新型911の魅力のすべて|Porsche
CAR / FEATURES
2015年2月19日

新型911の魅力のすべて|Porsche

Porsche 911|ポルシェ 911

デザインから環境性能までを詳細解説

新型911の魅力のすべて(1)

新型911の特徴はなにか。ひとことで表現すると「インテリジェント・パフォーマンス」だとポルシェではいう。低燃費とハイパフォーマンスを両立させるため、高い水準のエンジニアリング技術を使ったのが特徴とされている。具体的に、デザインから環境性能にいたるまで、新型911の魅力のすべてを、ここで紹介しよう。

文=小川フミオ

DESIGN

コードネーム991と呼ばれる新型911の特徴は、水平対向6気筒エンジンをリアに搭載した、2ドアクーペというメカニカルレイアウト。つまり、基本的なコンセプトは1963年以来、不変だ。
これについて、現在ポルシェのデザインディレクターを務めるミヒャエル・マウアーはポジティブだ。「911はプロポーションだけで他車と見わけがつく唯一のスポーツカーであり、余計なことをやらずとも、すぐに911と気づいてもらえるのです」と語る。

「トレッド幅を拡げたこともあり、技術的な要件からホイールベースを最低100ミリは長くする必要がありました。サイドビューをご覧になってください。とくにフロントのオーバーハングが短縮されているのがおわかりになりますか」(ポルシェの広報誌「クリストフォラス」のインタビューからの抜粋)

歴代ポルシェ911を手がけたデザインディレクターはわずか4人。フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ、アナトール・ラピン、ハルム・ラガーイ、そしてミヒャエル・マウアーだ。

Porsche 911|ポルシェ 911|02

ミヒャエル・マウアー

Porsche 911|ポルシェ 911|03

フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ

メルセデス・ベンツやスマート、それにサーブを経て、2004年にポルシェにはいりパナメーラなどを手がけたマウアーは、スポーツカーのデザインにおいて重視しなくてはならないことは3つある、と語る。プロポーション、スタイリング、そしてディテール。

プロポーションにかんしては、現行の911(コードネーム997)後期型より全長で56mm長くなっている新型911だが、印象的にまとまり感が強いことで、ルーフラインの高さなどが適切に決められていることがわかる。スタイリングは、997からのイメージを継承しつつ、リアフェンダーのふくらみなどに、現代的なマッチョ感が表現されている。

そしてディテールも911のファンには大事だ。たとえば、ヘッドランプ。楕円だが、角度によっては伝統的な正円に近く見えることにデザイナーは心を砕いたそうだ。ドアミラーの形状をふくめ、911に興味をもつひとが微視的に重視するポイントがきちんとおさえられている。

Porsche 911|ポルシェ 911

デザインから環境性能までを詳細解説

新型911の魅力のすべて(2)

ENGINEERING

「新型911における技術的な躍進は突出している」

ポルシェの言葉だ。エンジニアが目ざしたのは、低燃費(CO2排出量削減)とハイパフォーマンスの両立。そこでエンジンの高効率化、車体の軽量化、あらゆる部分における燃費技術の改善、そしてコンピュータを利用してのドライビングダイナミクスの進化だという。エンジニアの努力をひとことで要約すると、「インテリジェント・パフォーマンス」。現代のスポーツカーを表現するのに適切な言葉だ。

「先代比15パーセントの燃費低減」を目標としたエンジニアがまず乗り超えなくてはならなかったのが、高い安全基準のための約80kgの重量増という壁だったという。ホイールベースは100mm延長され車体は大型化。しかし燃費を大きく改善するための最良の方法は車体の軽量化と考えたポルシェの技術者は、アルミニウムを中心に軽量金属を多用してシャシー/ボディを設計。結果として、115kgの軽量化を成し遂げた。

Porsche 911|ポルシェ 911|06

Porsche 911|ポルシェ 911|06

水平対向6気筒というエンジン形式は継続されたが、内容はあたらしい。とりわけポルシェが強調するのが、燃費改善のためのさまざまな試みだ。緻密な制御で最適な燃料消費をおこなう燃料直噴システムにくわえ、サーモマネージメントに注目。冷間時の始動ではエンジンクーラントをすぐに循環させないなど、効果的な予熱で燃焼効率を高める技術だ。くわえて、アイドリング時にエンジンを停止させる「オートスタートストップ機能」も採用された。

トランスミッションにも大きな変更が。ひとつは、世界初が謳われる7段マニュアルトランスミッションだ。7速めのギア比を燃費用として高めることで、高速での燃料消費を抑えるのに大きく貢献するという。7速はゲートで明確に仕切り、ドライバーが自分の意思でそこにギアを入れ燃費運転をするような配慮がなされている。

AT感覚で乗れる2ペダルのデュアルクラッチシステム「PDK」には、高速道路で自動的にクラッチを切りアイドリング状態での走行をすることで燃費をかせぐ「コースティングモード」が組みあわされた。ステアリングシステムが油圧から電動になったのは、ポルシェファンのあいだで話題だが、ポルシェでは「(油圧式)パワーステアリングを作動させるには絶え間ない油圧ポンプの稼働が前提となるが、調査の結果、高速道路などの直線走行時にはほぼ9割の時間はステアリング(ホイール)を動かす必要はないことが判明」と、実際にステアリングシステムを動かすときだけ稼働する電動モーターを採用したのだった。それも省エネ対策と説明される。

Porsche 911|ポルシェ 911

デザインから環境性能までを詳細解説

新型911の魅力のすべて(2)

PERFORMANCE

今回発表された新型911のラインナップは、2つのモデルで構成される。「911カレラ」と「911カレラS」だ。カレラは3436ccのフラットシックスユニット(水平対向6気筒エンジン)を搭載し、いっぽうより高性能のカレラSは3800ccの排気量をもつ。

カレラでは、新型のパワーユニットの排気量は、従来の997型の3.6リッターからサイズダウンしている。

しかし最高出力は254kW(345ps)から257kW(350ps)へと向上、最大トルクも排気量が縮小したのにもかかわらず、390Nmという数値をキープしている。

カレラSは、3.8リッターの排気量こそ変わらないものの、283kW(385ps)から294kW(400ps)へとパワーアップしつつ、最大トルクも420Nmから440Nmへ増大している。「0-100km/h加速は、911カレラで4.8秒、911カレラSでは驚異の4.5秒(PDK仕様)に到達した」とポルシェでは強調している。

Porsche 911|ポルシェ 911|08

スポーツカーのよさとは、ドライバーがみずからの意思で、限界走行に挑戦していくところにある。新型911ではエンジンとシャシーの性能を上げ、そのリミットをさらに引き上げている。くわえて「PDCC(ポルシェ ダイナミック シャシー コントロール)」と呼ばれる技術を採用。サスペンションのスタイビライザーとダンパーとを使った、油圧式の電子制御ロール抑制システムとして機能させる。

コーナリング中の車体のロール量をコントロールすることで、「997をはるかに上まわるドライビングプレジャーを約束」とポルシェでは謳う。

Porsche 911|ポルシェ 911|09

最新技術を使いながら、現代的に高い水準にあるスポーツカーを作りあげる。それこそ、ポルシェ911をして「インテリジェント・パフォーマンス」と表現するゆえんなのだ。

           
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