションディレクター祐真朋樹氏と、モータージャーナリスト九島辰也氏がダンヒルのアイテムを身に纏い参戦した。今回が初対面ながら、「クルマ」や「ファッション」など近い価値観を持つ二人が、共に走った4日間を振り返る、その後編。
Text by NORISHIGE Seiichi
ギャラリーを魅了するヒストリックデザインと個性的な二人のスタイル
ラリーニッポンの大会趣旨は、日本の歴史的に重要な地域を巡ることで、世界に誇るべき日本の美しい宝を再発見することにある。それゆえに、地元自治体やボランティアの協力が必要不可欠。人と人が触れ合うことで何かが生まれる。このラリーは単なる愛車自慢でも自動車競技でもないのだ。
祐真 見学に来ている一般のギャラリーから「カッコイイ!」って、クルマウケがよかったのも印象的でした。ボクは思わず助手席からピースしていました(笑)。
九島 「あれジャガー? 」なんて声もありましたけどね(笑)。
祐真 ボディカラーがまたいいんですよ。あれは深いグリーン?
九島 実はブラックなんです。いろいろ調べて、最近のクルマのようにキラキラしていない顔料を探して決めました。
祐真 たぶんスタイリングでいうと我々コンビは十指に入るんじゃないかと思いましたね。ラリー中、毎日「カッコイイ! 」って言われましたから。
九島 トライアンフの中でも、スピットファイアはイタリア人の(ジョヴァンニ)ミケロッティがデザインしたモデル。たぶん、イギリス人ではこのカタチにできなかったでしょうね、ベタ過ぎて。他国のデザイナーが外から俯瞰して見ることができたからこそ、英国車とはかくあるべき、という姿にデザインできたのかなと。
祐真 なるほど。そういえば真っ赤なジャガーもよかった。
九島 「XK120」ですね。ウィリアム・ライオンがデザインして、後の「Eタイプ」の祖となったモデルです。英国の工業デザイン部門でサーの称号を授与された人物の作品です。
祐真 古いイギリス車が多かった印象がありますね。
九島 イタリア車もクラシックの世界では大切にされています。主に戦後のモデルが多くなりますけど。
祐真 時代的に古いものほどデザインに遊びがある。ゼッケンの数字が大きくなると、だんだん今風のデザインになるなと思いながらまわりを眺めていました。
九島 今回のエントリーリストでいうと、1929年型のベントレーから1973年型のアルファ・ロメオまで、44年間の歴史の流れがあるわけです。
Page02. クラシックのヒエラルキーに囚われない遊び心のあるスタイル
Dunhill Motorities meets ラリーニッポン 祐真朋樹 × 九島辰也 特別対談 後編
スタイリッシュさではツートップ(2)
クラシックのヒエラルキーに囚われない遊び心のあるスタイル
かつてのスーパーカーブームが多くの子どもたちを魅了したように、クラシックカーもまたデザインがもつ力でギャラリーの心を捉えたようだ。総エントリー数70台を超えるクラシックカーは自動車の進化のみならず、さまざまな記憶を見る者にフラッシュバックさせる。
祐真 九島さんはなぜスピットファイアを選んだのでしょう?
