東京モーターショーに集結した、カーメーカーのVIPインタビュー|MINI
CAR / FEATURES
2015年11月30日

東京モーターショーに集結した、カーメーカーのVIPインタビュー|MINI

MINI|ミニ

MINI 製品開発責任者 デイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏

MINIのコアバリューは“ゴーカートフィーリング”

東京モーターショーで、2代目となった新型「MINI クラブマン」を披露したMINI。季節に応じたファッションをまとった男女のモデルを配した展示で、来場者の注目を集めた。MINIの製品開発責任者であるデイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏に、今後の戦略や商品展開について聞いた。

Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki

MINIシリーズの多様化によって目指すもの

東京モーターショーで、「MINI」のブースはおもしろかった。ショーでもっとも大事なことは車両を見せることだが、商品の内容を伝えるやり方はさまざまだ。数字の羅列にならないでやるにはどうしたらいいか。MINIは各所に、米国的なトラッドファッションに身を包んだ若いカップルを模したモデルを配備した。夏はマリン、秋はカーディガン……といった具合だ。ライフスタイルブランドを標榜するMINIだけのことはある。

見目うるわしいモデルが傍らにいたのは「MINIクラブマン」という新型車。2代目になった今回は、ボディが完全な4ドアとなったうえに、サイズも大きくなった。「プレミアムコンパクト化はこのセグメントが成長しているからです」。そう話すのは、来日したデイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏。MINIにおける製品開発責任者だ。

――新型MINIクラブマンでは、全長4253mm(先代は3980mm)にまで車体が大型化したのも驚きでした。この製品の企画にはいかなる背景があるのでしょう。

バリエーションを増やしていくことじたいは、オリジナルミニとおなじです。かつてもクラブマンというエステート(ワゴン)モデルがありましたから。現在の顧客は単純なラインナップを好みません。ボディにしてもエンジンにしても多様化を好みます。そこで核になるモデルの周囲にバリエーションをつくっていくのが、私たちの考えかたです。

デイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏

デイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏

MINI Cooper Convertible|ミニ クーパー コンバーチブル

MINI Cooper Convertible

――モデルの多様化によって目指すところは、顧客に継続的にMINIを買ってもらうことでしょうか。それともあたらしい顧客を獲得することですか。

少なくともMINIクラブマンに関しては、新しい顧客を狙っています。あたらしいアーキテクチャー(プラットフォーム)を使い、車体をやや大型化することで、プレミアムカー・セグメントという従来MINIがもっていなかったひとつ上のセグメントへの参入を果たしました。なにしろこのセグメントは、いま急成長していますから。

――MINIクラブマンは、顧客にいかなるベネフィットをもたらしてくれるでしょうか。

広々した室内空間をもち、都市内だけでなく、長距離の移動も快適にこなすことができるはずです。なにより従来のMINIとは異なる機能をもっています。これはとても重要なことだと思いますね。2001年にあたらしいMINIが出たころ購入してくれた顧客はそれなり年齢が上がり、ライフステージがちがうレベルに移っているはずです。MINIは運転していたいけれど、もう少し大きなモデルがあれば、という声をよく聞きました。そこでMINIクラブマンによって、若いひと、ミドルエイジ、ある程度歳をとったひと、年齢に関係なく、あらゆる層へアピールしていきたいと思います。

そのために、ウォール・ストラテジーを採用したという。聞き慣れない名前だが……。

MINI|ミニ

MINI 製品開発責任者 デイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏

MINIのコアバリューは“ゴーカートフィーリング”(2)

ウォール・ストラテジーとは

MINIの製品開発責任、デイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏は、MINIの製品戦略について語る。

――2015年の東京モーターショーにおけるMINIのブースは、活気があって楽しかったですね。四季折々の服装に身を包んだモデルたちが、MINIのほがらかな世界観を表現していたと思います。

MINIは顧客に楽しいライフスタイルを提供したいと考えています。そこでMINIの世界観をショー会場でも表現するのは重要です。巨大な写真パネルを使って、男女の笑顔を並べたのは、その一環です。そしてモデルたち。それにアクセサリーの数々。これを私たちは、ウォール・ストラテジーと呼んでいます。

――ウォール・ストラテジーですか。もう少し詳しく聞かせてください。

イメージ戦略です。あたらしいMINIの姿を顧客にアピールして、それを象徴するもので顧客を取り囲むのが目的です。どんな建築が好きか。どこに住みたいか。どんなアクセサリーが魅力的か。そんなことが人生の楽しみと思えるひと。いま私たちがかんがえている顧客は、従来のMINIのターゲットカスタマー以上に楽しみを欲しているひとです。友だちが多く、人生じたいを謳歌しているひとというのが、このウォール・ストラテジーのコンセプトです。

MINI Clubman|ミニ クラブマン

MINI Clubman

デイビッド・アルフレッド・フェルフィノカマオ氏

――MINIには、ところで、PHV(プラグインハイブリッド車)など環境適合車をラインナップにくわえていく計画はあるのでしょうか。

PHVもEV(電気自動車)も当然考えています。考えていないブランドはないといってもいいですからね。ただ、いまはまだ何か言える段階ではありません。2020年に欧州委員会が設定したCO2規制が実施されて、CO2排出量を走行キロあたり95グラム以下に抑えられなければ、多額の罰金を払う必要があります。でもまだ2020年には時間的余裕があるというのが私たちの見解です。

――――あたらしい時代がかりに来たとしても、MINIが守るべきコアバリューとはなんでしょうか。

操縦特性です。ゴーカートフィーリングと私たちが呼んでいる、きびきびと動くキャラクターです。MINIを導入して以来、私たちはこのDNAを守ってきました。かりにこのあと本格的にEV化が進んでも、独特のフィーリングはなくしません。それとスタイリング。この2つこそ、MINIをMINIたらしめているものだと考えています。

           
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