九島 トライアンフの中でも「TR2」や「TR3」は1955年までの実績という点でミッレミリアにも出場できるモデルですが、そんなクラシックのヒエラルキーに囚われない遊び心のあるスタイルにしたかった。まあ、僕が元雑誌編集者ということも影響していますけど、ファッション的にも自分が素直にカッコイイと思えるスタイルを追求したかったからなんです。
祐真 クラシックなカッコよさがあるクルマなのに、なんでこんなゼッケンなのか不思議に思っていました。
九島 年式が古い順にゼッケンを割り当てられるので、今回は57番でしたね。このスピットファイアは1967年式ですから、まあ、こんなところでしょう。
祐真 他のエントラントの方からもカッコイイって言われましたよ。
九島 あえてのハズシを選択したわけですから、カッコイイとしか言葉の選択肢がなかったのかも(笑)。
祐真 ソレで出るのがいいと(笑)。
九島 ご年配の方々からも「若いころ乗ってたんだよ」なんて、よく話しかけられることも多い。きっと、懐かしいんでしょうね。
祐真 僕は横に乗っかっているだけなんだけど、周りに人がドンドン寄ってくるんで得意顔でしたよ。やたらと評判がいい(笑)。
九島 そうでしたか。それはよかった。
祐真 デザインがエレガントですよね。
九島 存在感の割にはエンジン排気量が1300ccという……。
祐真 同じダンヒルチームのイギリス/香港組にも評価されていましたね。
九島 そこはアンダーステートメントを嗜好する日英の共通項ですね。
Page03. スタイリッシュで心地いいモートリティーズを実践
Dunhill Motorities meets ラリーニッポン 祐真朋樹 × 九島辰也 特別対談 後編
スタイリッシュさではツートップ(3)
スタイリッシュで心地いいモートリティーズを実践
ラリーニッポンの大会趣旨に賛同しスポンサーに名を連ねる英国ラグジュアリーブランドのダンヒル。九島氏と祐真氏はそのスポンサー枠としてのエントリーだ。ダンヒルのアウターでコーディネイトした二人は、きっとファッショナブルに映ったに違いない。
九島 初参加の祐真さんとしては長かったですか?
祐真 いやいや、4日間あったからこそ面白かった。あっという間に終わらなかったからこそ、ストーリーが生まれるわけだし、こうして話が盛り上がる。
九島 1日300km以上を連続して3日間も走ると、4日目はご褒美みたいなものです。
祐真 最終日の流すような感じがまたいいですよね。スタートの嵐山では九島さんにステアリングを渡されて。それまではドライビングを横目で見ながらイメージトレーニングしていたんですけど、肝心のスタートでバックギアに入れちゃって。失敗した(笑)。
九島 安心してください。僕も慣れない頃は何度かやってますから(笑)。
祐真 それにしてもマニュアルミッションはいいですね。操っている感触があって。免許取り立ての頃乗っていた(フォルクスワーゲン)ビートルを思い出しました。もう30年位前ですけど。
九島 こうしたイベントも、オトナの遊びとして悪くないでしょ。
祐真 たまたまテレビでミッレミリアを見る機会があってイメージはありましたけれど、ホントにガンガン走るんですね。2日目まではもう疲れちゃって夜のパーティに参加できずバタンキューって感じでしたよ。ようやく腰を上げられるようになったのは3日目でしたね。
九島 僕がクラシックカーラリーに興味を持ったのは、昼はオイルまみれだったオヤジたちが夜はタキシード着てパーティを楽しむ。こうしたサロン文化の楽しみ方が日本にもやっと根付いてきたからなんです。ル・マン(24時間耐久レース)でもシャトーを貸しきってブラックタイでパーティをしたり、モナコGPでも予選前夜に王室主催のフォーマルなパーティがある。
祐真 クルマの話題には事欠かないわけですし、お互い初見でも会話を楽しめますしね。それにしても皆さん、ラリーに真剣に取り組まれているので、表彰式でも事前に順位を把握されているのには驚きました。
九島 もうこの世界はコソ練の集大成。少年に還ってね(笑)。
祐真 ユニフォームもまた凝っていて、ノスタルジックなものからチーム風のファッショナブルなものまで、皆さん楽しんでおられた。
九島 ここ数年、本国のイベントなどの影響もあって、だいぶ進化しました。
祐真 皆さんクルマに合った格好で、その解釈が興味深かったですよ。スタイリッシュさで言えば、我がダンヒル・チームがツートップでしたけどね(笑)。
九島 これは祐真さんのほうがご専門ですけど、それがダンヒルの歴史というか、“モートリティーズ”(※)というDNAなんでしょうね。僕は今回、レース後にダンヒルのサングラスを買いました。あまりに掛け心地がよくて。エラく暗いなと思ったら夜なのにサングラスしたままだったとか、忘れちゃうくらい(笑)。来年もどうですか、祐真さん!
祐真 時間を楽しむゆとりを持ちたいですよね。まずはスケジュールを空けとかないと。それが一番難しいことかもしれませんけど(笑)。それと、次回はスタイリング賞のようなファッションの表彰も設けてほしいですね。今回は本当にいい経験をさせていただきました。
九島 祐真さん、ソレ反則って言われますよ。スタイリストなんですから(笑)。